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近くて遠い

「モヤモヤ」*奏斗

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 やっぱりもう二度と出なくていいな、合コンなんか。

 とりあえず小太郎にはずっと誘われてたから、これで何となく義理は果たしたし。うん。あと数十分、耐えれば、終わる……頑張ろう。

 心の中でため息を付きながら、お茶を喉に流し込んだその時。
 さっきからめちゃくちゃ女に囲まれてる王子が、それを振り切って隣にやって来た。


「……何こんな端っこにいるんですか?」
「……疲れただけ。モテ王子は、いい子居た?」

「モテ王子って……」

 ぷ、と笑って、隣で、ソフトドリンクの機械の前にコップを置いてる四ノ宮に視線を向ける。


「ここでは無いですって言いましたよね」
「……別にいーんじゃない? 小太郎と仲良しなのは、あの子とあの子で、それ以外は、別に関係無さそうだよ」

「――――……どうつながってんのか分かんねえし、ただ面倒です」
「――――……あ、そ……」

 四ノ宮と多分、オレの事も一緒に見られてる視線があるからなのか。
 まあまあひどいセリフを、ものすごい良い笑顔で言っている。

 その笑顔を見ながら、オレはもはや、苦笑いしか浮かばない。


「お前がその顔で、そんな事言ってるとか、誰も思ってないと思う」
「……そんなの勝手なイメージでしょ」

「そういうイメージでいようとしてるからじゃん……」
「――――……」


 む、とした顔で見下ろされる。
 すぐ隣に立つと、ちょっと身長差がね。気になるんだよね。くそ。


「……先輩こそ、ずっと女の子に張り付かれるじゃん。ほんっと、モテますね、どっちにも」
「……は。何それ。どっちにもって」

「ゼミの先輩にも、先生にも、女の子達も」

 ああ、もうやっぱり、さっきの会話聞かれてたよな……。

「あれはモテるって言わないからな、あの人達、そんな気ないし」
「……ふーん……」

「……ふーんって……も―……」
「何ですか」

「何ですかじゃないっつーの。そんなんじゃないからな」
「ああそうですか……」

 ムカついて、ちょっと睨んでるのに、なんか、ふ、と笑い出した。


 くっ。ムカつくな、こいつ……。何で笑ってんだ。
 なんか見下ろされるのも、ムカつくし。


 そう思って何か言ってやろうとしたところに。
 女の子達が、割り込んできた。

 ほんと立食って初めて出たけど……結構大変かも……。
 今度もし合コン参加するなら確認しよ……。

 テーブルに座ってれば、自分の周りの人とだけ喋ってれば済むのに。


 四ノ宮に何か言ってやろうと思ったのに、忘れちゃったじゃんか。
 くそー。

 オレも四ノ宮も別で女の子達に取り囲まれる。
 聞こえてくる四ノ宮の言葉は、まあ、なんかすごく感じのいい言葉たち。


 ――――……なんだかなあ。もう。


 四ノ宮は外面が良すぎるし。
 オレは別に女の子と話すの嫌いじゃないし。


 だから、いいんだけど。


 なんかこのところずっと、モヤモヤしてる。



 ――――……四ノ宮にバレたせいで、
 自分がゲイだとか、
 誰かと、適当に会って抱かれてるとか。

 あんまり考えないように、やってきた事を、口に出してわざわざ確認してるような会話が多くて。


 考えないように、やってきたのに。


 男女だって一夜限りとか、絶対あるだろうし。
 何も悪い事なんか無いって、思ってたし。


 それをまるで責められるみたいに、問われたり。
 心配されたりしてると。


 ――――……それをいやでも向き合って考えなきゃいけなくなって。


 なんか、たまに、すごく、嫌になる。




 今だって、別に女の子と話すのはほんとに嫌いじゃないから、全然こんなの良いはずなのに。「合コンなんか出る意味ないのに」って、四ノ宮は思ってるんだろうなあと思うと。 


 なんか、こうして話しているのも、すごく嫌になってきて。
 無意味な気がしてきて。



 ――――……なんか、気持ちの、すごい奥の方で。
 すごくモヤモヤする。
 





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