上 下
20 / 553
1ミリ近づいて

「興味ねえから」*大翔

しおりを挟む



「そろそろ帰ろっか」
「……そうですね」

 ――――……確かにちょっと、考える事が多すぎて、疲れた。
 会計を済ませて、店の外に出ると、先輩のスマホが音を立てた。

「――――……あ、ちょっとごめん」
「はい」

「……あ、真斗? ごめん、電話気づかなかった。店の音楽がデカすぎて。 ……え。こっち、来るの? 泊るの? あ、分かった。オレ今、駅の近くに居るから――――……じゃあ改札で待ち合せしよっか。ん。今から行く」

 そんな会話をして、すぐ電話を切った先輩、オレを見上げてきた。

「四ノ宮、ごめんオレ」
「ここで解散にしましょ」

「あ、うん。 ごめんな」
「もともと帰ろうって言ってたんだし、全然」

 そう言うと、先輩は、ふ、と笑んで、オレを見上げた。

「ん。じゃあまた来週、学校でな」
「はい」

 先輩は、にっこり笑って。
 それから、ふとオレを見つめた。

「――――……なんか昨日、見られて良かったかも」
「……は?」

「ブラック四ノ宮、面白いかも。 なんか、得体知れなくて怖いなーって言うのがなくなって、すげえすっきりしてる」

 嬉しそうに、面白そうに笑って、そんな風に言ってくる。

「ブラック四ノ宮って何ですか……?」
「だって普段、ホワイトって感じだから。対比してみた」

 ふ、と瞳を細めて笑う。


 ――――……ほんと、綺麗な顔してンな、この人。


 そりゃ、女にも男にも、モテるだろうけど――――……。
 1回限り、か……。


「じゃあ、行くね。 おやすみ、四ノ宮」

 そう言って、バイバイと手を振りながら、駅に向かって走り去っていった。


 ――――……その後ろ姿を見送って、オレは、ふう、と息をついた。

 なんかほんと。
 ――――……疲れたな。色んな意味で。



 つーか。
 今から男と会うのか。泊まりで?
 ――――……でも恋人はいらないって言ってたし、店とかで知り合う奴と1回限りって言ってたし、て事は、今から会う奴とはしねえのかな。


 …………は。関係ねえ。 考えなくていいや。


 まだ20時過ぎか。
 ――――……誰か、誘うか。

 スマホを取り出して、誰かに連絡を取るか、少し考えたけど。
 気が乗らなくて、やめる事にした。

 明日は実家の方に行かないといけないし。面倒くせーけど……。

 もう今日は帰って休むことにしよ。


 スマホをしまって、駅の方に向かって歩き始める。
 ここから駅を越えて逆方向に、オレの住むマンションがある。

 決して、先輩が誰と会うのかが気になる訳じゃないし。
 心の中で何故か言い訳をしながら、駅を通り過ぎる。

 誰かと待ち合わせた先輩に、会うかなと思ったけれど、駅では会わなかった。



 ――――……まあ別に。興味ねえから、良いんだけど。






しおりを挟む
感想 327

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【キスの意味なんて、知らない】

悠里
BL
大学生 同居中。 一緒に居ると穏やかで、幸せ。 友達だけど、何故か触れるだけのキスを何度もする。

処理中です...