【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「意味わかんなくても」*大翔

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「ご馳走様でしたー」
「ね、食べた中でさ、具はどれが好き?」

「んー……全部美味しいよ?」

 少し考えてから、そんな風に答える。

 ああ、そう、と笑って奏斗を見つめると、じっと見つめ返してくる。少し後、ふいっと視線を逸らされて――――……コーヒーを口にする奏斗に不意に触れたくなる。

 その気持ちのまま、そっと、奏斗の頬に手を伸ばした。

 触れると、ぴた、と奏斗が止まった。


「……昨日、ほんとによく寝れた?」
「う、ん」

 なんか困ってるの、分かるけど。

 ――――……なんか可愛く思えて。
 離す気にならない。


「くまできてるけど」

 親指で軽く目の下をなぞると、む、と唇が少し尖る。


「……いつもくまあるし」

「――――……いつもはくま、ないよ」
「あるってば」

 言いながら、オレの手を嫌がって、少し離れる。
 その頬を摘まんで、ちょっと止める。


「……あのさぁ、奏斗」
「……何」


「――――……言っておきたいことがあるんだけど……」
「――――……」



 ……いまだ、何でかは、よく分からない。

 好きとか。――――……よく分かんねえし。
 こんな、和希のことばっかりな人を好きなんて。すげえムカつくし。

 …………でも。


「あのさあ。オレ」
「――――……?」


「奏斗が良いなら、ずっと居るから」
「――――……」

 大きな瞳が、じっとオレを見つめる。
 瞬きがやたら多い。


「――――……何、言ってんのか、分かんない。そんな事出来る訳ないじゃん」
「オレがそうするって言ってんだから、出来るでしょ」

「……ずっとって、何」
「――――……とにかく、ずっと。奏斗が良いなら」

「……彼女とかどーすんの」
「別に要らない」

「……結婚とか」
「しない」

「……会社継ぐんだろ」
「それは継ぐかも? ……でも継がないかもしれない」


「……お前、ゲイになんの?」
「――――……結果的にそうでも、別にいいよ」


「…………意味、分かんない」


 片手でつまんでた頬を、両手で挟んで、引き寄せる。


「分かんなくても、本気で嫌って言われるまで離れないから、覚えといて」


 オレだって、意味わかんねえけど。
 ――――……絶対離れたくないし、一人で居させたくないし。

 恋人でもねえ奴になんか、抱かせない。


 ずっと居る。
 オレと一緒に居る事が、この人の、普通になればいい。


 そんな風に思いながら告げた言葉に、すぐに返って来た言葉は。



「オレ、今の――――……覚えないから」
「は?」

 思わず、一言。その後、固まってしまう。


「だから、いつでも、無かったことにしていいよ」
「――――……」


 ――――……そうくるか。
 なんかもう。苦笑いしか浮かばない。


「……無かったことになんかしないから。まあいいや。すぐ信じなくてもいーよ。どうなったって、居るから」


 そう言うと、何を思ってるんだか、むっとしてる奏斗を引き寄せて、キスした。
 すると、顔を退かれて、少し、離される。



「……あのさぁ――――……自然とキスすんのも、やめ……」


 至近距離のオレを軽く睨んでる奏斗の後頭部を引き寄せて、また唇を塞ぐ。


「っ――――……もー、だから……」
「……やめないよ」


「――――……」


「オレとキスして、オレに抱かれて、側に居てよ」

「――――……」


「……とりあえず、そのつもりで、オレは居るから」


 奏斗は何も言わないけど、もう、心の声が見えるみたいだ。

 意味わかんないって、連呼してそう。


 ふ、と笑ってしまいながら、オレは、奏斗から手を離した。


「今日一限から?」
「……そーだけど」

「オレもだから。一緒に行こ」

 そう言うと、また、は?って顔で見てくるけど。
 ――――……そんなので今さら引き下がるはずもない。


「今まで一回も一緒に行ったこと、ないけど」

 そう言ってくるけど。


「今まで一回も会わなかったからね。仕方ないじゃん。今はもう、仲良しなんだからさぁ、いいじゃん」
「……仲良しだっけ?」

 じっと見てくる、奏斗。


「一緒にご飯食べて、一緒に過ごしてるんだから、仲良しでしょ」
「――――……は。もう。……ほんとに、意味わかんない」


 そういう奏斗が。
 ――――……呆れたように少し笑んだのが、なんだか、すごく嬉しい気がしてしまう。




 たかが、少し、微笑んだだけなのに。




 
 




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