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至近距離で

「添い寝から?」*奏斗

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「――――……そんな、くっつくなよ」

 なるべく密着しないように、少し離れようと藻掻くのだけれど。
 なんか、離れられない。

 なんなの、こいつ。
 思ってたよりももっと、体、デカいような。人の事包むのやめてくんないかな。

「……先輩さ」
「……何」

「――――……嫌じゃないでしょ、これ」
「……やだけど」

 そう答えると、後ろで、くす、と笑う。
 笑う動きが伝わる位、くっついてる、てことで。

「素直じゃないなー……嫌なら、振りほどくでしょ、先輩」
「――――……これしたら、キスしないって言ったからだし……でもくっつきすぎだから、離れろって……」

「キスだって、絶対嫌だっていえば、オレ、しないですよ?」
「――――……勝手にキスしてたじゃん……」

 言うと。……まあそうですけど。でもそこまで、嫌そうに見えてないんで。と、言いながら、また笑う。

「先輩が、オレとこうしてるのが嫌じゃないなら。ここから始めましょーか」

 嫌じゃないって、言ってませんけど。
 と、ツッコミ入れたいけど。

「なに、ここからって」

 そっちの方が気になって聞いてみる。

「添い寝から始めましょ」
「――――……オレがいつ、添い寝してほしいって言った??」

「オレがしたいから」
「――――……」

 何か、あれこれ全部、何言ってんだか、よく分からない。
 聞きたい事がいっぱいあるんだけど、話すたびに、どんどん増えていって、結局聞けないまま進む。

 ……添い寝から始まって、何にどう進むんだ。

 ――――……でも、なんか、聞いたら自分が困るような答えしか返ってこなそうだから、それはそれで、聞きたくなくて、オレは、言葉を飲み込んだ。


 さっきよりも大分密着して。
 ――――……なんか、本当に、包まれてるみたいな感じ。


「……四ノ宮、寝辛いよね、これ。離して」
「全然。……むしろ、抱き心地良くて、良い」

「…………バカなの……?」
「何で、バカなんですか?」

 クスクス、笑われる。

 
「――――……雪谷先輩」
「…………」

 ……いっつも、ほぼ、先輩、としか呼ばないのに。
 なんで、名字くっつけた。

 警戒して、黙ってると案の定。


「――――……キスしていい?」


 と聞いてくる。

 もう、何なの、お前。


「……あのさ。何回も、言ってるんだけど」
「はい」

「オレ、キス、嫌いなの」
「――――……」


「……寝てた人達とも、よっぽどキスが好きな人としか、しないようにしてたの。大体の人が、キスはちょっと、ていうと、わりと分かってくれる人が多くて、だから、してない――――……」

 そこまで、言った時。
 肩にかかった手に、ぐい、と後ろを向かされて。

 え、と思った瞬間。
 キス、された。


「――――……っ」

 ――――……また、こいつ……。
 だから今、嫌い、って言ってんのに、何聞いてた。


 別に。キス位。
 そんな大騒ぎして、振りほどく程じゃない、気がする。

 知らない人と、ただ快感のために寝るとか、してるんだし。
 ……今更キス位で騒いだらおかしいだろ……って、自分のこと、思うん、だけど――――……っ。


「……っはなし――――……」

 振り解こうとしたのに、顎を捕らえられて、包まれてた体は、半ば上に、押し乗られて。

 柔らかく――――……舌が絡んできた。


「――――……」


 ……くっついたら、キスしないって言ったのに。
 と、言いたいけど。


 ――――……本気で嫌なら。殴ったっていいって思うのに。
 何でか。

 本気で、振りほどけない。




 


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