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近くて遠い
「冷や汗もの」*奏斗
しおりを挟む衝撃の事実に、ダラダラ冷や汗流れてそうな気分で、固まっていると。
「オレ、止めましたからね。何回も」
「何回も止めたのに、続けたの、オレ?」
どんだけだよーー!! もうマジでオレの事消して。ちりひとつ残さないで。
うわーん……。
「ああ、それはすぐやめさせましたけど……キスしてきたり……体が熱いとか、抱きつかれたり、泣かれたり」
「――――……」
……どっちもどっちだ。
フェラし続けるのもあれだけど、そっちだって、どうなってんだ。
覚えてない。
つか、覚えてなくて良かった。
つか、マジで、絶対思い出したくない。一生思い出さないで生きていこう……。
変な決意をしていると、四ノ宮がため息をついた。
「とにかく、それでもうこっちも限界で、ああなったんですよ」
「――――……」
なんでそんなに淡々と、冷静に話すんだろう。
かなりすごい内容だと思うのに。
「……四ノ宮、あのさ……オレ一番、分かんないことがあるんだけど……」
「何ですか?」
「……あの――――……四ノ宮って……ゲイじゃ、ないよね?」
「100%違いますね」
「……じゃあなんで……」
「さあ。――――……もう、反応したから。出来ると思って。覚悟も決まったし」
こいつって、ほんとに良く分からない。
出来ると思ってって、マジで、何……。
「ああ、オレ、先輩に聞きたかったんですけど」
「?」
「カズキってさ」
「……うん?」
「オレ、似てますか?」
「――――……え。何で……?」
何の質問、それ。
「何度か、カズキって呼ばれたから。いくらちょっと変になってるって言っても……もしかして、そうなのかなと」
「……あー…それも、ごめん」
「――――……」
「んー…… なんか、近くで下から見た時の角度で少しだけ、似てるかもって前に思った事ある――――……おかしくなってて、出ちゃったのかも…… ごめんね」
「――――……まあ。おかしくなってたからそれは責めませんけど……」
「……ごめん」
「……もうこの先、二度と間違えないでくださいね?」
「――――……?」
ん? なんか、ものすごーい圧を感じるんだけど。
……まあでも、人を間違えて呼ぶとか、無いか。うん。
「……うん。間違えない。ごめんね」
そう答えたら。
四ノ宮は、じっとオレを見つめた。
「――――……先輩」
「うん……?」
「オレに迷惑相当かけたなって思いますか」
「……思う。ごめん」
「……じゃあ、聞かせてください」
「……? うん?」
「何で、自分で触らないの」
「――――……」
「普段自分でしないんだろ? 何で?」
「――――……」
普段しない事、何で知ってんの……。
「オレ、そんな事、言った……?」
「……バスルームに居る先輩に、普段してるようにすればいいって言ったら、しないって言った」
「――――……」
オレ。
……何を、どこまで、こいつに話したんだろ。
やばい、ほんとに、覚えてない。
「もう1つ話してほしいのが」
「――――……」
「カズキと何があったら、あんた、そんななの」
「――――……」
「自分でしないのも、関係あんだろ? 話せるなら、聞かせてほしいんですけど」
「――――……」
四ノ宮に、悪かったとは、すごく思ってる。
でもこの話――――……
他人にした事は、ない、んだけど。
話したく、ないんだけど。
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