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揺れる

「寝起きに……」*奏斗

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 ――――…………。

 ふ、と目が覚めた。
 もう、明るい。朝日っぽい光がカーテンの隙間から差し込んできてる。

 ……もう何日目かよくわからないけど。
 四ノ宮ん家だ。

 ――――……またオレ、キスされながら寝ちゃった、のかぁ……。
 ああもう。 ……思い出すと、また、すっごい、恥ずかしい。


 何で、四ノ宮は、オレにキスばっか、するんだろう。

 オレ――――……セックスできても、キスは嫌だった。

 なんだろう、自分でもよく分かんないけど。
 キスって――――……結構好きじゃないと、できない気がする。

 ……って、体もそうだって人もいるんだろうけどさ……。

 でも何か、顔、近づけて、唇触れ合わせて、舌とか息とか。
 …………やっぱ、無理。

 生理的に嫌悪がなくてセックスはできても、キスは無理。
 ……できたら、したくないって、ずっと思ってたし、今も思ってるし。

 ――――……四ノ宮は、別にできるのかな。誰とでも。
 遊ぶ子とも、キス、するタイプか……。

 ……キスうまいもんな。めちゃくちゃ経験ありそう。

 ――――……つか。むかつくんだよなぁ……。
 ……なんか、出来ないことねえの、こいつ……。

 出来ないことないか、色々考えてみるんだけど、思いつかない。……あ、ますます、むかつく。

 と、そこらで一度、我に返った。

 ……朝いちから、何考えてんだ、オレ。あほか……。
 はぁ、と力が抜けて。

 向かい合うみたいに、抱き締められたままでいることに、余計疲れる。

 ……無い。
 普通、絶対、こんなこと無い。

 少し動いて、四ノ宮を見上げた。
 珍しく今日はまだ眠っていて、その寝顔を眺める。

「――――……」

 ほんと、整った顔だなぁ、という感想。


「――――……」

 意味が分からないことばかり言う、口。
 今は、少しだけ、開いてる。

 寝顔見ること、あんま、無いかも……。

「――――……」

 寝てると、ちょっとだけ……可愛い、かな。


「――――……」


 ……は。 
 …………何言った、今。


 あー……もー。
 だめだ。


 なんかもう意味わかんなくて、悶々としてくる。

「――――……奏斗……起きてンの……?」

 オレが視線を外して動いたからか、目を覚ました四ノ宮が、オレを呼ぶ。
 眠そうに。

「……起きてる」

 見上げて、答えると。
 寝起きの、ぼんやりな顔で、でも、ふ、と笑う。

「はよ、奏斗」

 ……近すぎる、その笑顔に、ものすごく退いてしまう。

 ――――……なんなんだ、もう。

 お前は、その、キラキラな感じを、なんだって、オレにずっと振りまくんだ。


 まったく意味が分からない。
 ていうかもう、四ノ宮の言うことって、ほんと、いつもいつも意味が分からない。
 
「……起きて、ごはん食べて、行く準備しよっか」
「――――……ほんとに、一緒に行くの?」
「行くよ。……ああ、そういえば。誰に会いたくないの? 今日」

 覚醒してきたらしい四ノ宮が、オレを見つめながら、聞いてくる。

「……オレの高校も、勝ち進んでるみたい」

 そう言うと、四ノ宮は、ああなるほど……と、頷いた。

「――――……奏斗が三年の時の、一年か。じゃあ、知り合いだ」
「……まあ、そう……」

 そうなんだけど、そいつらはきっと、試合で忙しいだろうけど……。

「ああ、もしかして、卒業した人たちも、応援に来たりする?」

 ……鋭いなあ。ほんと。

「……和希も、来たりする?」
「――――……分かんない」

 本当に分からないので、そう答える。

 結構大きな大会だから、特に卒業した年の先輩たちは来ていた。
 オレ、去年は行かなかったから、皆がどうしたかは知らないし。二年目の今年どうするかはますます分からない。大地の学年は、行きそうな気がするけど……。

「大丈夫だよ」
「――――……」

「一緒に行って、たとえ誰かに会っても、連れて帰ってあげるからさ」

 ――――……なんだかなあ。

「……四ノ宮に、何のメリットが、あんの?」
「メリット?」

 繰り返してから、四ノ宮はオレを見つめて、苦笑い。

「人と付き合うのに、メリットとか考えんの、オレっぽいけど。奏斗は考えないよね?」
「――――……だから。お前的に、だってば。……お前になんのメリットがあって、すんの?」

「あぁ。オレ的にか……。んー……メリット……」

 少しの間考えてるっぽく、うーん、と唸ってた四ノ宮は。

「……別にメリットないかな」

 そう言って、笑う。

「メリットも無くて、オレがこんなにしてあげるってことが、もしかしたら、すごいことかもよ」

「……何、それ」
「さあ……まあ、好意は受け取っといたら?」

「好意なの?」
「まあ。そこは好意、じゃないかな。 悪意なんか、ないよ」


 四ノ宮は、おかしそうに、クスクス笑う。


 
 

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