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至近距離で
「オレのに?」*大翔
しおりを挟む葛城との電話を切って、スマホを置いたら、急に眠くなってきた。
よく考えたら、ホテルではほとんど寝なかったし、奏斗が居る間も、結構起きてたっけ。
――――……どーせ、奏斗からは来ないだろうから、寝るか。
そう思うのだけれど。
リクさんと、葛城の言葉。
それから、奏斗の言葉。
全部、立場も気持ちも色々違うだろうに、言ってることは、同じ。
もともとノーマルなオレが。
奏斗と何がしたいんだっつー、そういうことだ。
どうせその内、女に戻って、奏斗と居なくなるなら。
いますぐ離れろ。
そういうこと。
「――――……」
額に当てていた手を少し離して、じっと手のひらを見つめる。
この週末、この手で、めちゃくちゃ触った。
食べさせて、飲ませて、よっかからせて。
腕の中に。ずっと近くに。
――――……誰かに、こんな風にしたいと思ったことが初めてで。
自分でも確かに、戸惑ってる。
何がしたいかって言われたら。もう答えなんて、決まってる。
和希のことなんか完全に忘れさせて、あんな一晩だけなんて絶対やめさせる。震えたり泣きそうになったり、自分にすら触れないとか。キスも出来ないとか。マジで全部忘れさせて――――……オレの。
そこまで考えて、ふと止まる。
――――……オレの?
…………オレの、に――――……したい?……とか。
「――――……」
……ちょっとよく分かんねえけど。
今まで生きてきて会った中で、一番、危なっかしくて、それをどうでもいいと、思えない相手。
まだ頭ん中、「和希」ばっかりで。
オレのことなんか、そん中にないかも。だから無理やり入り込むつもりだし。
――――……あーやっぱり今日、一人にしなきゃ良かった。
くっそ……。もー次から絶対、帰ってほしいなら帰る、なんて言わねーぞ。
あの人が元気になって、他に好きな人が出来るなら離れるのもいいし。
――――……それが無理なら、オレがずっと居てもいいって思ってるし。構い倒してれば、寂しくはないだろうし、一人で丸まることも出来ねえだろうし。
散々聞かれたけど、この先どうするかなんて、今は関係ない。
抱くと決めた時点で、かなり覚悟したんだ。
明日も居るし、明後日も居るし。きっとその後も、そのまま居る。
それでいい気がする。
意味が分からないとしても、ずっと居れば、居る事に慣れるだろうし。
つか、マジ見合いなんてしねーからな。
さっき電話を切った際、念を押したのだけれど、葛城は苦笑いしてるのみ。
結婚なんかしねーし。
――――……奏斗が一人でいる限り。
……とか。
――――……これは重すぎるから、絶対、口には出さないようにしようなんて思いながら、オレはスマホを手にした。
『明日の朝、7時に、また違うホットサンド作るから、絶対来て。おやすみ』
そう入れて送信してから、しばらく見るけれど、既読はつかない。
――――……眠れてるんならいいけど。
……小さくなってなければいいけど。
昨日はここで抱いてたのに。
そんな風に思いながら、眠りについた。
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