【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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近くて遠い

「声が」*奏斗

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 え。何。
 腕、振りほどきたいんだけど、なんか刺激もしたくなくて、ただ固まる。

「やっと会えたんだしさ。連絡先、教えてよ」
「――――……オレ、こういうの、その場限りにしてる、ので……」

 なんか、ちょっと、怖いし。
 これどうしようかな……と思った時だった。

 トイレのドアが開いて、さっきの2人の内、最初に声かけてきた1人がトイレに入ってきた。
 瞬間、男の手は離れた。

「あ、居た。何してんの? 遅いじゃん」
「――――……」

「一緒に話そうよって言ったのにさ、全然来ないから大丈夫かなって思って」

 迎えに来たそいつは、トイレに居た男にちらっと視線を流しながら、「戻ろうよ」と、オレの腕を引いた。
 男が少し気になったけど――――……少し頭を下げて離れた。とりあえず、ここから出れるならと思って、ついて歩く。

 トイレを出て少しして振り返るけど、出てくる気配はなかった。
 追いかけてきたらやだなと思ったから、ほっとする。そこで、掴まれていた手を離した。

「もう平気。ありがと」
「知り合いの人?」
「あ、……まあ、すこし……」

「つきまとわれてんの?」
「……いや、大丈夫だと思う」
 
 でも――――……ちょっと怖かったな。
 ……四ノ宮には内緒だな。
 ……2度とここに来させてもらえなくなるような気がする……。

「……でも、迎え来てくれて助かったかも。ありがと」
「うん、いーよ」

 一緒にさっきの所に戻ると、もう1人も待っていた。
 飲み物を差し出される。

「オレこれ飲んだら帰るけど、いい……?」
「もちろん、いいよ」

 何となく、カチンとグラスを合わせて、オレはジンジャーエールを口にした。なんか結構炭酸きつい。と思って、一口飲んで、テーブルに置く。

「飲まないの?」
「……なんかこれ炭酸きつくない?」
「そう? こんなもんじゃない? せっかくなんだから、飲んでよ」

 そう言われて、仕方なく、もう少し飲むけど。
 ――――……そういえばジンジャーエールって普段あんまり飲まないから、よく分かんないけど……こんなもんなのかなあ…。

「なあ、名前なんて言うの?」
「……ユキ」

「ユキかあ。可愛い、ピッタリだね」
「そう?」

「大学生?」
「うん」
「どこ?」
「……内緒」

 あんまり聞き出されるのは嫌なので、段々面倒になってくるのだけれど。
 さっき助けてもらった手前、なんか、そこまで邪険にも出来ず。
 もうこれ、早く飲んじゃって、四ノ宮に電話して――――……。

 適当に会話に付き合いながら。

 ――――……さっきの、人、どうしたかなあ、帰ったか……他に相手、見つけてくれてたらいいけど。なんか、そっちも気になってしまうし。四ノ宮も気になるし。

 ……とりあえず、早くここを、出よう。

「――――……」

 スマホをポケットから出して、四ノ宮の画面を開く。
 と同時に、ふわ、と欠伸が漏れた。

 ――――……なんか急に、眠くなってきたような。
 首を傾げつつ、また零れた欠伸を噛みしめる。

「ユキくん、眠いの?」
「え? あ――――……なんか急に。でも大丈夫……」

 言いながら、また欠伸。
 何だろう、これ。立ってて、こんな所でこんな急に眠いって。

 スマホを見ると、もう22時をとっくに過ぎてた。
 少し遅いからかなぁ……。

 ――――……四ノ宮が二次会の後、誰かと過ごすなら、
 早く電話しないと、ホテルとかついたら、出てくれないかもしんないよな……。

「ちょっと電話してくる……」
「どーぞ。てか、ここ、電話聞こえる?」

「……うん、多分」

 言いながら、四ノ宮を呼び出す。
 出なくてもしょうがないけど――――…… 出てくんないかなあ……。

 3回目のコール音で。
 繋がった。


 こっちも音楽掛かってるけど、向こうからも、違う音楽がかかってる。

 まだ二次会の店っぽいな……。



「四ノ宮……?」


 何だか怒られてもいいから、すごく、声が聞きたいなと思って。
 そう、呼びかけてみた。








(2022/2/9)
◇ ◇ ◇ ◇

さあて……♡
明日に続きますっ(∩´∀`)∩
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