【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「ひっかかる」*奏斗

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「四ノ宮、何にする?」
「オレ、チキンとほうれん草のカレー」

「このバターチキンってやつ??」
「そう」

「決めるの早い」
「……ていうかもう5分位悩んでるけどね」

 クスクス笑いながら、四ノ宮が水を飲んでる。

「だって、なんかどれも美味しそうで。豆カレーていうの食べてみたいけど、ココナッツチキンていうのも食べてみたいし、バターチキンも気になるし。キーマカレーも食べたいなあ……」

「ていうか、まだ4つにしか絞れてないんですか?」

 今度はちょっと呆れたように苦笑いされる。

「だって、ここ、クラブ来ても通らない道だし。来ないかもだし」

 お店の人に聞こえないようにいって、むむむ、と考えていると。


「別にいつでも車出しても良いけどね……」

 クスクス笑いながら四ノ宮がメニューを身を乗り出して、メニューを覗き込んできた。

「味見したいなっていう程度のはどれ?」
「豆と……バターチキンかなあ」

「じゃあさ、このハーフ&ハーフって奴にします? オレ、バターチキンと豆頼むから、奏斗は、残り二つたべれば?」
「え。豆いいの?」
「別になんでもいいし。そんな好き嫌いもないし」
「四ノ宮が、バターチキンが半分になってもいいなら」
「いいよ」

 ぷ、と可笑しそうに笑って、四ノ宮が手を上げて店員さんを呼ぶ。

「奏斗、飲み物は?」
「ラッシーがいい」

 ちゃきちゃき頼んでくれちゃって、メニューをしまってる四ノ宮に、ラッシー好きなの?と、笑われる。

「うん。こういうインドとかのカレーやさんに来ると、頼む」
「甘いよね」
「うん。好き」
「そっか」

 ふ、と笑われて。

「四ノ宮は何頼んだの」
「アイスコーヒー」

「なんかコーヒー好きだよなー。しかもブラックばっかり。胃、悪くしそう」

 そう言うと。

「奏斗は、胃、悪くしなそうだよね。カフェオレとか、ミルクティとか。甘いの入れて飲むし。――――……ていうか、それで何でそんなに、細いのか不思議だけど」
「…………」

 オレは、むっと、四ノ宮を睨む。

「……何?」
 くす、と笑われる。

「細いとか普通の声で言うなよ」
 コソコソ言うと。

「何で?」
「オレの裸見たって言ってるみたいじゃん」

 耳を寄せて、聞いてた四ノ宮はますます可笑しそうで。

「ぱっと見、太ってないって言ってるんじゃん。考えすぎ」
「――――……っっ」

 なんかそう言われると、そんな気もして、ちょっと恥ずかしい。

 そっか。これって、普通の会話??


「抱いたら細すぎたとか言ったら、そういう意味で聞くかもだけど」

 クスクス笑われて、こそこそ囁かれて。なんだか色々思い出して、かあっと顔が熱くなる。
 オレは眉を寄せて、四ノ宮を睨む。


「オレの言葉より奏斗のそういう顔のが、アヤしいと思うけどね……」


 クスクス笑われ、本当、ムカつく……。



「あ、でも。奏斗、細いけど、抱き心地、良いよ?」

 にっこり笑われて。


「~~~っ……もう黙ってて、お前」

 ちょうど運ばれてきたサラダを、もぐもぐ食べ始める。


「……つか、マジで、もー誰にも触られないでほしいんだけど」 

「――――……」
 

 なんかもう、オレは、四ノ宮のそのセリフに、何か怒ってたのも忘れて。


「……ほんとに何、言ってんの? 四ノ宮……」
「何言ってんのって。……本気で思ってる事、言ってるんだけど」

 言いながら、四ノ宮もフォークを手にして、サラダを食べ始める。



 本気で。

 …………本気で??


「……お前って、オレに恋人出来たら――――……」
「ん?」

「――――……」


「なに? 作る気になった?」



 ん?と見つめてくる四ノ宮に、オレは、少し黙って。
 それから、首を振った。


 ――――……オレに恋人出来たら、引き渡して、下がるんだろ?
 と言いかけたけど。


 ……結局、何が聞きたいのか、よく分からない質問になりそうだったから、やめた。


 やっぱりそれまでの間とか。
 
 よく分かんないし。


 ――――……やっぱり、四ノ宮に触られるの。
 もう断固拒否で行こう……。



「……四ノ宮」
「ん?」

「やっぱり名前呼びやめて」
「え? 何で?」

「……やっぱりやだから」

「――――……一日は、オッケイでしょ?」
「…………」


「とりあえずあと数時間は、呼ぶ」


 そこにカレーが運ばれてきて。
 完全に話は中断。


 美味しいカレーの時間になった。


 何かがひっかかるけど。
 よく分からないまま。






(2022/6/4)
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