【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「添い寝」*大翔

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 入ってきてから、ピクリとも動かないし。
 ――――……寝てるよな。

 思いながら。
 何となく手を伸ばして。先輩の頭に触れた。

 髪の毛、やわらかい。
 ……猫みてえ。

 くしゃ、と、一度撫でてから、隣に入って寝転がった。

 ――――……デカいベッドにしといて良かった。
 なんて思いながら。先輩の方を向いて、片肘ついて、横向きになる。


 ――――……静かな寝息。
 やっぱ、昨日あんまり寝れてなかったし。昼寝もそんな長い時間してなかったし。疲れてたかな。

 そっと手を伸ばして。くい、と、こちらに向けて引いてみる。


「――――……ん……」

 ころん、とこっちに転がって、少し嫌そうに眉を寄せて、一瞬顔を擦るみたいな仕草をしたけれど。そのままオレの方を向いて、眠ってしまった。

 すぐ目の前で、スヤスヤ眠ってる顔を見ていると。
 ――――……何とも言えない気分になる。


 ……これって。
 きっと誰がどう見ても、可愛いよな……。

 ……オレだけがそう思う訳じゃ、ねえよな。と、誰に言う訳でもないのに、可愛いと思う理由づけを、自分の中でしている。

 ――――……ほんと。
 なんだろうなぁ。この、可愛いの……。


 空いてるほうの手を、そっと、また髪に置いた。
 ――――……さら、と撫でる。


 睫毛、長い。
 ――――……少し開いた唇。

 キスして、めちゃくちゃ、可愛がりたい、とか。
 ――――……あー。よくわかんねえな。

 ……抱いた時は、薬が抜けてなくて。
 最後の方だけ、ちゃんと意識あったけど、薬の影響があったから。本来の反応じゃない気がして。


 も一回、最初から、ちゃんと――――……したい。

 親指で、そっと、先輩の唇に触れさせた瞬間。
 ふ、と少しだけ瞳が開いた。

 どき、と。――――……心臓が音を立てるとか。
 実はオレ、あまり、無い事なんだけど。

 触れていた手をそっと離して。ドキドキ弾んだまま、見守っていると。

 しばらくぼーーーー、として、一点を見ていると思ったら。
 ふ、と視線を上げて、オレと視線が合った。

「――――……」

 視線が合ったといっても、いまだ、ぼーーとしている。


「――――……あ……四ノ宮……」

 数秒経ってやっと焦点があって、オレの名を呼んだ。


「あれ…… あ、……風呂……出たの?」

 なんかぽけっとした、間の抜けた質問に、ふ、と笑んでしまう。


「――――……先輩、やっぱ疲れてる?」
「んー……へーき。っても、あっという間に寝てたかも……」


 苦笑いしてる。


「寝て良いですよ」
「――――……うん」


「おやすみなさい」
「ん……おやすみ」

 向かい合わせも変だと思ったのか、先輩は言いながら、壁の方を向いて静かになった、のだけれど。


「――――……先輩」
「え」

 ぐい、と引き寄せて。
 先輩のウエストに手を回した。


「ちょ――――……何」
「……なんか。せっかくだから、一緒に寝ましょうよ」

「……やだよ、離して」
「――――……これ以上、何もしないから」

「……キスもしない?」
「こうしててくれるならしない」

「――――……」

 こうしてないとするのか、みたいな顔を振り返られて、すごく嫌そうだけど。はー、と息を吐きながら、また、顔を戻して、力を抜く。


「……添い寝してくださいよ」

 クスクス笑いながら言うと。


「……あまえんぼかよ……」
「何とでも言って――――……いいじゃん、せっかく同じベッドで寝てんだから。……おやすみ」

「――――……おやすみ」
 
 はー、と息を吐きながら、もう仕方なさそうに言って。

 先輩は、そのまましばらくして、眠りについた。




 昨夜あんなことされてんのに。
 ほんと、警戒しないなー……。



 オレを信用しちゃってンのかな、とも思うけど。

 

 なんだかなーほんと……。






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