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揺れる

「先帰る」*奏斗

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 もー、マジ何なの。離れろよ。
 四ノ宮を離させようと、藻掻き始めた時。

「相川先輩、あの……オレ、考えてたんですけど」
「んん?」

 オレを引きずり寄せたままで、小太郎に向けて話し出す四ノ宮に、小太郎もちょっと首を傾げている。

「オレ達、超ご近所さんだったことが、こないだ判明したんですけど」
「え。ユキと四ノ宮が?」

「そう。それで、合宿も、オレ達は自分ちから、高速乗っちゃった方が楽そうなんで……それでも良いですか?」
「あー、ユキんち、高速出入口近いんだっけ」

 近いっても、十五分位はあるし、別に皆と一緒に行けないことはないしっ。
 言おうと思うのだけれど、四ノ宮に邪魔されて。

「そうなんですよね。オレの学年、家はちょっと離れてるで……」
「じゃあ、別にそれでも良いけど。そしたら、一、二年で近い同士で待ち合わせ場所考えようかなぁ」
「そうしてもらえると助かります」

 にこ、と笑って、四ノ宮が小太郎に向けて、締めの一言。
 そっか、オッケー、と言いながら、良い奴で素直すぎる小太郎が頷いてる。

「誰と誰が近いんだっけー?」

 とか言いながら、席を移動して、向こうに行ってしまった。
 オレはと言えば。

 まだ近いままの四ノ宮を思い切り引きはがす。

「……もー、なんなの」
「――――……言うって言ったじゃん。家近いって」

「……言ったっけ?」
「うん。言ったよ。あんたはちょっと拒否ってたけど」

 ……あぁ。そういえばそんな話、したな……。
 拒否ったじゃんか、あんまり仲良いってしとかないほうがいいって、言ったじゃんか、オレ。

 すぐ近くに先生や先輩たちもいるこの状況では、言いたい文句も言えない。
 どうしてくれようか考えていると。

「そろそろお開きにしようか?」

 先生がそう言って、はーい、と皆が返す。
 会計を呼んで、多分先生がかなり多めに出してくれて、皆、二千でいいよー、とか。いつもそんな感じ。

 皆のお金を集めるのも一年がやることが多いから、付近のお金を四ノ宮も集め始める。
 オレは、速攻お金を渡して、外に出た。

「――――……」

 ……このままだと、また四ノ宮と家まで一緒か……。
 もうむかつくから、先帰っちゃお。

「小太郎、オレ、ちょっと用事があるから、先に帰るー!」
「えっ? ユキ?」

「先生に言っといてー!」
「ちょっ……気を付けて帰れよー」

 頷いて別れて、小走りで進むけど。

 ……気を付けて帰れって、また言われた。いっつも小太郎、言う。お前もな、て返すと、ユキは特にって言われる。
 オレが、男に狙われそうとか思うのかなぁって思うけど、まあそこは地雷に触れるみたいな話になるので、聞いたことはないけど。

 五分位したところで、着信。
 やだなあ、と思いながら見ると、案の定、四ノ宮。


 うう。出たくない……。





(2022/9/5)
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