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近くて遠い

「まだ序盤…」*奏斗

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「……けほ……」

 あ。咳しちゃった。やば。四ノ宮起こしたくないのに。

 ……でも、喉が枯れてる。
 ――――……声出しすぎてたから……。

 水、欲しい……。
 けど、だるいし。四ノ宮起こしたくないし。
 いやむしろ、永遠に会いたくないような……。

 出来るなら、オレ、いますぐ消えたいし……。
 思った時。

 何やら腕が回ってきて、うまく抱き上げられてしまって。
 びっくりしてる間に、オレは起き上がって座らされてて。

「先輩、ほら」
 口に、蓋を外したペットボトルが当てられた。

「飲んで」
「……ん」

 ごく、と飲んで、重い手を動かして、ペットボトルを受け取った。
 ものすごく不本意なんだけど、四ノ宮が立てた膝に、背中寄っかかるような感じにされて。なんか。囲われてるみたいだけど。
 もう今更な気がして、暴れる気も起きない……。……体も、だるいし。

「……目、ちゃんとさめました?」
「ん……起きてたの?」

「眠れなかったンで。――――……体調は?」
「……だるい」

「だるい以外は? 痛いとか、苦しいとか、気持ち悪いとか」
「――――……無い」

 あれ。
 なんか。

 意外と、普通にやり取りできてる……?

 今の今迄、心底、消えたかったけど。

「じゃあ薬の方はもう平気か……」
 ふう、と四ノ宮が息をつく。

「……四ノ宮、あの……」
「はい?」

「――――……説明、して……?」

 そう言うと。四ノ宮は、ん、と頷いて。
 足で支えてるオレを、見下ろした。

「……寝転がって聞きますか?」
「ううん。いい」

 今まで感じたことが無い位、だるいけど。
 ちゃんとまっすぐ顔見て話したい。

「……クラブから電話くれたのは覚えてます?」
「うん」
「話した内容は?」

 話した事……――――……あ、謝った。四ノ宮に。

「うん。覚えてると思う」
「どうやって切ったかは?」
「――――……スマホが、落ちて……あ、あの2人は?」
「スマホ落とした後は?」

「――――……あの2人がスマホ拾って……そこらへんから、覚えてない」

 四ノ宮は、そうだろうなという顔で頷いた。

「先輩はそこらへんから、飲まされたアルコールと媚薬のせいで、寝てるんだか、ぼーっとしてるんだか、とにかくおかしくなってたんだと思います」
「……そうなんだ……え、あれ、ジンジャーエールじゃなかったの?」
「……はい」
「炭酸きついなーて思ったけど……」

 そう言ったら、四ノ宮から、ちっと舌打ち。
 怒ってる……とビクビク四ノ宮を見ると。

「酒かどうかもわかんねーって何なの。つか、自分で買ったもの飲んでたんじゃねえの?」
「……えーと…… あ、あの……目の前で店員さんから、ジンジャーエールを頼んで買ってくれたんだよ」
「……じゃあなんでそれが、入れ替わるんですか」

 何でだっけ……。

「あ。分かった。オレ、トイレ行ったんだ」
「――――……っバカなの、先輩? 気を付けてるって言ったじゃんか。全然気を付けてねーし」

 ものすごくイライラした口調で言われる。
 …………まあ……そのせいで、多大なご迷惑をかけたと思われるので、もう、何も言い返す事もない。

「何でそんな、見もしらねえ奴から飲み物貰って、平気で飲んでんの?」

「……目の前で買われたしさ。確かに離れたから、普段なら飲まなかったかも、しれないんだけど……ていうか、トイレでちょっと迫られてたとこを、その2人の内の1人に助けてもらったから…… なんか、疑わなかったというか……飲んだらすぐ帰るつもりだったし……」

「……はい、ストップ」

 なんか、もっと不愉快そうな声がして、そんな台詞。

「……すとっぷ?」

 四ノ宮を見上げると。
 なんかもう、すごーく眉が寄ってて。

「素通りできねーこと言った。何だって? トイレで?」
「――――……トイレで……あの……」

 言わなきゃよかった……。
 ――――……信じちゃった理由としてひっぱってきたんだけど、むしろこっちの方が、不機嫌になってる気が……。

 嘘ついたりできる雰囲気と視線ではなく、仕方なく、本当の事を手早く言うとにする。

「……あの……前、関係持った人が居て、誘われて……断ったんだけど、腕掴まれて、連絡先聞かれてて……」
「――――……あんた、変な人とは、やらねーとか言ってなかったっけ」

 うう。その通りなんですが……。

「……前回の時は別に……何もなかったんだよ。でもなんか…… 良かったからもう一度会いたかったとか言われて……」

「それで断ってんのに、腕掴まれて連絡先聞いてくるとか、十分、変な奴ですけどね」

「そう、なんだけど……」


 ……うう。すごい不機嫌。四ノ宮。


 これまだ話の序盤で、オレが聞きたいのは、もっと後ろの方の事なんだけど……。

 やっぱり消えたくなってきた……。
 ううううーーー。




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