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近くて遠い

「おかしい」*大翔

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 結局、家で夕飯を作る事にして、手伝うという先輩を風呂に入ってきてと自分の部屋へと追いやった。

 さすがに風呂に入ってきたら、そこから外には出ねーだろ……。

 ――――……オレは一体、何を考えてんだと、思いもするが。
 まあ。これで目的は達するから、とりあえずいっか……。

 先輩が来るまでにと、手早く料理を作り始めた。


 先輩は何だかやたら温まっていたのか、意外と遅くて、そろそろ呼ぼうかと思った時にやっと現れた。

 何だか頬が赤くて、乾かしたての髪はなんだかフワフワしてて。

 ――――……ああ、この人って。
 ……外見は、マジで、可愛いよな……。

 なんか、今までも、人のうわさ的にはそう思っていたのだけれど。
 今急に、お風呂上がりの無防備な感じを見たら。

 ――――……何か。すごく自分の思いとして、感じてしまった。


 ――――……この顔で。
 どんな奴かも分かんねえ奴の下で、何されるかも分かんねえとか。

 ……絶対に、そんなの、無理。なんですけど。


 だがしかし、そんな事いきなり言う訳にもいかねえし。
 ――――……また怒らせるに違いないし。


 普通の会話に努めて、普通に一緒に食べて。
 一緒に片づけ中に、合コンの話になった。

 そこからふと、ほんとにそんなにモテるのか気になって。

 クラブの話になって――――……。


 先輩はマジで嫌そうだったが。……まあそりゃそうだろうけど。

 今度一緒に行くと言ったのは。
 そうすれば、1人で行って変なヤバい奴に持ち帰られる事はないし。

 オレも相手を確認も出来るし。
 見た目でヤバそうな奴なら邪魔するし。

 あとは。よくわかんねえけど。ほんとにそんなにモテてしまうのか、知りたかったというか。
 この人が、そういう男に、どんな目で見られてどう扱われてるのか。

 別に全然そのやり取りを見たい訳ではないが、気になって。

 正直、誰にも相手にされず、相手なんか見つからず、帰ればいいのに。
 どっちかというと確実に、そう願ってる気がする。



 食器の片づけを終えて、ゆっくりコーヒーを淹れはじめた先輩の隣で、その手元を見ながら考える。


 やっぱりオレ、ちょっとおかしいよな……。


 男ナンパしに行く先輩についていくって。何だそれ。意味わかんねえ。
 先輩、よく、キレないな……。


 さすがにおかしいなと自分でも思い、しばし無言でいたら。
 先輩が、ふ、とオレを見上げて、じーっと、見つめてくる。


「何ですか……?」
「――――……四ノ宮ってさぁ……」

「はい」

「オレが、男と寝んの、嫌?」

「――――……」


 なんかめちゃくちゃズバリ聞かれたな……。


「……嫌じゃない……ことはない、ですかね……」


 思わずそう答えたら、先輩は、ん?と首を傾げて。


「待って、どー言う事。嫌じゃない事は無い? ……嫌じゃない、ことは無いって……嫌ってこと?」

「まあ……嬉しくはない、てことですね」


「……嬉しいって言われても困るけどさあ……」
「そうでしょうね」


 オレの返事に、先輩は、はー、と息を吐きながら、コーヒーに視線を戻した。






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