上 下
131 / 553
至近距離で

「台無し」*大翔

しおりを挟む



「――――……」

 何か。――――……少し、変。さっきから。

 少し前までは、オレの嫌な所に置いてきた。
 考え方が似てるというか、オレならここに置くという候補のどれかに置いてくる感じ。
 賭けてから――――……何だか、そこからずらして置いてくる気がする。

 何でそっち? 意味を考えても、よく分からない。
 またそっち? ――――……。

 しばらく考えて、わざと負けようとしてんのかな。なんて思い当たった。

 オレが聞きたがってるから、話してしまおうと思ってんのか。
 ――――……まあ。……そーいう事だろうな。

 でもムカつく。
 きっと話したら――――……。

 これで気が済んだろ、そういう事だから分かってね。はい、終わり。
 ……そうしようとしてるとしか、思えない。

 なんか、ムカつく――――……。

 そのムカつきのまま、置いた瞬間。
 あれ、という顔で、ちら、とオレの顔を見た。……無視。

 一番弱いとこに。置いてみた。
 一手で気づくのは、さすがだけど。

「――――……」

 オレがそこに置いたんだから、勝つつもりなら、まず置くのは一か所しかない。――――……そう思うとこなのに、先輩はそこを避けた。

 オレがわざと置いた所にも戸惑って、つい避けてしまったんだろうけど。
 ……さっきまでのは、ちょっとミスったのかな位で、負けようとしてるとはまあバレない程度かもだけど。……今のは、言い訳しようもない。


「――――……」


 オレも、普通なら絶対に置かない所に黒い石を置く。
 どうすんのかなと思ったら、困った顔を無表情に戻して、中途半端な所に置いた。

 さっきまで、すごく良い勝負だったのに、なんか台無し。
 負けて全部言って、さあ終わり、みたいなのを感じるから、余計。

 ……ムカつくなー……。


 そんなにオレが聞きたいならいいよ。
 とか。諦めたみたいな。
 言いたくて、聞いて欲しくてな訳じゃないだろうし。


 言って、オレにもう、踏み込むなって事だよな……。


 ――――……ああ、なんか。

 そんなんで、この勝負。こんな感じって。

 あーなんか。
 ……すげえムカつく。


 あと、3回ずつ。
 くっそ――――……もうこれ。絶対負けてやる。

 先を考えた末、どうやったって勝てなくなる所に、 石を置くと。
 ……先輩は黙って小さく息を吐いて。仕方なさそうに、白い石を返した。


「オレの負けですね」

 オレが言うと、先輩は、ん、と頷いた。

 わざと負けようとしたのに、更に負けようとしただろ。なんて言うツッコミは入れられないみたいだな。まー当然だけど。

「……明日、ホットサンド、作ってあげますね」
「ん……」

 言いながら、オレが石を集めて、片づけ始めると、先輩は小さく頷いている。


「な、四ノ宮」
「――――……もっかい、やりますか?」
「……」

「何かまた賭けます?」
「――――……」

 じっと先輩が見つめてくる。


「……今はやめとく」
「分かりました」

 ……まあいいけど。
 片付けを続けようと手を伸ばしたら。

「なあ? 四ノ宮?」
「……なんですか?」

「賭けないで、もいっかい、やんない?」
「――――……」

 そのセリフに手を止めて、オレは、先輩の顔を見つめた。

「ちょっと最後、考え事してて……。なんか勝ったけど全然すっきりしない。今度はちゃんとするから。やろうよ。――――……いい勝負で、面白かったし」


 にっこり、笑う顔を見ていたら。


 ――――……あぁ、なんだかな。
 ……この人の何を気に入ってんのか、自分でもよく分かんねえんだけど。




 やっぱ、なんか、気に入ってる。気がする。





しおりを挟む
感想 327

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

処理中です...