24 / 551
1ミリ近づいて
「真斗と」*奏斗
しおりを挟む「カナは、しっかりしてそうで抜けてんだからさ……1人暮らし、大丈夫なのか? 変な奴につきまとわれたりしてない?」
「してないよ」
「家から通えばいーのに。つか、やっぱ心配だから家帰ってこいよ」
「……まあそれはしょうがないだろ?」
オレが言うと、真斗はため息。
「……オヤジなんてどーせ忙しくて家に居ないんだから関係ないじゃん」
「そうだけど…… でも顔合わせない訳にはいかないし。お互いの精神衛生上、これがいいんじゃないかな。しょうがないよ」
「しょうがなくない。――――……別に、カナがゲイだって、家族に変わりはねーのにさ。あのくそ親父」
父の事を、吐き捨てるように言う弟に、困ってしまう。
「しょうがないよ。息子が、男に、とか――――……受け入れられないのも分かるし。……マンション借りてくれてさ。見捨てるとかでもないし、むしろ感謝してるよ」
「――――……しなきゃいけないのは、そこじゃねえし」
淹れ終えたコーヒーを、ローテーブルの上に置きながら、真斗を見つめる。
「時間かかるんだよ。そう簡単に受け入れられる事だと思ってないし」
――――……大好きだった恋人と、別れたその日。
最後、別れ際にキスした所を、父さんに、見られた。
外でなんかした事なかったのに。
――――……最後だからと。もうその時は別れがショックすぎて、隠すとか人が居るとか、全然気にしてなくて。
オレが馬鹿だったんだし。
カミングアウトもしてない状態で、仕事帰りの父さんが、外で、息子が男とキスしてるの見たその衝撃、想像できるし。
「……あんまり父さんの事、悪く言うなよ」
「――――……カナの事に関しては許せない」
「……オレが悪いんだから」
「カナは別に悪くない」
まっすぐ真斗の視線に、ふ、と嬉しくなる。
「もー、真斗は、ほんと可愛いなー」
ぎゅー、と抱き付いて、よしよし、と撫でると「やめろよ」と離される。
「照れんなよ」と再び抱き付いて。
「真斗がずっと、認めてくれてるから。……なんかすごく、救われてるし」
「……当たり前だろ。兄弟なんだから」
「――――……真斗が嫌悪したって、おかしくないっても思うんだけどね」
「カナの事、嫌悪するとか、ねーから」
「……ありがと」
ふ、と笑って、よしよし、と撫でて、真斗から離れる。
「ほんと、イイ男に育ってるなー、真斗」
「――――……」
何も言わないけど。
ちょっと喜んでるっぽいのは分かる。
ふ、可愛い。
「そういえばまだバスケ部引退しないの?」
「最後の大会に負けた時点で引退。そしたら受験生」
「ていうか、今も受験生だけどねー。勉強ちゃんとしてる?」
「一応してる」
「頑張れよなー」
「頑張るよ」
コーヒーを飲みながら、あ、と思って、真斗の顔を見る。
「大会応援に行くから。教えてね」
「ん。来週末からだよ」
「……ていうか、そんな時に、明日部活休みでいいの?」
「なんか体育館の点検があるとかで、使っちゃダメなんだって。明日は各自自主トレしろって。だから明日付き合ってよ」
「ん、いーよ」
なんだかんだで、真斗が泊りに来るのは久しぶりで。
連絡は取り合ってるけど、顔見てゆっくり話すのも久しぶり。
2人でソファに座って、他愛もない話を続けた。
86
お気に入りに追加
1,602
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる