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揺れる
「可愛すぎ」*大翔
しおりを挟む朝。不意に目が覚めて、奏斗の方を見ると。
奏斗が、枕に顔を埋めて、何やら妙な動きをしている所だった。
……何してンの、この人?
声は出さず、見ていると、枕にぐりぐり顔をこすりつけて。
そのまま、ぎゅうっと枕に抱き付いて、固まった。
「――――……」
自然と、瞬きが多くなってしまう。
ほんとになにしてるんだろう、と思いながら、苦笑。
そっと手を伸ばして、奏斗の背中に手を触れさせた。
瞬間。びくん!と大きく震えて。それから、嫌そうにオレに顔を向けてくる。
クッと笑うのを止められない。
「朝から何してんの?……面白ぇんだけど」
「……っいつから」
「んー……なんか顔ぐりぐりしだした時から?」
「………………っ」
また枕に埋まる。
「奏斗? マジ、何なの?」
クスクス笑いながら、背中をポンポンしていたら。
「もう、オレにキスしないで」
それだけ言って、また埋まって、枕にしがみついてる。
「は?……嫌だけど。――――……何で?」
朝からムッとして、理由を聞いたら。
「……のうの……」
「え?」
「昨日、の」
「昨日の、何?」
「……っあんな寝方」
あんな寝方?
そう思って、すぐ、ああ。キスしながら落ちた寝方ってこと?
「もう二度とやだ」
「――――……」
はー。
昨日はあんなに可愛く、キスされて、すやすや寝てたくせに。
なにその感じ。頑なに枕抱いて、全然こっち見ねえし。
ムカつくなー。せめて顔見て言えよ。
そう思って、オレは奏斗に触れて、くるん、とひっくり返した。
そうくるとは思っていなかったのか、容易にひっくり返された奏斗は、びっくりした顔で、オレを見上げるけど。
「――――……」
なんか、顔、赤い。
「――――……何で、赤いの?」
その頬に触れて、逃げられないようにして、真正面から見つめる。
「あんな寝方、やだし」
なんかめちゃくちゃ恥ずかしそうに、視線を逸らされる。
「――――……」
めちゃくちゃキスされながら、寝ちゃったのが、朝起きたらすげー恥ずかしかったって。そういうことかな?
んで、静かに、枕に、ぐりぐりなってたの?
クッと笑いがこみあげてきた。
あ、やば。
と思った瞬間。
枕を投げつけられた。
「お前が、恥ずかしいことしたんじゃん!! 笑うなよ!!」
枕をどかしてる隙にあっという間にベッドを降りた奏斗は、猛ダッシュで部屋を出て、消えて行った。
「はは――――……なにそれ」
……可愛すぎなんだけど。
照れるとか。
なんか、顔洗ってる音がする。
どう我慢しても、笑ってしまいながら、ゆっくり立ち上がると。
オレも部屋を出た。
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