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至近距離で

「寄りかかって」*大翔

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 ――――……言うのやめたけど。
 ほんと。
 ……何だろうな。何でこんなに可愛いと思ってるんだ、オレ。


「奏斗って呼んでいい?」
「やだ」

「何で」
「年下じゃん」

「一個しか違わないじゃん」
「てか、学校でも呼び捨てるつもり? 変じゃん」

「そう? 仲良しだと思われる位だよ、きっと」
「――――……やだってば」

 むー、と腕をつっぱって、オレの抱き締めてる腕の中から、逃れようとしてる。……つかその動きが、何か可愛いんだけど。何なんだ、あんた。


「……奏斗」

 普通に呼んでみた。
 すると、ものすっごい、めちゃくちゃ、眉を寄せて、ものすごい、オレから引いていこうとする。その腕を掴んで、引き寄せる。


「奏斗?」
「――――……っ」

 腕の中に入った先輩の耳元で、囁いたら。
 びくう!!っと震えて。離れた時には、真っ赤になってた。

「耳、弱すぎでしょ……」
「……っわざとやったくせに!! もー、お前、マジで嫌い!!!」

 囁かれた耳に手を当てて、何だか知らないが、ごしごし拭いている。

「拭かなくて良くない?」

 拭いたって意味ないでしょ、と、笑ってしまうと、先輩はめちゃくちゃ怒った顔をして。

「なんかくすぐったいのが残ってんだよ!! 馬鹿宮!!」

 もーほんと、やだ!!
 ぶつぶつずーっと言いながら、ずりずりとオレから離れて、ベッドの端で、壁に背を付いて座る。

 ふ、と笑ってしまいながら。
 オレも場所を変えて、先輩の隣に、壁に背を付いて座った。


「…………」

 先輩は、また膝を立てて、そこに肘をついて、顎をのせる。


「そうやって、膝立てて座るの、癖?」
「え?」

「……よくやってるから」

 なんか、膝抱えて、ちっちゃく座る感じ。
 ……別に。悪いわけじゃないんだけど。

 なんか。寂しそうに見えて、すげー気になる。
 オレがそういう目で、見てるからかな――――……。


「……そう?」
「ソファの上でもそうやって座るじゃん」

「……そうだっけ? ……じゃあ、癖かも?」

 思い出してもよく分からない、といった顔で首を傾げて、オレを見る。


「……家でもそうやって座ってる?」
「えー?? 分かんない。どーして? 気になる?」

「いや。……良くそうやってるなーって、思うだけ」

 寂しそうに見える、とは、言えない。



「変なこと、気になるんだな?」


 先輩は、そんな事、笑いながら言ってるけど。
 そんな事言いながら、また横で、膝抱えて座られると。


「あのさー。ちょっと抵抗、しないでね。変なこと、しないから」
「?」

 先輩の腕、掴んで、引き寄せながら、さっきみたいに、オレの脚の間に引っ張っててきて、オレに寄りかからせる。
 オレは膝立てておいて、先輩を後ろから、包むみたいな感じ。


「――――……四ノ宮さぁ……これ、変なことじゃない、って、言う?」

 先輩は、もはや諦めたようなため息を付きながら、オレを振り返って見上げてくる。

「別にやらしい事してる訳じゃないし。寄りかからせてるだけじゃん」
「――――……」

 抱き締めたら退かれるかなと思って、手は、自分の膝に置いておく。


「……膝抱えて座るなら、よりかかってて、いいよ」
「――――……変なの。四ノ宮」

 なんか苦笑いの先輩。


「……そんなにオレとくっついてたいの?」
「――――……そーかもね」

 思わずクスッと笑ってしまいながら、そう答えると。


「ほんと変なの……まーいいや…… もー疲れたし。今だけな?」
「いつでも寄っかかってていいよ」

「――――……ほんとうに、心底、意味が分からない」


 そんな風にしみじみ言われて、苦笑が浮かぶけど。


 でもやっぱり、丸まって座られるより、全然、良い。 
 もーこれでいこ。 

 ずっとやってれば、慣れるだろ。





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