【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「嬉しい……?」*奏斗

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「奏斗、こっちは?」
「ん……」

 なんかすっかり。普通に呼び捨てされてる。


 ――――……めちゃくちゃ触られたあの後。一緒に昼ご飯を作って、食べて、片づけて。
 コーヒー飲んでゆっくりして。

 一本、映画を一緒に観た。
 タイトルを聞いた事もない、恋愛映画。

 学園中の女の子にモテてる男の子を落とすために、普通未満だった女子が、奮闘して、可愛くなっていって、好きになってもらおうと、めっちゃくちゃ元気に頑張る、ラブコメもの。まあ半分ギャグみたいな。

 何も考えずに、可愛いなーって、思える映画で良かった。

 けど。――――……最初は離れて座ってたのに、四ノ宮に引っ張られて、また、膝の間に座らされた。

 ……よくわかんね。
 オレの定位置を、四ノ宮に寄りかからせる所、にしようとしてんのかな。

 ――――……何がしたいのか、よく分かんない。
 オレも。どうして、もっと強く、嫌だって、言わないのか。

 ……分かんないことばっか。


「奏斗?」
「……え。あ。ごめん。何?」

 驚いて、四ノ宮を見上げたら、四ノ宮は、クスクス笑って。

「白だと、ここらへんが美味しそうかなって聞いてたんだけど」

 四ノ宮が指さすワインに視線を向ける。

「うん……」

 映画を見た後、リクさんに渡すお酒を買いに、大きい酒屋に来ていた。
 クラブではリクさんはお酒を飲まないので、どんなお酒が好きなんですか、とか話した事があって。白ワインが好き、と言ってたから、それを吟味中、だった。


「飲まないから分かんないよね……どっちかなあ」
「じゃ店の人に聞いてきますね」

 そう言うと、四ノ宮はさっと歩いて行って、店員の女の人に話しかけてる。

 ――――……なんか。ああやって。知らない人と話してるあいつは。
 やっぱりオレと話してる時とは、違う。

 王子ね。
 ……ま、分かる。

 顔がね。整いすぎなんだよな。
 育ち良さそう、って、思うし。がさつな感じとかは一切ない。

 なんか綺麗な部屋に住んで、何不自由なく暮らしてるんだろうなーと、感じるっていうか。まあ実際、部屋見ても、そのまんまのイメージだけど。

 まあ。「王子」って言いたくなる気持ちも、分かるけど。

 四ノ宮が店員と話しながら戻ってきて、あれやこれやと説明を聞いてる。
 オレもそれを聞きながら、ワインを眺めていて。

 四ノ宮が礼を言うと、店員は超笑顔で、離れて行った。

「んー。どうしよっか。こっちか、こっち辺り? ちょっと高いの一本のが良い?」
「うん」

「じゃあこっちね?」
「ん」

 二人でお金出し合って、会計をして、簡単にプレゼント用に包んで貰っている間。


 じっと、四ノ宮を見つめる。

「ん?」
「ほんと、何か……」
「うん?」

「……お前、オレのそういうのに、関わんない方がいいと思うんだけど」

「――――……何それ」

 しばし沈黙の後。四ノ宮が、クスッと笑う。


「オレ、もう、すっげー深く、あんたと関わってんだけど」
「――――……」


 す。っげえ、深く、って……。

 めちゃくちゃ意味深な言い方で、囁かれて、固まっていると。


 あたりを一瞬見回した四ノ宮が。
 オレの背筋から腰に、す、と指を這わせた。

 もう、瞬間的に、びく!!と震えたら。



「……どーなるかも、かなり知ってんのに。今更すぎ」

 
 クスクス笑われて。また囁かれて。


 ビクついた自分も恥ずかしいし、
 四ノ宮のセリフの意味考えても恥ずかしいし、
 なんかすげームカつくし。

 色んな意味で顔が熱くなって。




「……ほんとに嫌だ、お前」

 言うと、四ノ宮は、ふ、と笑って、オレを斜めに見下ろして。


「……奏斗がオレを、嫌いじゃないだろうってのは、分かってるし」
「……っもー、奏斗、呼ぶな」

「今日一日呼んでいいっつったじゃん。慣らす為に、今ひたすらめちゃくちゃ呼んでんだから、慣れてよ」


 ひたすらめちゃくちゃ呼んでるって……。


「……無理だったら、今日でやめるんだからな」
「慣れてもらうし。奏斗奏斗奏斗奏斗」

「……っっなんなんだよ、お前」


 こそこそと喧嘩をしていると、店員が、「お待たせしましたー」とすごい笑顔で近づいてきた。


「ありがとう」

 と。店員の女の子に、無駄な愛想を振りまいて、またしても、超笑顔で、送り出される。

 歩きだしながら。
 ちら、と四ノ宮を見上げる。


「――――……愛想笑い、ほんと威力あるよな」
「ん?」

「……簡単に虜にできるよな、四ノ宮。ホストとかになったら、すごそう」
「今度はホストときたか……。天職だったりするかな?」

「……もうテレビで取り上げられる位有名になりそう」
「んー。……でもそれ、オレは、すっげー疲れそう」

「――――……」

「……あんたと話し始めて、素で話すの楽だなって今は思ってるからさ。あんたと話す前のオレなら、何も考えずに、出来たかもね」

「――――……」

 なんか、そんな風に言われると。



 ――――……よく分からないけど。
 なんか少し。

 嬉しいような気が。するような、しないような。


 ……しないかな。うん。


 ――――……。




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