【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「ほっとする」*大翔

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 感情をコントロールするという事、特に怒りの感情のコントロールはトップに立つなら出来なきゃいけない。葛城がよく言う。子供の頃はよく分からなかったけど、言い続けられれば、その内嫌でも理解する。

 色んな人間と絡む中で、自分の感情を見せない術も学んでしまってはいたし、自分の経験からも、本性出さずに、望むままで居れば波風立たないし楽だとも思っている。

 感情を中に留めるのも、別にそこまで苦じゃない。嘘をついてるとまではいかないが、全部の感情を表に出さない事は容易だし、そうしている内に、感情の方を表に合わせる事もできてしまっている気がする。

 そんな風に生きてきたから、特にここ近年は、周りはわりと平穏。
 本音で言ってないことも多いから、ぶつかり合うことも殆ど無い。
 ある程度納得できるならいつでも意見も変更可能。

 ……本気で生きてぶつからなければ、ムカつくとかの感情も、そこまで浮かばない。

 なのに。
 なんなら完全に他人の事。それで、こんなすげームカつくとか。
 しかも、かなり過去の事なのに。

 
 オレが先輩に構い倒して、上書きして、忘れさせることが出来たら。
 ――――……先輩は、また、恋しようって、なるのか。

 1人で生きてくとか。
 体だけでとか……似合わないセリフ、言わなくなるのか。
 

 ――――……好きな人が出来てそいつとするなら、オレは退くから。

 先輩の為に、というか、引かれないように、何度か言ったセリフ。
 ……これ言っとけば、オレが先輩を好きだからするんだ、て事にはならないから、警戒もされないだろうと思ったし。

 ――――……正直、男と一生居れるとか……今は思えないし。
 ……親父や家族がどう思うかとか、家や会社継ぐかも、なのに。
 ゲイとか。すぐに、確定で考えられないっていうのもある。


 ――――……でもオレ、今日。
 自然と言ったんだよな。


「一生恋人要らないなら、一生付き合いますよ」


 一生とか。
 ――――……何。超自然にさらっと。口に出したんだか。

 実は結構、引っかかっている。


 もういいかなと思う頃に風呂から上がって、寝る支度を整えた。
 冷たい水を飲んで、先輩が寝ている、寝室へと近づくにつれて。

 ――――……すこし。浮足立つような感覚。


 そっとドアを開けると、オレンジ色の光にしてあって、先輩の髪の毛だけ、布団から出ていて。壁際を向いて寝ている。

 最大限、壁にくっついてるみたいな寝方をしていて、思わずふ、と静かに笑ってしまった。

 ベッドの端に、腰かけると、ぎし、と小さく軋む。


 ――――……昨夜は、この人とホテルで。
 抱いたんだよな。


 オレがする、って言ったけど。何度も、キスは、したけど。


 ――――……嫌がるのを襲う訳にもいかないし。


 オレに抱かれたいって、言わせるには。
 ――――……どうしたらいいかな。


 背を向けて、寝ている姿を振り返る。


 ――――……ここに居てくれるだけでも。
 どこにも行かないと思えて、ほっとするから、まあ……これだけでも、いいんだけど。







(2022/4/22)
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