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近くて遠い

「後悔」*奏斗

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「なんか元気ない? 大丈夫?」

 初対面の男が、オレを見て、そんな風に聞いてくる。
 
 ……うう。
 こんな初対面の人にまで分かる位、オレって今、落ち込んでるんだ。
 と、思い知る。
 ――――……やっぱり、さっきの、言わなきゃよかった。
 ごめんって謝ったら、許してくれるかなあ……。

 たださ。
 ただ、やっぱり心配するにしてもさ。
 もうちょっと違う感じで心配してくれないかなあ。

 オレ、ほんとに、誰でもいいとか、そこまでじゃないのに……。

 うーん……。
 どう言えばあいつは納得してくれるんだろう。

「な、一緒に飲まない?」
「ぁ、でも……オレまだお酒飲めないから」

「そうなの? じゃあジュース奢るよ」
「でもまだこれ入ってるし。……ありがとう」

 頭に四ノ宮とのさっきの事しかないし、今日はもう無理だ、と思って。
 話しかけてくれるのを、やんわりと、断っているのだけど。
 なかなか通じない。

 ……この人は、ゲイなのかな。
 ――――……誘い方がどっちなのか、よく分かんないけど。

 そこに、もう1人現れた。

「何してんの?」

 オレに話しかけてた人と、友達らしい。

「あーなんか、すっごく可愛い子見つけて、一緒に飲まないかなーって誘ったとこ」

 そんな風に言う男に、もう1人が、オレを見て、にっこり笑う。

「おー、ほんとだ。モデルさんとか?」

 さっきの店でも聞かれたなぁ、これ……。
 ゲイとかじゃないのかな。オレの見た目を弄りに来ただけ?

 オレは、違う、との意味を込めて、首を振った。

「ごめん、オレちょっとトイレ行きたくて……」

 そう言いながらさりげなく、離れようとしたら。

「いいよ、行ってきなよ、終わったらちょっとでいいから話そうよ」
「――――……」

 とうしようかな。うーん……。
 ちょっと固まっていると。

 1人が、飲み物を持ってた店員に話しかけた。

「ノンアルはある?」
「ジンジャーエールなら」

「飲める?」
 そうオレに聞いてくる。

「――――……」

 別にここでジュース飲む位、そんなに頑なに断らなくてもいいか。と思って。頷くと。

「3つ下さい」

 そいつが支払いを済ませるとジンジャーエールが3つ、目の前のテーブルに置かれた。

「トイレ行ったら戻っておいでよ」
「……うん」

 さっき自分で言った手前、仕方なく行きたくもないトイレに向かう。

 ――――……ここ来て、誰ともそうならずに帰るって、初めてかも。

 さっきの2人と話してた時、少し先に、前にホテルに行った奴が居て、一瞬目があった。

 別に、そういう相手に、1回限りだと断ってる訳じゃないから、2度目を誘われる事も無くはないんだけど――――……。

 今日はもう話すのも断るのも、面倒臭いな……。

 ちょうどいいから、さっきのよくわかんない2人と少し話したら、店出よう。

 四ノ宮に、電話しなきゃ。



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