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至近距離で
「台無し」*大翔
しおりを挟む「――――……」
何か。――――……少し、変。さっきから。
少し前までは、オレの嫌な所に置いてきた。
考え方が似てるというか、オレならここに置くという候補のどれかに置いてくる感じ。
賭けてから――――……何だか、そこからずらして置いてくる気がする。
何でそっち? 意味を考えても、よく分からない。
またそっち? ――――……。
しばらく考えて、わざと負けようとしてんのかな。なんて思い当たった。
オレが聞きたがってるから、話してしまおうと思ってんのか。
――――……まあ。……そーいう事だろうな。
でもムカつく。
きっと話したら――――……。
これで気が済んだろ、そういう事だから分かってね。はい、終わり。
……そうしようとしてるとしか、思えない。
なんか、ムカつく――――……。
そのムカつきのまま、置いた瞬間。
あれ、という顔で、ちら、とオレの顔を見た。……無視。
一番弱いとこに。置いてみた。
一手で気づくのは、さすがだけど。
「――――……」
オレがそこに置いたんだから、勝つつもりなら、まず置くのは一か所しかない。――――……そう思うとこなのに、先輩はそこを避けた。
オレがわざと置いた所にも戸惑って、つい避けてしまったんだろうけど。
……さっきまでのは、ちょっとミスったのかな位で、負けようとしてるとはまあバレない程度かもだけど。……今のは、言い訳しようもない。
「――――……」
オレも、普通なら絶対に置かない所に黒い石を置く。
どうすんのかなと思ったら、困った顔を無表情に戻して、中途半端な所に置いた。
さっきまで、すごく良い勝負だったのに、なんか台無し。
負けて全部言って、さあ終わり、みたいなのを感じるから、余計。
……ムカつくなー……。
そんなにオレが聞きたいならいいよ。
とか。諦めたみたいな。
言いたくて、聞いて欲しくてな訳じゃないだろうし。
言って、オレにもう、踏み込むなって事だよな……。
――――……ああ、なんか。
そんなんで、この勝負。こんな感じって。
あーなんか。
……すげえムカつく。
あと、3回ずつ。
くっそ――――……もうこれ。絶対負けてやる。
先を考えた末、どうやったって勝てなくなる所に、 石を置くと。
……先輩は黙って小さく息を吐いて。仕方なさそうに、白い石を返した。
「オレの負けですね」
オレが言うと、先輩は、ん、と頷いた。
わざと負けようとしたのに、更に負けようとしただろ。なんて言うツッコミは入れられないみたいだな。まー当然だけど。
「……明日、ホットサンド、作ってあげますね」
「ん……」
言いながら、オレが石を集めて、片づけ始めると、先輩は小さく頷いている。
「な、四ノ宮」
「――――……もっかい、やりますか?」
「……」
「何かまた賭けます?」
「――――……」
じっと先輩が見つめてくる。
「……今はやめとく」
「分かりました」
……まあいいけど。
片付けを続けようと手を伸ばしたら。
「なあ? 四ノ宮?」
「……なんですか?」
「賭けないで、もいっかい、やんない?」
「――――……」
そのセリフに手を止めて、オレは、先輩の顔を見つめた。
「ちょっと最後、考え事してて……。なんか勝ったけど全然すっきりしない。今度はちゃんとするから。やろうよ。――――……いい勝負で、面白かったし」
にっこり、笑う顔を見ていたら。
――――……あぁ、なんだかな。
……この人の何を気に入ってんのか、自分でもよく分かんねえんだけど。
やっぱ、なんか、気に入ってる。気がする。
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