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揺れる

「やっぱり」*大翔

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 いろいろ考えながら、食べていると、ふ、と奏斗がオレを見た。 

「……あのさ」
「ん?」

 ちょっと困ったみたいな顔してんのは、何だろう。そう思っていると。

「……ゼミの合宿さ」
「ん。ああ。来週の?」

「昨日小太郎にどうやって行くか聞かれたんだけど」
「何で行くかってこと? 車とか?」

「……お前は、一年と行く、よな?」

 ……しばし、無言。

 一年と行くよな?
 ……別に何も決めてないが。

  一年で行かなかったら何だって言うんだ。って。あれ?


「んーと……誘ってる?」
「……は?」

 でっかい瞳が、さらに見開かれて、オレを見る。
 それは無視して、更に聞いた。

「オレと行きたいってことでいい?」
「そんなこと言ってないだろ。なんとなく、確認しただけ、一応……」

 早口で、そんなことを言ってから。

「オレは、小太郎達と行くから」
「――――……」

 ふーん……と黙ってから。

「――――……それってさ、奏斗は、まだ、先輩達で行くとは、答えてこなかったってこと?」
「……っ一応、聞いただけ」

「オレが、奏斗と行きたいって言うかと思った?」

 思わず、ニヤ、と笑ってしまいながらそう言うと、奏斗は、また少し赤くなった。

「ち、がうし! そういうんじゃないし!」

 なんか焦ってるのが、やたら可愛い。

 別に、そんな反応しなくてもいいのに。

 オレの最近の行動を見てれば、奏斗が「一応」「先に」オレに聞いておいた方がいいって思うのも、当たり前な気がする。

 勝手に先輩達で行くとか決めてきたら、オレが一緒に行きたかったのにとか言いそうって、奏斗が思ったって不思議じゃないことを、オレは日々奏斗に言ってるんだから。

「いいよ、一緒に行こ。車出しますよ」
「だから、違うってば。良いから、一年と行けよ」

「オレ達が隣同士だってこと、今日のゼミの時、言いましょうか。そしたら、家から一緒に行けるからって言えますよね」
「言わなくていいよ」

「何で?」
「なんかすげー仲良しだと思われたら、嫌だろ」

「――――……」


 仲良しだと思われたら、嫌だ。

 って言うんじゃなくて。

 仲良しだと思われたら、嫌だろ。

 って。オレが、かよ。

「何で? オレがそんなの、嫌だと思う訳ないんですけど?」

 そう言いながら、もしかしてとは、思ったけれど。

「でも、もし……ゲイがバレた時のためにさ。そんなに隣同士で超仲良しとかは、言わない方がいいと思って」
「――――……」

 もしかして、そんな感じのことかなとは思ったけど。


 オレは奏斗の頬に手を伸ばして、両頬を摘まむと。


「そんなの全然平気」
「――――……」

 少しの間黙って、奏斗はじっとオレを見ていたけど。
 苦笑い。


「……人の目気にしてきたくせに」
「別に。面倒くさいから、適当に合わせてきただけ。人の目を気にしてた訳じゃないし。……そんなの気にして、奏斗と居なくなるとか無い」

「――――……あ、そ……」


 ふい、と視線を逸らして、頬の手を離される。


 何も言わず、パンを食べてから。


「――――……よく分かんない、お前」

 ため息をついて、それ以上は何も言わず、モグモグ食べてる。


 ――――……やっぱ、なんか……可愛い。


 ふ、と笑ってしまうと。少し睨まれた。






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