【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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1ミリ近づいて

「ムカつく」*大翔

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 アイスを選ばせてもらって、テーブルに座った。

「はい、コーヒー」
「――――……ありがとうございます」

 すごくイイ香りのコーヒーが、目の前に置かれた。

「うん」

 にこ、と笑うと、先輩はオレの前に座った。

 2人掛け用のリビングテーブル。
 すごく、先輩が近くに居る。


 ほんと、変な空間。
 何でこの人と、こんな、2人きりで居るんだろう。

 あの日、たまたまクラブで見かけて。
 ――――……ついていって。あんな風に話さなかったら。夕飯も一緒に食べてないし。それで帰るタイミングが違ったら、ここに住んでる事も、きっと知らないままで。 

 こんな風に、2人きりで、なんてありえなかった。


「どーぞ」

 言われて、いただきますと、アイスを食べ始めた。
 自分で買わないメーカーのアイス。

 ふーん。……これ、美味しい。



「――――……変なの、お前がここに居るの」

 先輩が言う。――――……そんなの、オレも、ずーっと思っていた。

「オレもそう思います」
「あ、そう思うんだ」

 クスクス笑いながら、先輩もアイスを口にした。

「あ、美味い、これ」

 あたりだな~とか言いながらアイスを見てる先輩のスマホが鳴り始めた。


「あ、ごめん。ちょっと電話するね」

 オレが頷くと、先輩が話し始めた。

「真斗? うん。ああ、シャワーだった?」


 「まさと」
 ……こないだ泊りに来てたあいつか。

「え、お前体痛くねえの? オレ絶対明日、すげえ筋肉痛だけど」


 ぴき、と自分が固まるのが分かる。
 ――――……やっぱ、相手、「まさと」か。確認するまでも無かったか。


「ふざけんなよ、午前も午後も付き合わせといて、そんな事言う?」

 ――――……午前も、午後も?
 なんか、モヤモヤが半端ない。アイスを口にパクパク運んでいく。

 もう用はない。さっさと食って、帰ろう。


「現役のお前によく付き合ったと思わねえ? つか、オレ、すげえ頑張ったのに」

 ――――……? ん? 現役のお前? 


「言われなくてももう絶対ゆっくりするから――――……うん。おやすみ。頑張って」

 通話を終えて、先輩がスマホをテーブルに戻す。

「ごめんな」
「いえ――――…… あの……今の電話って……」


 何と聞いていいか分からない。
 最初そういう話かと思ったけど――――……なんか、言い回しと、話してる感じから行くと。なんか、違う気もしてきた。

 先輩はオレを見て、首を傾げてる。


「昨日ちょっとだけ会ったろ?」
「……はい」

「弟だよ。真斗っていうんだ」

 先輩のセリフに。
 ――――……昨日からのモヤモヤが死ぬほど馬鹿らしくなって。
 硬直。

 くっそ、そのせいで、実家になんか泊りに行ったせいで、早く来てた親戚たちと、面倒な夜を過ごしたっていうのに……。



「え? 何でそんなに、固まんの? 真斗がどうかした??」


 ――――……あぁ。
 ……そう言う事か。


 ……弟、ね。



 ぐったり。
 なんでオレはこんなに、力入れて、聞いて。
 ……弟なんつー、回答にこんなにぐったりさせられてンだ。


 …………先輩は、目の前でアイスを食べながら。

 こいつ、一体今何考えてるんだろうなあ、的な、不思議そうな顔でオレをじっと見つめてる。

 しかもちょっと面白そう。



 ……この人は、無意識に人の中身、感じ取ろうとする人だから。
 …………絶対ぇ読ませねえ。むかつく。



「弟、仲いいんですね」
「うん。仲いいよ」

「……何で体痛いんですか?」
「バスケ。今日1日付き合ってたの」

 ――――……そうだよ。
 ……普通は、体痛いっつったら。そういう方を考えるわ。

 家に、超イケメンと入ってったりするから。
 ……つか。一晩限りで遊んでるとか、そんなこと、この人が言うから。



 …………ち。
 思わず舌打ちが漏れた。

「え?」
 先輩、目の前で、目が点になってる。


「え、今舌打ちした?」
「してません」

「ちって言った?」
「言ってません」


「言ったよね?? え、今の会話のどこに舌打ちポイントがあんの?」

 ものすごい興味ありげに身を乗り出してくる。


 ……ウザイ。



 

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