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至近距離で

「悶々」*奏斗

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「……四ノ宮、やめ――――……」
「――――……ん?……」

 少し離した唇をまた塞がれる。四ノ宮の手が、裾から入ってきて、腹筋から胸をなぞって、乳首を掠めた。

「…っ!」

 ここ何日かですごく触られまくってる気がする。少しの刺激で、熱くなる。


「……っだから、もう……やめ……」

 ゆっくり、唇を離すと。四ノ宮は、ぺろと自分の唇を舐める。

「もーほんと……気持ちよさそうな顔、するね……」

 そのまま、耳に、舌が這う。

「――――……奏斗、で呼ぶ。二人の時だけで良いから。いい?」

 耳に舌が入ってきて、 刺激される。

「ひゃ……っ」

 頭の中に響く水音に、ぎゅうっと瞳を閉じる。
 四ノ宮の手が。あろうことか。ズボンの上から、下半身に触れた。


「――――……っっや、だってば!!」

 その手を止めると。
 四ノ宮は、ふ、と笑って。


「じゃあ――――……今はやめるね」

 そう言って、オレを離した。


「帰ったら、寝る準備する。来たかったら、チャイム鳴らして」
「行かないし!!」

「はいはい。来たかったらでいいですけど」

 クスクス笑う四ノ宮は、靴を履いて、オレを振り返った。
 あしらわれてるみたいで、すごくムカつく。

「じゃあね、奏斗」
「……呼ぶなって、言ってるじゃん」

「外では、呼ばないから」
「――――……っ」

 どこでも呼ぶなって言ってるのに、意味が分からない。

「……四ノ宮は、オレと何がしたいの?」
「何がって?」

「……オレと、今してるみたいな、そんな事しても、四ノ宮に良い事ないじゃん」
「――――……」

「遊ぶんなら、女の子が良いに決まってる。オレはこないだみたいにぼーっとしないで、ちゃんと……もっと、ちゃんと気を付けるから。大丈夫だから」

 四ノ宮は、じっとオレを見つめてる。

「……この週末の事、ありがとうって、ほんとに思ってる」
「――――……」

「これからも、オレ、コーヒーとか飲みたいなら淹れるし。話したい時は聞くし……これから、ゼミは結構大変になるしさ」
「――――……」


「ちゃんと考えてよ。こういうのも、無しにしようよ。今まで通りが良いと思う」

 そう言うと、四ノ宮は、はー、とおおげなため息。


「分かった。――――……とにかく考えてくる」
「うん。そーして」

「――――……今オレ、触ったでしょ」
「……え?」

「……こんな中途じゃ嫌なら――――……オレのとこ来ていいよ」
「っもう平気だし!! バカ!! もー帰れ!」

 かあっと赤くなってしまって、それがムカついて叫ぶ。

「近所迷惑だよ、奏斗」
「奏斗って呼ぶな! もう!!」

 四ノ宮は、クスクス笑いながら、しー、と指を立てつつ。

「一応考えるから、奏斗も、オレに触られたいか考えて」
「早く帰れ」

 もう疲れて、ボソッと告げると。
 笑いながら四ノ宮は出て行った。



 マジ意味、分かんない。

 ムカつきながら、鍵を閉めた。
 そのままため息。もうそのまま洗面台で歯を磨いて、トイレを済ませた。

 ……もー、なんで、体、触んだよ。
 ――――……今はもう反応してないけど。

 思い出すと、ぞく、としたものが背筋、走る。


 昼間、あんなにされたのに。
 ――――……しばらく、んなことしたくなんないと思う位に。

 ……もー、なんなんだよ、もー。



 ……四ノ宮、マジで、やだ。
 ――――……絶対、行くもんか。あいつのとこなんか。
 そもそも行く理由 無いし!


 そのままベッドに潜り込む。
 しばらく、目をつむって、何も考えず、眠ろうとする。


 ――――……眠れない。

 枕を抱き締めて、何だか延々、ずーっと、悶々と考えながら。
 大分遅くなってから、眠りについた。





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