112 / 551
至近距離で
「意味わかんないけど」*奏斗
しおりを挟む少しの間、色々考えたけど。
ああ、なんか。
……もう、断れそうにないし。
「……分かった…………けど、邪魔、じゃないの?」
「あんた、ちゃんと聞いてました? オレは、心配なんだって」
そう言われて、もう、しょうがなく。もう一度、分かった、と頷いた。
「でも――――……ほんとに、1人にしてもらって良い?」
そう言ったら、四ノ宮は、まっすぐにオレを見つめて、頷いた。
「気が済むまで好きな部屋で1人で居ていいよ。ただ、たまに様子だけ見たい」
「分かった……着替えたら、行く」
頷くと、四ノ宮がホッとしたように微笑む。
「――――……待ってますね」
言って、四ノ宮が部屋に消えてくのを見送って。
自分の部屋の鍵を開けて中に入った。
「――――…………」
言ってる事は、分かるし。
心配してくれてるのも分かるし。
これ以上変に心配かけたくないから、頷いたけど。
……なんかもう、オレ、どうしたらいいか、よく分かんない。
だって――――…… あんな事、しちゃったのに。
ほんとに。
――――……どうしたら、いいんだろ。これから。
四ノ宮とどうやって、付き合ってくべきなんだろう。
靴を履いたまま、玄関に座って、膝に頭をこすりつける。
――――……なんか。
もう。
四ノ宮に、ゲイがバレてから。
……なんかずっと、狼狽えてばっか……。
あそこまでは、何となくうまく、やってた気がするのに。
――――……全部、一度、落ち着かないと。
ふー、と息を吐いて――――……また、膝に突っ伏した。
◇ ◇ ◇ ◇
でも、いつまでも行かないでいる訳にはいかないので、部屋着に着替えてから、スマホと鍵だけを持って、四ノ宮の部屋を訪ねた。
「いらっしゃい」
「うん」
「入って」
「うん」
四ノ宮がリビングに向かうので、オレもついて歩いて、中に入る。
「今、家で何か食べました?」
「――――……ううん」
そういえば、なんか食べようって気すら、全然してなかった。
「とりあえず、うどんだけ食べて」
「――――……ありがと」
テーブルに、卵とじうどんが置かれた。
言われるまま、向かい合わせて、座って。
「――――……いただきます」
何でオレは。
四ノ宮に抱かれて。四ノ宮とホテル泊まって。キスされて。
一緒に帰ってきて。四ノ宮の家で。
うどんたべてんの??
はー、意味わかんない。
「――――……おいしい」
意味わかんないけど、口に入れたら、温かいし、美味しいし。
自然と、そう漏れた。
「……それは良かったです」
くす、と笑って、四ノ宮がオレを見る。
――――……なんか。
ほんと、よく分かんない。
「……四ノ宮?」
「はい?」
「……昨日――――……ほんと迷惑かけてごめん」
「――――……良いですから、食べて」
オレの言葉に、ふ、と笑むと。
四ノ宮は、ゆっくりそう言った。
64
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる