【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「不愉快」*大翔

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 何だかすごく気にしてオレを振り返ってる先輩の事が、何故なのか、少しだけ、可愛く見えるような気がするのだけれど。
 とにかく、本当に言いたい事は隠した。

「オレ、ゆっくり入りたいから、ほんとに寝てていいですよ」

 余計な事は言わないように、それだけ言って、オレはバスルームに来た。
 シャワーを浴び始めて少しして、先輩が洗面台に歯を磨きに来た音と。最後に「おやすみー」と言って、居なくなる気配。

 いつもはほとんど湯船には浸からない。シャワーだけで済ませてしまう。

 ――――……一緒に布団に入るとか言ったら、絶対ものすごく警戒しそうだから、時間をあげたくて言っただけなんだけど。
 先輩がベッドに入って落ち着くまで、ここでぼーっとしてるのも何なので、とりあえず風呂に湯を張った。

 珍しくお湯につかる。これはこれで、気持ちは良いかも。
 肩まで沈むと、自然と、はあと息が漏れた。

 ため息は、つかない。
 そう決めたけど。つきたい気分には、何度かなってる。


 ――――……あの人の中の、和希の存在。

 相当デカいままなのは。
 別れたきり、他の奴には気持ちが向いてない、せいだよな。

 別れた時の感覚と感情を、まだ持ってる。他の奴で何も上書きする事なく。

 自分で触れないとか。それが、和希を思い出すからって。
 それでたまったら、体だけ重ねて、どんな奴かも知らないまま。

 ……何だ、ソレ。どんな思考ならそうなんの。

 オレも、まあいっかで付き合った奴と寝たり。一晩とかもあるし。特別に愛してもない女と、そういうのだけ、て気持ちは分かる。別に相手もいいなら、それでいい気もする。楽だしまあ、そこそこ楽しい。


 ――――……でもなんか、雪谷先輩は、違う。

 あれは楽しくやってるわけじゃない。

 すればするほど、病んでそう。
 
 本当に。マジで、意味が分からない。
 ……病みすぎ。

 何年も経っても、そんなに好き、固執し続けるとか、どんな男だよ。


 ――――……ああ。ちょっと似てるって言ってたっけ。
 じゃあオレって、少しは先輩の好みって事?

 ふーん…………。


 何となく、息を止めて、ぶくぶくと沈んでみる。


 でもどんなに好きだったって、こんなに引きずるほどに、傷ついたって事だよな。つか、何しやがった、あの人に。

 ――――……引っ越す時にって言ってたし。転校して離れた事によって自然消滅でも狙ってやれば、こんなにアトに引きずらずに、済んだかもしれないのに。しばらくは、モヤモヤはしただろうけど、ここまでにはならなかったはず……。

 あー、ムカつく。
 何なんだ、マジで。

 ていうか、オレは、なんでこんな事で、こんなに腹立ってんだ。

 ざば、と顔をあげて。
 髪をかき上げながら、ふー、と息をつく。



 いい加減、吹っ切って、次にいきゃいいのに。
 モテるんだろうし。

 先輩の事好きになる奴は、きっと多いだろうし。
 その中には、良い奴だってきっと……。


 ……何だかよく分からないけれど、それもまた不愉快なような気がする……とか。これもまた意味が分からない。





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