【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
55 / 555
近くて遠い

「ムせまくり」*奏斗

しおりを挟む

 めちゃくちゃムせだしたオレを、小太郎が振り返る。

「ん? 何してンの、ユキ」
「っ……っ……っ」

 良いからオレの事はほっといてと目で合図しながら、口に手を当てて咳き込んでると、小太郎と反対側の友達らが笑う。

「何どしたのユキ」
「……ム、セた……」

 けほけほ。


「何ですか、相川先輩」

 ――――……四ノ宮は、今日も死ぬほど爽やかだ。
 めっちゃ優しそうな、王子な笑顔を浮かべて、昼食のトレイを手に、小太郎の前にきた。

 むせながら、隣の奴に背を擦られながら。
 オレは、なるべくしばらく顔を合わせたくなかった奴を、ちょっと見上げた。

 ……オレとしゃべってる時の仏頂面は今どこに……?
 そう思いながらも、まだ咳き込んでる、バカなオレ……。

 オレをチラ見してから、小太郎は、四ノ宮を見上げた。


「今日さ、4限の後、図書館で課題やらないか? 今回の難しかったろ?」
「……そうですね」

「お前もしかして終わった?」
「いえ、まだ――――……昨日は終わらなくて」

「じゃあ一緒にやろうぜ」

 ――――……バカ小太郎。なんで、誘うんだ。
 別に全員誘う訳じゃないだろうし、後輩誘うなよ、同学年でいーじゃんか。


「……雪谷先輩も行くんですか?」

 不意にこっちをまっすぐに見つめられて。


「けほ……っ……」

 喋ろうとすると、また咳が出て、喋れない。
 そしたら。小太郎が。

「ユキも来るよ。みどりとかも来るし、他にも呼ぶから、他の1年にも聞いてみたら?」
「分かりました。聞いてみます。また後で連絡します」
「ん、おっけー」


 まともに返事も出来ないまま、四ノ宮が小太郎にそう言って消えてくのを見守ってしまった。


 しかも。
 消える最後に、ちら、と視線を流されて。


 う、とまた息、詰まるし。



「……んで、お前はさっきから、何むせてんの、ユキ」

 苦笑いで小太郎に言われる。

 だって、お前が、今一番会いたくない奴の名前を、オレの真横で大声で言うからだよっ!!

 と、叫びたくなるけど。


「……サラダが……気管に……けほ……っ」
「ぷ。マヌケだな、ユキ」

 ははは、と笑われる。

 ……お前のせーだけど。

「なあ、あいつだろー、『王子』」

 一緒に座ってた奴らが、そう聞いてくる。
 小太郎が、「そう、ほんと王子みたいだろ」なんて答えてる。

「オレのサークルの1年の女子も、あいつがカッコイイって、すげーうるせーの」
「いいよなー、顔良いって」

 そんな事を言ってる2人。
 小太郎は、バカだなお前ら、と笑った。

「あいつ、顔だけじゃなくて、超いい奴でさー、頭も良いし、スポーツも出来るらしいし、金持ちらしいし、ほんと、ガチで王子だから。 やっかんでも無駄だぜー」



 ――――……ほんと、お前、明るいな。


 オレが、ゼミで過ごすうちに小太郎と仲良くなったのは、こーいう……。
 分かりやすすぎるとこが好きで楽で。

 なんていっても、思った事全部口にでるから。
 しかも、それが出たからって、別に周りを傷つける事もない。

 ほんと明るくて、良い奴。
 そういうとこがすごい好きで、仲良くなった。


 もう1人、すごく仲の良い翠も、こんな感じ。
 

 小太郎と翠と居ると、なんか楽なんだよね。
 高校までの友達を切ってるオレには、すごーく、大事な友達。


 ……にしても。


「何で四ノ宮まで誘うの? 2年だけで良くない?」

 咳が止まってから聞くと。

「だって、四ノ宮、着眼点がすごいんだもん」

「――――……え、待って、さっき難しかったろ、とか言って……教えてあげるつもりなのかとちょっと思ったら」

「教えてもらう気満々」

「――――……」


 ぷっと、吹き出してしまう。
 まわりの皆も、何だよそれ、と笑ってる。

 さっきまで、「王子」にぶつぶつ言ってた2人も、「だってあいつ、ほんとに頭いいんだもん」という小太郎の言葉に、もう笑っちゃってるし。


 ――――……ほんと。小太郎の側ってらくちん。

 ……にしても。小太郎のアホたれが頼って、四ノ宮呼んじゃったけど!
 はー。

 4限のあと、一緒に課題かー……。


 謝りもできてない状況で、皆の前で話さないといけないのは、ちょっと、キツイなあ……。うーんうーんうーん……。



 悩んでいたら、サラダを延々つついていて。
 また皆に笑われることになってしまった。





しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

処理中です...