【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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近くて遠い

「心配?」*大翔

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「四ノ宮、見て、すげー今日、月がでっかい」

 目の前にある月、確かに、いつもより大きく見える気がする。

「ああ……そうですね」
「何であんなに今日でっかくなってるんだろ?」

「別にでっかくなってる訳じゃないですよね。目の錯覚らしいですけどね」
「え、錯覚なの?」

「て聞いた事ありますけど。月のサイズは、変わらないですからね」
「えー、錯覚―?」

 不思議そうに、月を見上げて。


「錯覚じゃないよね、あきらかに、ちっちゃい時の何倍も大きいし」
「でも錯覚ですって」


 なんか、先輩は、むむむむ、という顔で、オレを見てくる。
 思わず、ぷ、と笑ってしまった。

「何でそんな顔してるんですか?」

「そーだね、大きいねって言っとけばよくない? 錯覚とか言われちゃうと、なんかつまんねー」
「つまんねえって……」

 クスクス笑ってしまう。
 変な人。
 ふー、とため息とともに。


「……なんか昨日いっぱい、食べたんじゃないですか?」
「――――……? ん?」

 きょとん、として、オレに視線を向けてくる。


「だから。昨日、月が、何かめちゃくちゃ食べ過ぎて、大きくなってるんじゃないですか?」

 そう言ったら。
 先輩が面白そうな顔で、オレをマジマジと、見上げる。


「え、何それ」

 ぷ、と吹き出して。先輩が、あはは、と笑い出す。


「さっきと真逆すぎ。 ていうか、一瞬何言ってんのか、分かんなかったし!」
「あんたが錯覚じゃつまんないって言うからですよ」

「えーそれにしたって、普通そんな事言わないだろー。絵本に出てきそう。そんな話」

 しつこくクスクス笑って、先輩が楽しそうに月を見上げてる。まだ笑ってるし、と、先輩に視線を向けたら。

 首筋に見える、赤い痕。


 一瞬で、何かに心が曇るけれど。
 それは、口には出さない。と決めて。


 一緒に、前にある月を眺めながら、歩き続ける。


「そういえば、四ノ宮、合コン、行くの?」
「あー……どうしましょうね。先輩は?」

「あの感じだと、連れていかれるかなー。金曜はゼミの食事が入るから、空けてあんの知ってるし……彼女居ないし、合コンに興味も全然ないとか。そういうのも、ちょっと困るからさー。小太郎の知り合いなら、他でやる合コンよりは緩いだろうし。行っとこうかなって思ってるよ」

「――――……そうですか」

「まあ前から、お互い彼女居ないんだから合コンしようって、小太郎言ってたからさ」
「……仲いいんだから、ばらしちゃえばいいんじゃないですか?」
「え? ああ……小太郎に?」

「そしたら合コンに誘われる事もなくなるでしょ」
「まあそうかもだけど――――……言わないよ」

 ふ、と先輩は笑う。


「男が対象ってなるとさ……やっぱり、自分もなるのかなとか。思われたら嫌じゃん?」
「――――……」


「小太郎にそんな興味、一切ないのにさ。ちょっと絡んだ時とかにさ。オレが意識してるとか思われたりさ。気持ち悪がられたら、嫌だし」
「……そんなこと思わないと思いますけど」

「……可能性はあるじゃん? じゃあ彼氏が欲しいのかとか、余計な気を遣わすのも嫌だしさ――――…… ほら、四ノ宮みたいに、余計な心配かけけるのも、ほんとは嫌なんだよね。 お前には、見られちゃったから、どうしようもなかったけどさ」

「――――……」

「ごめんな、オレが迂闊だったから……嫌なとこ見せてさ。色々心配させたりしてさ」


 ――――……心配、なのか。オレのって。


「……四ノ宮もさ、忘れろとは言えないけど…… そこまでオレの心配、してくれなくて大丈夫だよ? 今まで1人で普通にしてきたしさ」



 1人て大丈夫。心配しないで。
 そう言って笑うけど。

 ――――……頑なに恋人は要らないって言って。
 傷ついてんのを隠して、1回限りが楽でいいって自分にも嘘ついて。


 全然大丈夫になんて、見えないのに。

 ――――……でもやっぱり。これも言っちゃいけないんだろうか。


 あー。
 ――――……なんか。めんどくせえな……。

 せっかく裏も表も関係なく、好きに話せるかもと思ったのに。
 この件に関しては、飲み込むしか、ないとか。




「……オレは……」
「ん?」

「――――……あの日、見て良かったですけど」
「……良かったって事はなくない?」

「……あれがあったから、先輩と話せてるし」


 そう言ったら、先輩は一瞬言葉を失ったみたいで。
 それから、何だかすごく照れた顔をして。苦笑いを浮かべた。



「――――……まあ。……それはそう、かもな……」


 と、そう言ってから。



「何、なんか急に少し可愛いんですけど、お前。……変なの」

 ぷ、と笑いながらそんな事を言う。



「可愛いとか意味わかんないんでやめてください」


 即座にそう返したら、ますます可笑しそうに笑う。




「何でそんな真顔で、可愛いを拒否んの。――――……ほんと変な奴」


 先輩は、またまっすぐ月を見上げながら。
 そんな風に言って、クスクス笑った。


 


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