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近くて遠い

「翌日」*奏斗

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 昨日の夜は、少し遅くなったけど――――……。
 疲れたからか、よく眠れた。

 ちゃんと朝から大学に来てて、今お昼。


 何も知らない皆と楽しく話してる時は、全然大丈夫。

 ――――……そう思うと。

 四ノ宮には結構色々話しちゃったから……感情が、全部、隠せず出ちゃったのかな、とも思う。


 ほんのわずかな間に。
 ――――……なんか、四ノ宮に……気を許しちゃったのかなとも。

 でも迷惑だよな。

 もっと、ちゃんとしないと。


 ――――……今日、謝りに行こうかな。
 ……昨日のこと。



 
「おーす、ユキ、元気?」
「んー、おはよ」

 元々2限が一緒だった皆と食事していた所に、また別の友達たちも寄ってきて、適当に周りに座っていく。


「あー、オレ、ユキみたいな顔だったら良かった」

 急に、すぐ後ろに座った芳樹よしきにそんな事を言われて、ん?と見つめ返すと。
 その隣の将太しょうたが、苦笑い。

「昨日、芳樹さ、気になる子とデートしたらしいんだよ」
「うん、それで?」

「歌手のりょうくんが大好きって、ものすごい言われたんだって。アイドルみたいな顔の奴」
「うん……?」

 何それ? どーいうこと?
 首を傾げると。

「そんな強調するってことは、オレなんかタイプじゃないってことだよな……」

 そんな風に落ち込む芳樹に、将太が、「朝からずっとこれでさ」と笑う。


「えー……? それは、分かんないんじゃない?」

 こっちまで苦笑いになってしまう。

「ほんとにその歌手が好きだってだけの話だったら、付き合うのとかには関係ないよね?」
「でも、初めて2人でデートした日に、そんな事ばっか話すかー?」

「どんな話の流れで、その話をしてたかによるよね?」

 クスクス笑いながらそう言うと。

「好きなものとか何?って聞いたら、涼くんがって話し出して」
「芳樹から聞いたんじゃんか。別にカッコいい奴が好きだからって、それと付き合いたいとかじゃないんじゃないの?」

 そう言って、なだめようと思ったのに。
 不意に、頬をむにっと挟まれた。

「この顔だったら、どんな話題だろうが、告白できたのにー」
「……っいただだ……」

「やめろよ、ユキがかわいそうだろ」

 将太が、芳樹をはがしてくれて、席の方に引き戻してくれた。

 オレの隣に座ってた、小太郎が苦笑いしながら、オレの顔を見て。
 肩をポンポンと叩く。

「大丈夫か、ユキ……つか、赤くなってるし! アホ芳樹、やめろよなー!」
「あ、ごめん。つい、顔見てたら、アイドルが憎くなって」

「オレ、アイドルじゃないっつの!」

「アイドル顔じゃねーか!」
「何だよ、アイドル顔って」

 もー、とため息を付きながら、持ってたおにぎりをぱく、と食べて。

「ていうか、告白とか、しなかったの?」

 芳樹に聞くと。

「だって、遠回しに断ってきてんのかと思ったからさあ。――――……はー、飯買ってくる」

「んーいってらー」

 
 ため息つきつき、将太と消えていく芳樹を苦笑いで見送る。


「ユキ、災難だったなーー」
「アイドル顔ムカつくとか、笑える」

 まわりの奴らがそんな風に笑う。苦笑いで返しておいて、水を飲みこむと。
 隣で小太郎が急に話題を変えてきた。


「なあなあ、ユキ、ゼミの課題やった?」

 そう言った。

「んー、まだ途中」

 昨日投げ出して、クラブいっちゃったからなあ……。


「さっき翠とも会ってさ。今日の4限が終わったら、ゼミのメンバーで図書館に行こうって言ってんの。資料もって帰んのも重いし、その場でやろうって。しかもしんどいから、相談し合おうぜって」

「4限の後かー……」


 四ノ宮に謝りに行きたいけど――――……。
 まあ、そんなに遅くならなければ、謝る位出来るか。


「うん、いーよ、やろっか」

「OK、じゃあ他にも終わってなさそうな奴に声かけてみる」
「うん」

 頷いて、サラダを箸で食べ始めたところで。


「あ、四ノ宮ー!」


 隣で、小太郎が、おっきな声を出した。



「――――……っ!」


 噛んでたサラダ、変に吸い込んで、むせる。





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