【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
188 / 557
揺れる

「ほっとけない」*大翔

しおりを挟む




「――――……?」

 ふと気づいたら、腕の中に奏斗が居なくて、目を開くと。
 すぐ隣に、奏斗が座っていた。

 まだ静かだし、暗いから、夜中だろうと思う。

「……奏斗?」

 座ってる奏斗の腕を引く。


「あ――――……ごめん。動いたから、起きちゃった?」

 苦笑いを含んだ声。

「どうかした?」
「……何となく目が覚めただけ」

「――――……寝る?」
「――――……」


 少しの間、沈黙。

「……四ノ宮」
「はい?」


「――――……お前って……何で、オレに、こんな風にすんの」
「何でって……」


「……隣だから?」
「――――……隣だからなんて理由で、オレがすると思います?」

「……思わないけど……じゃあ、協定、結んだから?」
「協定――――……」

 その言葉……すでに遠い遠い向こうに、いってたけど。

「……まあ。それもある、かも……?」
「――――……かもって……」

 奏斗は、苦笑い。


「絡んできた経緯とか、関係とか……色々複雑にあったからこうなってるとは思う、けど……」

「――――……うん」


「一言で言うなら――――……オレ、あんたを、ほっとけないから」
「――――……」

 不思議そうに、じっとオレを見つめてくる。


「……でもオレ、かよわい女の子とかじゃないし。その言葉も、女の子相手なら分かるんだけど……」
「――――……」


 はー、とため息をついてしまう。
 ……あんたの前で、つかないって、決めてんのに。


「……奏斗」

 頬に触れる。
 ……頬に触れる位じゃ、もう、特に何も言わない。


「――――……女だとか、男だとか、関係ないんだけど」
「――――……」


「オレは、奏斗を、放っておきたくねえの。……分かる?」
「――――……」


「他の誰を放っといても、奏斗だけは、無理」
「――――……わ、かんない……なんでだよ」


「……何でとか言われても、分かんないよ。こんな風に思うの初めてだし……」
「――――……」


「……つか、か弱い女の子とか。マジで、どーでもいいんだけど」


 はー、とまたため息……をつきそうになって、すう、と大きく吸い込んだ。


「……オレ、本気で言ってるよ。あんたがいいなら、ずっと側に居るって」

「――――……ほんとに……意味わかんない。ずっとって、何だよ」


 奏斗は、オレを見てから、ふい、と顔を退いて、頬から手を外す。

 ちょっとカチンときて。
 追いかけて、頬を捕らえた。


「――――……その内、意味、分かってよ」


 ゆっくり、近づいて――――……唇、寄せて。
 奏斗が、ちょっと困った顔をして、固まった瞬間。


 苦笑いで、止まる。


「――――……キス、するよ?」
「……っや、だよ、聞くなよ!」


「……嫌なら、突き飛ばして」


 そう言って、そのまま、顔を寄せて――――……。



 突き飛ばされないのを良い事に。
 キスを、重ねた。





しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

「じゃあ、別れるか」

万年青二三歳
BL
 三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。  期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。  ケンカップル好きへ捧げます。  ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

処理中です...