【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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近くて遠い

「ちょっと楽しい」*奏斗

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 ――――……は。終わった。

 オレが読んでいたのも、四ノ宮が全部持って行ってくれたので、オレは、自分が最後に読んだ資料を持って先生にの側に寄って、差し出した。


「これで最後です」
「ありがとう。助かったよ。2人、夕飯はどうするの?」

 資料を受け取りながら先生が言うので、後ろの四ノ宮を振り返りながら。

「この後食べに行こうかと思ってて」

 そう言うと、先生は、そっか、と笑んだ。

「一緒に行って好きな物食べさせてあげたいけど、まだやる事がたくさんあるから、とりあえず――――……これで食べて?」

 そう言われて、財布から5000円札を差し出されてしまった。

「え、少し手伝っただけなので、いいですよ」
「そう言わないで、バイトだったと思って。2人で3時間以上。安い位だよ」

「――――……」

 どうしようかなと思っていると、四ノ宮もちょっと困ったような顔をしていたのだけれど。結局先生の好意を受け取ることにして。2人で、ありがとうございますと受け取った。

「このお金の件は、他の子には内緒で。これ目当てで来られても困るから」
「はい」

 先生の笑顔に、笑って返してから、オレは自分の鞄を手に取った。


「じゃあ先生、また明日のゼミで」
「ごちそうさまです」

 オレと四ノ宮が言うと、先生は、「助かったよ」と言って笑う。

 
 軽く会釈しながら、先生の部屋を出て。

「5000円、持ってるね。あとでこれで払おう」
「――――……そうですね」

 2人で並んで歩きながら、建物を出る。


「目ぇ、疲れたなー……」
「ですね」

「――――……早く食べて帰って、休も」

 オレがそう言うと、四ノ宮は少し黙ってから。


「……疲れてます?」
「え、疲れたでしょ? 固まってたから、肩と目がやられてる。風呂入って、温まりたい」

 んー、と腕を伸ばしてから、肩を回した。

「シャワーじゃないんですか?」
「いつもはシャワーだよ。でもなんか、今日は解したい」
「ああ。なるほど」

 四ノ宮は頷いて。
 それからオレを、ふと見下ろした。


「オレん家で食べます?」
「え?」

「このまま帰って、オレんちで食べますか?」
「……ていうか、何食べんの?」

「何か作りますよ」
「え」


 ……ますますよく分からない。


 ああでも、なんか、オシャレな感じの朝ごはん食ったって言ってたような……。料理する奴なのかな。


「四ノ宮、作れんの?」
「何か食べたいもの言ってみてください」

「んー……ペペロンチーノは?」 
「パスタでいいですか?」
「うん。さっきからちょっとイタリアン気分だったんだよね」
「それならすぐ作れるんで、家にしましょ。オレ作っとくんで、先輩、風呂入ってきていーですよ。食べたら、すぐ帰って寝たら?」

「え。そんなの、いいの? じゃあさっきの5000円あげるね」
「つか、パスタにそんなかかんねーし」

 く、と笑われて。

「だってこれで食べろって言われたしさ」
「別に要らないですよ。先輩持ってたら?」
「えー。じゃあ、今度何か、一緒に食べよーぜ」
「何かって?」

「だって隣だし。一緒に食べよってまたきっとあるだろ。そん時使お」

 そう言うと。
 何か四ノ宮、ふ、と微笑んだ。――――……ように見えた。

 作り笑いが剥がれたら。
 なんかちょっと小馬鹿にしてるみたいな笑いとか。
 ――――……皮肉っぽかったり、苦笑いだったり。そんな感じだったけど。

 今、なんかちゃんと笑ったなあ……。
 そーやって笑ってれば、可愛い後輩なのになあ。


 ――――……オレのこと。
 嫌いなのかなーとか思ったけど。



 家で食べようとか言う位だから。
 まあそうじゃないのかなーなんて思いながら。

 四ノ宮に、肉とか、何入れますか?なんて聞かれて。
 思うように話しながら、並んで歩くのは、なんだかちょっと、ほのぼのして。

 ちょっと楽しい気がする。




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