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近くて遠い
「困ったなあ」*奏斗
しおりを挟む昨日はコーヒーを飲んだら四ノ宮の家を退散。
なんかもう、色々考える事はやまもりあったんだけど、もう、考えたくなくて。即、寝てしまった。
朝起きて一番に。
何だか、首を傾げてしまう。
どーして、クラブに四ノ宮と行く事になったんだろう。
全然意味が分からない。
――――……そんなに心配される事、なのかなあ。
…………男女間でだって、別に、あるじゃん。一夜限りの関係なんて。
四ノ宮だってしてるって言ってたし。
……オレが、変な男に会って、危ない目に遭うのが嫌ってこと?
でも、たとえもし、そんな事になったとしても。
なんか、そんなの自己責任で、しょうがなくねえかな。
オレだって、リスクがゼロだって、思ってる訳じゃない。なるべくリスクは低くしてやろうとは思ってはいるけど。
――――……組み敷かれるわけだし、そうなってから、本性がヤバい奴ってなっても、もうそれは諦めるしかないというか。
そんな事が絶対にない、とは言えないんだけど。
でも、ある意味、そういうのも分かっていての、行動だから。
それはもう、何が起こっても、自己責任。自分のバカさ加減を、人を見る目の無さを、呪うしかない訳で。
四ノ宮なら、そんな風にも言いそうなのに。
自己責任ですよねって、すごい、バッサリ言いそうなのに。
何であんなに気にするんだろ。
変に縁があって、しかもお隣さんで、変に絡んじゃったから、オレの事が心配の対象になっちゃったのかなあ?
困ったなぁ。やだぞ、関係する男を物色してるとことか、誘うとことか見せるなんて。絶対嫌だ。
授業を受けながら、頭の隅でそんな風に思いながら1日を過ごした。
最後、ゼミの時間。教室に行くと、まだ、先生と、2人の先輩だけだった。
とりあえず四ノ宮が居ない事にホッとして、「こんにちは」と中に入る。
「おーユキ、久しぶり」
「今日は先輩達、居るんですね」
「今週からしばらく参加する。先週まで別で忙しくてさ」
「お手柔らかにー……」
言うと、ぷ、と笑われる。
「ユキくん、昨日はありがとうね」
椿先生。
――――……今日もなんか、すげえカッコいいけど。
これに純粋に見惚れると、四ノ宮が怒る。まあ居ないからいっか。
……って意味が分かんねえ、今のオレの思考、何?
マジほんと、勘弁して。
「昨日ので、役に立ちましたか?」
「うん、かなり助かったよ。無駄なとこ読む時間が短縮されるから」
「じゃあ良かったです。遅かったんですか? 昨日」
「22時半位には帰ったかな」
「うわー。お疲れ様です」
言うと、先生は、ふ、と笑って。
「何食べて帰ったの?」
「あー……食べたのは……パスタ、ですね」
咄嗟に聞かれて、そんな風に答えた。
食べて帰った訳では、無い。
……なんか変な答え方だったかな、と思いながら、先生の言葉を待っていると。先生は、ふーん?と何か笑ってる。
「こんにちはー」
何だかなってタイミングで、四ノ宮達、1年が登場……。
先生の視線が四ノ宮に行って止まると、気づいた四ノ宮が近づいてくる。
「こんにちは」
……はい。王子様は、いつも通り良い笑顔で先生や先輩達に笑いかけてる。
こういう時、オレの事はスルーするのは何故。
よく分からない。
「ありがとうね、昨日」
先生が四ノ宮にそう言う。
「いえ」
そのまま四ノ宮と先生が話し出したので、オレはそーっとそこを離れて、大体いつも2年で座ってる方の席に、腰かける。
今日皆遅いなあ……。
「なあ、ユキ、今日ゼミの後、暇? 今日は先生用事らしいから個別に行くかって言ってんだけど」
達樹先輩と、亮二先輩がこっちを見て言う。まだ先生と四ノ宮は話している。
「あ、今日オレ、合コン行くんです」
「合コン? 珍しくない?」
「確かにあんまり行かないですけど。小太郎主宰なので」
「ああ、そうなんだ。じゃあまた今度飯いこ」
「はーい」
笑顔で頷いてるとこに、小太郎達も入ってきた。
「よー、ユキ」
「んー」
「今日行けるよな?」
「行けるって、昨夜も返事したじゃん」
何回確認すんだよ、と笑うと。
「だってカッコいい奴くるって言っちゃったし。来なかったら怒られる」
とか言う。
「なんだそれ……」
「だってマジそうだし」
「……はいはい、それはどうも……」
と適当に返事を返しながら、苦笑い。
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