上 下
104 / 551
近くて遠い

「宇宙人」*奏斗

しおりを挟む


「……っ」

 唇、開けないように、噛みしめていると。オレの首に絡んでた手が動いて――――……乳首、引っ掻かれて。

「や…… ん、ぅ…………」

 びっくりして開いた口に、舌が挿しこまれた。

「――――……っン……っ」

 オレ。キス。――――……やなんだけど。
 和希以外と、したいって、思えなくて――――……。

 今まで、望まれたら仕方なくしてた時もあったけど、全然気持ちよくなくて。ずっとは、しないようにしてて。

「……ん、ふ……っ」

 何でこんな――――……キス、うまいの。
 ……勘弁してよ。マジで。

「……は、……っ……」
「……気持ち悪いとか、あったら、抱いてないし」

 長いキスで乱れた息を抑えて。オレは四ノ宮を、見つめるしかない。

「もう、なんか――――……」
「なんですか?」

「……ブラックとかじゃなくて、お前、宇宙人みたい……」
「は?」

「もう、何考えてるか、全然わかんない……」
「――――……分かるでしょ」

「分かんないよ。大体、オレ、キス、嫌いなんだからな!」
「――――……カズキとだけしたいってこと?」

「……っ別に、今はそれを望んでる訳じゃない、けど」
「キスが嫌いなんて、嘘ですよね、先輩」

 顎を掴まれる。

「抱いてる時、めちゃくちゃキスしてきたし。キス、好きですよね? ……とりあえず、オレとキスするの、平気になって」
「――――……っ……」

 また唇、触れて。
 深く重なる前に、顔を背けたのに、顎掴まれて戻されて。

「――――……っ……」

 ものすごく困った事に、宇宙人のキスは、頭が真っ白になるみたいで。
 
 なんかもう。
 頭、おかしくなりそう。
 なんなの、もう本当に、何なんだ……。


「……オレ……っ」

 四ノ宮を引き剥がした。


「お前と、そんな事し続ける気、ない、んだけど……っ」
「じゃあ、恋人つくるか、ずっとそういう事しないかです」
「――――……っっっ」

「見も知らない奴とするなら、オレがします」
「…………ッ」


「――――……キス、気持ちいいでしょ?」
「――――……っ」

 頬を挟まれて引かれて、キスされる。


「――――……ッ」

 ゆっくり舌が解けて、離れて行く。


「……よく、ない、しっ」
「……ふうん? 気持ち良さそうですけどね」

 四ノ宮は、そう言って少し笑って、オレを見て。


「とりあえず、帰りましょうか。先輩はシャワー浴びた方がいいですよ」

 立ち上がって、多分バスルームの方から、自分の洋服を持ってきた四ノ宮は、着替え始める。

「……ッ」

 さっきから目の端に映ってたバスローブに腕を通して、オレも立ちあがった。四ノ宮の横を通りかかった時。

「あ、先輩」
「――――……っなに?」

 腕を掴まれて、ぐいと引き寄せられた。

「オレが抱くって、本気ですからね」
「…………っっ」

 腕で四ノ宮を押しのけて、バスルームと思われる方に向かう。
 オレの服が畳んでおいてあって、バスタオルも用意されてる。

 全然昨日ここに居た記憶はないし、四ノ宮がやってくれたんだろうけど。

「――――……」

 シャワーを出して、行為の跡を流す。ため息しか出ない。

 四ノ宮とヤっちゃった……。
 しかもキスされまくるし。


 頭が働かない。
 何でそんな事言うんだろう。

 恋人が出来るまでって。
 ――――……オレ、作る気ないし。


 どういう事だよもう――――……。



 つか。
 ――――……キス。嫌じゃないのって。
 ……知ってる奴だからなのかな。


 和希のあとで誰としても、「普通」か「気持ち悪い」しかなかったんだけど。でもキスが嫌じゃないからって、そういう事するのとは、全然話が違う。


「――――……」


 ダメだ、これ――――……。
 どうしたらいいのかとか、何にも出てこない……。
 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

処理中です...