【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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至近距離で

「混乱」*奏斗

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 泊まり用の荷物とスマホと鍵を手に、四ノ宮の部屋のチャイムを鳴らす。
 すぐに鍵が開いて、四ノ宮が出てくる。

 四ノ宮は靴を履いて、小さい鞄を持ってオレと入れ替わりに外に行くみたい。

「どこ行くの?」
「下のスーパー行ってくる。速攻戻ってくるから」
「オレも行く?」
「良いよ。バスタオルとか出しといたから、シャワー、浴びちゃって」
「ん??」
「もう、そっから今日は、ベッドの上で良いでしょ?」

 あ、ベッド入る前にシャワー浴びてって事か。

「……それならオレ、自分の部屋で浴びてくるけど」
「遠慮しなくていいから、浴びといてください。すぐ帰って、昼ご飯作るから。食べたいものあります?」
「――――……何でも」
「分かりました。食べやすそうな物、作るから。行ってくる」

 そう言うと、ドアに鍵をかけて、四ノ宮が行ってしまった。

 しーん。
 家の中、静か。

 ――――……四ノ宮の家に1人取り残されて。
 えーと。と、首を傾げながら、荷物を置いて、バスルームに行くと。
 バスタオルやドライヤーが用意されてて。

 ……なんてマメな、と苦笑してしまう。

 もうなんか、拒否するのも、抵抗するのも、疲れてきた。
 今日明日はお世話するとか言ってたから、なんかよく分かんないけど、オレの世話するって、決めちゃったんだろう、あいつ。

 ……とにかく、後で、色々話そう。


 もうしょうがなく、家主の居ない部屋で、バスルームに入って。
 シャワーを浴びて、部屋着に着替える。ドライヤーで髪を乾かしてる所に、四ノ宮が帰ってきた音が聞こえて、ドライヤーを止めた。

 脱衣所のドアを開けて、玄関を覗き込む。

「おかえり。早いね」
「ただいま」

 ふ、と四ノ宮が笑んでそう言う。
 靴を脱いで上がってきて、オレの前で止まる。
 
「お昼、パンで良い?」
「うん。ありがと……」

「髪、ちゃんと乾かしてきてくださいね」
「うん」

 オレが頷くと、微笑んでリビングに消えていく。

「――――……」

 何となく、んー……と考えながら。
 オレは、またドライヤーのスイッチを入れた。

 髪を乾かしながら。今の会話をちょっと思い起こす。


 ――――……なんか。
 ……四ノ宮って。……あんな感じだっけ。
 なんかやっぱり違うよな?

 今までもっと、なんならちょっと、喧嘩腰な。
 ……オレも良く言い返してたような。
 ……四ノ宮も呆れたり、むっとしてたり。

 ポンポン言い合うのが、嫌じゃなかったけど。
 ――――……何か。なんだろう。

 何が違うんだ。眉間にしわが寄らなくなったのが大きいのかな。
 あの変化の意味が、全然分からねー……。

 髪を乾かして、リビングに行くと、四ノ宮がキッチンで忙しそうで。

「手伝う?」
 そう聞いたら、マジマジと見られて、首を振られた。

「休ませるためにここに来てもらってるのに、んな訳ないし」

 言いながら水を注いだコップを渡される。

「ソファで休んでて。すぐ作るから」
「……うん」

 もうなんか、ほんとに逆らう気力は奪われ。
 コップをなんとなく握り締めながら、ソファで休んでると。


「飲み終わった?」
「あ。うん」
「コップ、もらうね」

 コップを受け取って、四ノ宮が歩いてく後ろ姿。
 
 ――――……何だか。至れり尽くせりで。
 困るんですけど。 

 ひたすら無言で困っていると。
 少しして、出来たよ、と呼ばれる。

 コンソメスープと、ツナと卵のホットサンドと、カフェオレ。

「……美味しすぎるんだけど」

 そう言ったら。

「つか、何その褒め方」

 四ノ宮は、クッと笑う。

「美味しい、だけで良くないですか?」

 続けてそう言われるけど。確かに、そうなのだけど。

 だって。
 なんかこんな至れり尽くせりで。
 ご飯まで、美味しすぎるとか。
 なんかもう。なんなのって感じで。
 
 超複雑な気分で、とっても美味しい昼ご飯を食べ終えて。
 食べ終えて、暫くすると、ベッドに入ったら?と言われた。


 正直、今は、全然眠くない。
 ちょっとダルイのは、薬のせいか、初めて飲んだアルコールがいけないのか、深夜まで、あんな事してたからかもしれないし。まあ仕方ないと言える程度。でも。……1人になりたくて、その言葉を受ける事にした。

 ベッドについて来られて。布団を掛けられて。

「――――……」

 まっすぐ見つめられて。目を逸らせずにいたら。


「――――……」

 不意に。
 暗くなって。


「――――……」


 キス。
 されてしまった。


「――――……ゆっくり休んで」

 前髪を、掻き上げるように撫でられて。
 驚きすぎて、固まってるオレに、ふ、と笑んで、部屋を出て行った。



「――――……っ」


 唇に。
 手の甲で、触れる。

 
 何で今キスされた、オレ。

 ――――……ああ。もう。
 なんかもう。意味分かんない。頭ん中。混乱しかない。




 
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