【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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近くて遠い

「相性、最悪」*奏斗

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 しょうがない、用も済んでんのに、いつまでもここに居るのも変だし。
 トイレ、出るか。

 頼むから四ノ宮もうどっか行っててくれ、と思いながら、鏡の前から退こうとしたら。


「お兄さんて」
「え?」

 話しかけられて、振り返る。


「モデルさんとか、やってますか?」
「……ううん。やってないよ」

「すっごいカッコイイですよね」

 何の意図も無さそうな感じで言われて、ぷ、と笑ってしまった。


「ありがとうって言えばいい?」
「はは。お礼とかは別に。さっきのって合コンですよね? いいですね、絶対モテますよね」

 トイレに掛かってる、掃除のチェック表みたいなのに丸を付けながら、そんな風に言う。
 なんか嫌味が無いと言うか。
 言い方によったら、何て返事して良いか分からないとこなんだけど……。
 やっぱりいい子そうだな。

「そんなモテないよ」
「絶対嘘ですよね。あ、出ますよね?」

 クスクス笑いながら、その子がドアを開けてくれる。

「ありがとね」
「いえいえ、どうぞー」

 横を通り過ぎようとしたその瞬間。
 その子にぶつからないようにと横ばかり気にしていたら。

「だっ……!」
「えっ??」

 段差で躓いて、咄嗟に支えてくれたその子に、突撃したみたいにぶつかる。


「――――……痛……っ」

 ……オレ、ほんと、たまにこういう事するよな……。


「いったー……つか、ごめん、痛いのそっちだよね」

 何でそうなるんだか、頭突きしたみたいな感じになってしまった。

「大丈夫……ってか、お兄さん、結構ドジですか?」
「うん、たまに……ほんとごめんね」

「いーですけど。意外」

 支えてくれて、起こしてくれながら、ぷぷ、と笑われる。
 その子の腕に手をかけて、体を起こす。

「ありがと……ごめんね」
「大丈夫ですか? 頭」

「うん、痛いけど」

 あは、と笑われる。

「ほんとごめんね、ありがと」
「いえいえ」

 笑いあって、そこで別れる。その子は、厨房の方に入っていった。

 うーん、四ノ宮があんな感じで、隣に明るく住んでいてくれたら良かったかな。と、またまたバレたら超怒られそうな事を思いながら、部屋に足を向ける。

 ――――……なんか、頭ん中に、いっつも四ノ宮が居るみたい。

 そういう色っぽい意味じゃなくて。
 何なんだろ。これ。マジ意味が分からない。

 うー……マジで痛い、突撃したおでこ……。
 おでこに触れて、擦りながら歩いてると。
 
 角を曲がった所に四ノ宮みたいなのが見える。廊下、やたら暗くてよく見えないんだけど、多分、さっきと同じらへんにいるから、そうだよな。

 女の子は居ないかな、見えないけど……思いながら近づくと。
 ふ、とオレの方を向いた。

「あれ。女の子は?」
「――――……」


「部屋、戻らないの?」


 あ、女の子トイレとか? ここで、女の子待ってるとこだったのかな?
 

「オレ先戻ってるね」


 言ったて歩き出そうとした瞬間、腕を掴まれて止められた。


 え。
 びっくりして振り返ると、超近くで。

 なんか睨まれてる?



「――――……???」

「……何で先行くんですか?」
「え?……あ。 だって、女の子、戻ってくるから、待ってるんじゃないの?」

「もうとっくに居ないし」

 はー、とため息をつかれるけど。
 ……そんなの知らないし。さっき一緒に居たじゃん。


「――――……で、何であんたは、トイレの前で店員と抱き合ってる訳?」

「――――……」


 一瞬頭が真っ白。

 それで、その意味が、分かった瞬間。

 ……ちーーーーん。
 と、頭の中で、効果音。四ノ宮と居ると、よく鳴る音な気がする。


 ……違うし。
 抱き合ってないし。

 転んで、意味不明に、頭突きしただけだし。
 

 つかさ。
 ――――……転んだとこも、その後すぐ、起き上がったとこも見てなくて、
 瞬間的に、支えてもらったところだけを見て、引き返してたってこと。だよな。


 こういうのを、最悪なタイミングって、言うんだよな……。


 思えば、四ノ宮と居ると、それが何回もやってくる感じが……。

 ――――……ホテルでばったり会ったり。
 四ノ宮と居る時に、和希の事で真斗から電話が来て、何も取り繕えなくなったり。……まああれはオレがいけないんだけど。

 で、次これか。

 話すようになって、まだ日も浅いのに、こんな感じって。
 オレ達って、きっと、相性というか、タイミングの相性は、最悪な気がする……。





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