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至近距離で

「覚悟」*大翔

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 先輩の言いたいことは、分かる。

 ――――……ずっと恋人を作らない、という所をのぞけば、変なことは、言ってない。昨日の迂闊なとこも、反省したのなら、次からもっと、気を付けるだろうと思う。

 オレに会うまでの1年以上、特に危ない目にも遭わずにやってきたなら、まあそこそこ気を付けて来てはいたんだろうとも思う。


 ――――……だから大丈夫だと、いうのも。
 オレに、相手をしてくれなくていいよ、というのも。
 オレに気を遣わせないように、笑顔で、大丈夫と言い切るのも。

 それは、分かる。

 でも。――――……そんなの受け入れられる位なら、元々、手なんか、出してない。



「……先輩」
「――――……うん?」


「一生恋人要らないなら、一生付き合いますよ」


 でっかい瞳が、大きくなって。
 は? と首を傾げてる。



「まあ一生、つーか。 先輩がそう言う事をしに外に行く年齢、まで?」
「――――……」

「じーさんになってまでしないでしょ」

 ふ、と笑いながら言うと。

 ――――……先輩は、めちゃくちゃ眉を寄せて。


「……ちょっ、と、待って……」

 カフェオレ、持ってられなくなったのか、ソファの前にあるテーブルに置いて。

 それから、完全にソファの上に乗っかって、また膝を抱えて。
 膝の上に顔をのっけて、固まってしまった。


「――――……」


 しばらく、先輩から何か言ってくるのを、コーヒーを飲みながら待ってると。


「……宇宙人にもほどがあるんだけど……」

 俯いたままで、先輩がそんな風に言う。
 思わずクッと笑ってしまうと。
 じろ、と睨まれた。

「笑いごとじゃねえし。全然、意味わかんねえし。お前、今、何言ったか、分かってんの……?」
「分かってますけど」

「……オレがそういう事しなくなるまでって。……すげーずっとそういうのが強かったらどーすんの」
「いいんじゃないですか。付き合いますけど」

「――――……70才とか80才とか」
「ある意味すごいですね」

 クックッと、笑ってしまうと。


「……っっだから、笑い事じゃ――――……」

 そこまで言って、また俯く。


「あーもう……」

 なんか、膝の間でブツブツ言ってる。


「――――……全然意味がわかんない……」


 まあ。そうだろうね。
 ――――……オレが、今までどんだけ嫌だったかも。

 でも抱けないと思ってたから、譲歩してたのも。


 発情してるあんたに迫られたって、そこに行かないように、どんだけ耐えたかも。――――……どんだけそれに抵抗して、でもそれでも。


 どんだけ覚悟、決めて、あんたを抱いたかも。
 ――――……知らないもんな。


 別にいい。それは、これから、分からせるし。


「別にすぐ、考えなくてもいいし、分かんなくてもいいですよ」
「――――……」


「とにかく、オレは、あんたの側に居るから」
「――――……だから。オレ、1人で平気だってば……側に居てなんて、頼んでないじゃん……」

「頼まれなくても、居ますよ」
「――――……迷惑、て言ったら?」

「迷惑って言われても」


 言い切ると、先輩は、今度は、眉毛を完全にハの字にして、はー、とまた膝に埋まる。


「つーか、迷惑かけてンの、今んとこ、あんただけど。そこ分かっといてね」
「う……」

 少しだけ顔を上げて、嫌そうにオレを見て。
 また埋まってる。


 ぷ、と笑ってしまうと。


「笑うな……宇宙人」


 突っ伏したままの先輩から、そんな言葉が飛んでくる。

 ――――……なんかこんなやり取りが面白いとか。
 オレ、やっぱ、かなりおかしいな。まあ。宇宙人じゃねえけど。





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