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近くて遠い
「なんだかな」*奏斗
しおりを挟む一緒に帰りますか、って。
――――……なんか。すごく。嫌。
って思ってしまった、。
だって ……なんか、また心配して、オレを家に連れて帰ろうとしてるのかなあとか。
ていうか、四ノ宮、すげーモテてるんだから、女の子と消える事だってできるだろうに。そんな、オレばっかりに構わなくても。
何か、段々、真斗がオレを心配してるような感じに見えてきた。
まあ、さすがに弟にまで、一晩限りでとか言ってる訳じゃないから、真斗はそれについては心配してないけど。でもよく、変な奴と付き合うなよって心配されてるから……おんなじ感じなのかなあ、もう。
四ノ宮、オレの弟じゃないんだけどな……。
もうどうしたらいいのかなあ。
なんて、頭の隅で考えながら、色んな人と話して時間を過ごす。
小太郎の側に居ると、皆を巻き込んで話せて女の子と2人きりにならなくて済むので、後半はなるべくそうしていた。まあ、変にならないように少しは離れながらだけど。
2時間って言ってたから、もうすぐだよなーと思って。
「なあ、小太郎、今日オレ、帰っていい?」
こそ、と囁くと。
「え、帰るの? 2次会は? イイ子居なかった?」
「うん……ちょっと、今日はやめとこうかなって思って」
「そっか。……皆残念がると思うけど」
「ん。ごめんな?」
「ん、分かったよ。んー……聞かれたら、明日早いとでも言っとけばいい?」
「うん。ごめん。ありがと」
「ん」
ほっとして。
……四ノ宮はどうすんのかな、とやっぱり気になってる自分に、ちょっとため息。
とりあえず、トイレ行こ。
そう思って、部屋を出ると。
トイレまでの廊下を曲がった所に。
どう見ても四ノ宮の後ろ姿。
「あ、しの――――……」
四ノ宮、と言いかけて、四ノ宮の影に、一緒に女の子が居ることに気付いた。
……お、っと。
――――……邪魔だよな。
四ノ宮の視線は感じてはいたけれど、ここで立ち止まるほど、バカじゃない。そのまま素通りして、トイレまでの道を進んだ。奥まっていて、また角を曲がって、男子トイレ到着。
――――……なんだ、イイ子、居たんだな。
まあ良かった良かった。
用を足して、手を洗う。
鏡を覗き込んで、何となく髪の毛を直す。
――――……んー、まだ、居るかなぁ。
ああいう通る所で、ああいう雰囲気はやめてほしいというか。
オレは決して邪魔しにいった訳じゃないし。
うーん……。どうしよう。
そう思っていたら、トイレのドアがコンコンとノックされて、「失礼しまーす」と人が入って来た。
ああ、さっきの、アルコ―ル持ってきた店員さんだ、と思った時。
その子も、オレを見て、「さっきはありがとうございました」と笑った。
「失礼しますね。1時間に1回のトイレチェックなんですけど……もうトイレ済んでます?」
「あ、うん、大丈夫。どうぞー」
年下っぽいけど。話しやすい子だなー。明るくて、いいなあ。
なんか普段、裏表よく分かんない奴と、よく絡んでると、こういう分かりやすい子に癒される気がする。
なんて。
本人に知られたら絶対すごい怒られそうな事を思ったりする。
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