【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「目立つ」*奏斗

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 オレが助けられた時の事は、全く記憶にないので、んー、と考えていると。


「リクさんは警備を呼んで、誰も出すなって声荒げてるし。めちゃくちゃ珍しいんですよ、リクさんがそんな風なの。まあすぐ見つけて確保してからはすぐいつも通りでしたけど。でもって、その後来たお兄さんは、もう確保されてんの知ってるはずなのに、見るまで安心できなかったんでしょうねー。もう、ほんと蒼白って感じで」

「……そう、なんですか……」
「そうなんですよ」

 彼はにっこり笑って、オレを見つめた。

「ほんと良かったです、ご無事で。はい、どうぞ。こちらオマケです」

 頼んでない物まで渡され、おしぼりも持たされて、四ノ宮とリクさんの所に戻る。

「リクさん、ご馳走様です」
 渡されたお皿をテーブルに置きながらそう言うと。

「うん。いいよ」

 クス、と笑ってリクさんはオレにそう言って。
 それから、ちら、と四ノ宮を見た。

「まあ、そんな感じかな。それじゃね。またね、四ノ宮くん、ユキくん」
「あ、はい、また」

 リクさんが離れていく。オレは四ノ宮を何となく見上げる。

 ……蒼白?
 …………って。

 そんな風になるイメージは全く無いなあ。
 いつでも、余裕で、落ち着いてそう。


「……何ですか?」
「――――……いや。何でもない。 ……つか、今、機嫌悪い?」
「別に?」

 絶対嘘だ。
 素知らぬ顔してても、なんか分かる。

「……何? 言ってよ」

「――――……リクさんに、またって」
「……」

 さっきのオレの返事? 四ノ宮を見上げると。

「またここに来る気?」

「――――……あ。そういう意味か……」

 ちょっと不機嫌な理由、やっと分かった。
 ていうか。リクさんがまたねって言ったからだし。……ただの、挨拶じゃん。

 そう思うんだけれど。
 んー。……ちょっと、怒ってる……?


「……しぱらく来ないからさ」
「しばらく?」

 何でこんな事、四ノ宮に断るんだろうと思いながら、とりあえずそう言ったのに、また、その部分でひっかかるみたいで、聞き返される。


「……とりあえず、しばらくは」

 そう言ったら、ふー、とため息をつかれたけど。

「……まあ来させないからいっか」

 ニヤ、と笑われて。じゃあ最初からムッとしなきゃいいじゃんと、逆に少しムッとするオレなのだけど。

 でもなんか、今はもう何も言わなくていいやと思って、口を閉ざす。


 置いたおしぼりで手を拭きながら、「飲んだら帰りましょ」と四ノ宮が言う。


「ん。――――……な、リクさんと何話してたの?」
「んー。……世間話?」

「ふうん……?」

 
 四ノ宮は、ぱく、とスナックを口に入れる。

「あ、うまい」
「あ、そう?」

「ん。はい」

 ぱく、と口に入れられる。
 ……食べさせられそうになって、つい、口を開けてしまった。

 これは。
 傍から見たら。あーんてしながら、イチャイチャしてるように見えてしまうんじゃないだろうか。

 つか。

 ……目立つんだよ、こいつと、二人で居ると。

 オレが一人で来てもわりと視線は感じるから、だからよく、リクさんのとこに行って、気づかない振りをしたりもしてるんだけど。

 声を掛けられるよりは、良さそうな人に自分から声を掛けたいし。


 ……ていうか。
 とにかく、オレが一人で居る時より、めちゃくちゃ視線を感じる。


「おいしい?」

 めちゃくちゃ目立つイケメンが、人の口におやつ、食べさせて。
 にっこり笑ってきてたりすると。


 ……ほんとに、目立ってる気がする。


「……お前、目立つから、変な事しないでよ……」

 こそ、と囁くと。


「――――……つか、さっきから、奏斗の事、ちらちら見てる奴らが居るから、オレはわざとやってんだけど」

「……わざとやってたの?」

「わざとだよ。女の子ならまだいいけど」


 少し眉を寄せて、ちら、と周囲を見回す。


「だから、早く飲んで帰ろうっつってんの」
「――――……」


 ……つーか。絶対オレに飛んできてる視線より、四ノ宮に飛んでる方が、多いと思うんですけど。





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