【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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1ミリ近づいて

「疲れた」*大翔

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 ああ、マジで疲れた。
 法事は無事に終わった。店での食事会も終えた。その後、屋敷に戻ってから行われてる集まりにもちゃんと参加して、ある程度の時間は既に経った。

 ――――……もう用はない。もー無理。

 オレは、トイレに行くふりをして、親戚一同集まっている部屋を出た。葛城に合図をしておいたので、葛城も少し後から部屋を出てきた。


「どうされました?」

「葛城、オレ、やっぱりもう帰る。――――……車呼んで」
「泊まられるんじゃないんですか?」

「皆泊まるんだろ? オレが泊まったら、このまま夜中まであいつらに付き合わされて、朝食も一緒で、下手したら明日も何時に帰れるか分かんねえ。もう限界、無理。――――……明日早くから予定があるって事にして、帰る」
「大翔さん……」

 葛城がめいっぱいの苦笑いを送ってくるが。

「まあ、今日1日、よく頑張ってらしたので――――……分かりました。私が送ってさしあげます」
「……いいのか?」

「まあ。私も少し息抜きに」

 ふ、と笑んだ葛城に、ほっとした所で。

「きちんと、皆さまにご挨拶してこられたら、お送りします」

 その言葉に、かなりげんなり落ち込む。

「――――……トイレ行って、気合入れて、それから回る……」


 あいつらと別れて、今日中に帰るためだ。
 頑張るしかない。


 思いながらも、大きなため息をついて、オレはトイレに向かった。


◇ ◇ ◇ ◇


 苦痛でしかない挨拶回りを済ませて、更にぐったりしたオレは。
 葛城の運転する車の後部座席で、背中を埋めさせて、片肘を窓にもたれさせた。


「なーオレまだ19だけど」
「はい」

「……なんで結婚の話されんだ」

 オレの言葉に葛城は、ああ、と失笑。


 いとこ、はとこはかなり数が多くて、仲がいい奴も居れば、対抗意識なのか、あんまりよくない奴も居る。嫌味な奴もいるし、楽しいというよりは疲れることの方が多い。
 しかも、上っ面で話してるから、時間が長いと、マジで疲れる。
 今日はもう朝から夜までずっと一緒だった。

「本家が分家が、うるせーし。どーでもいいし」
「そうですね」

「……見合いなんてしねーし、婚約なんてするか。バカかよ」

 ああ、と、葛城が笑う。


「ちなみにそれは、どなたからのお話ですか?」
「親父。……と後は色々。叔父叔母全部」
「さすがに全部じゃないでしょう」

 めちゃくちゃ苦笑いしながら、葛城が言う。

翔一しょういちさまは、奥さまと、お若い頃のお見合い結婚ですからね……それでよかったと思われてるんでしょうね」
「昔と違うし、絶対見合いなんかしねーし。親父に言っといて、葛城」

「折を見て、一応伝えますね」
「一応じゃなくて、確実に」
「はい」

 葛城は笑ってる。

 はーとため息。

 でも葛城に、送ってもらえて良かったかも。
 愚痴っている間に、落ち着いてきた。
 
 
 マンションに近付くにつれ、考えないようにしていた事が、ふと頭を過ぎった。


 ――――……先輩の来客……もう帰ったのかな。



 なんか、また、モヤついてきた。


「そういえば、大翔さん」
「……ん?」

「雪谷さんですが」
「……ああ?」


「ゲイだとおっしゃってましたよね」
「……ああ」


「昨日その話の時、 知り合いに居るか聞かれましたよね?」
「ああ。聞いた」


「何か聞きたい事がありましたか?」
「――――……ああ、そういえば……… ゲイって、さ」

「はい」

「恋人作らず、一夜限り、みたいな奴が多いのか聞きたかったんだけど……知り合いにはいないよな?」

「――――……居ますよ、何人か」
「居るのか……」

 何人も? ……相変わらず、底が知れない。

「ええ」

「……皆、恋人は居るのか?」
「内2人はカップルです。一緒に暮らしてます」
「……そか。他は?」
「恋人は居てずいぶん前に別れたある友人は、一夜限りみたいな感じらしいですけど」
「……そういうのが多いの?」
「どうなんでしようね、別に男女でも、ありますよね、一夜限りなんて。大翔さんもあるでしょう?」
「……まあ」

「……あるんですね」

 苦笑いされる。あ。口、滑った。

「程々になさって。相手を選んでくださいね」
「……聞いとく」


 葛城が苦笑い交じりの、ため息を付いている。



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