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近くて遠い

「対象外」*奏斗

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 四ノ宮はよく分かんない。


 最初は裏は全部丸ごとブラックで、出したらもうすごいことになるのかな~と思ったけど。なんかそんな感じでもない。

 別に素でも、優しかったり。面倒見良かったりも、する。
 じゃあ何を隠してるんだろうって思うけど。

 ……ほんと、何なんだろ。

 ただ、オレが嫌いだった、嘘の作り笑いを、オレにしなくなって。
 うさんくさいなーっていう、嫌な感覚を持たなくて済むから。
 それは、オレにとっては良かったって話で。
 
 でもたまになんか。ものすごく感じ悪い時もあるし。
 すぐ怒る、ような気がするし。


 半面。……多分、オレが、色んな奴と寝る事を良く思っていない。
 なんか、ものすごく、心配、してる気がする。それは、優しいって事になるのかなあ。


 そんでもってなんか――――……。
 オレと、一緒に、居ようとしている……のかな。

 よく分かんないけど。


 月曜の、図書館も。今日のこの手伝いも。
 明日の合コンも?


 …………そんなような気がするんだけど。
 気のせい、かなあ。

 こんな事言って、違ったら、もう自意識過剰だと、この世の終わり位馬鹿にされそうな気がする。そういうとこは、ありそうだから聞けないけど。
 

 一生懸命資料を読みながら、付箋を貼る時とか、資料を変える時とか。
 ちょっとした隙間で、そんな事を考えながら。

 はた、と気付いた。


 あー、なんか、この空間って、四ノ宮も椿先生も。
 めっちゃ女の子にモテそうな男が2人。

 オレが女の子だったら、囲まれてすげー楽しいんだろうな。


 …………あれ?
 そっか、オレ男対象なんだった。忘れてた。

 って、なんか、自分で変なこと考えてるなと思ったけれど、すぐに納得した。


 ――――……昼間も、四ノ宮に、椿先生なんて近すぎて無理みたいな事言ったけど。
 
 ここの2人、マジで近すぎて。
 完全対象外なんだよな。


 今なんてオレ、自分がこの2人を対象にするって事すらも忘れてた。
 はは。オモシロ。

 んでもって、女の子なら楽しいんだろうなあ、なんて。
 咄嗟に思うとか。

 よっぽど、身近で考えたくないんだな、オレ。

 身近でそんな事して。
 バレんの。――――……やだしな。
 まあ四ノ宮にはもうバレてるけど。

 こいつ、話しそうにはないし。ギリギリセーフ、だったて事かなあ……。


「――――……」


 あと少しで、とりあえずここに積んであるのは見終わるな。


「先生、ここにあるのが終わったら、終わりですか?」

 そう聞くと、PCに向かってた先生が、椅子を回して振り返った。


「ああ、終わりにしてもらっていいよ」
「分かりました」

 返事をして、もう一度集中。

 しばらく読んでいると、四ノ宮がふ、と息を付いて、顔を上げた。


「オレの方終わりました……」
「ん。オレのもこれで最後……」

 四ノ宮の言葉にそう返して、読み進めていると。


「四ノ宮くん、こっちのpcの方に持ってきてくれる?」

 先生がそう言って、四ノ宮が、オレと2人で積んでいた資料を運んでいく。
 その後、自分の鞄を取ってきて、オレの目の前にまた腰かけた。


 少し黙って、スマホを見てる雰囲気。

 静かに待っていてくれてるので、何となく急いで読み通した。




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