13 / 551
よりによってなんで?
「予想外」*大翔side
しおりを挟むこの人は、あんまりオレを好きじゃないと思う。
――――……多分、本性の見えない近寄らない方がいい奴、とでも思ってるんだろう。
むしろ、寄ってくる奴らばかりだったから。
そんな態度を取られる事って、認識している限り、初めて。
新鮮、っつーのはあるんだけど。
まあでも、オレからしても、手探りでしか話せない、面倒な相手でもある。
昨日から気になってた事を聞いてみた。
バイじゃなくて、ゲイ。
女の子は可愛いから好きだけど、興味がわかない。
恋人じゃなくて、クラブで知り合った遊び相手。
――――……なんか、聞けば聞くほど、想定外すぎる。
女の子も好きそうだからバイかと思った。
恋人以外とそんな事をするようなタイプとは、思わなかった。
しかも、クラブで知り合ったって――――……初見で、店出てすぐホテルって。
昨日オレもやってた事だけど……オレの相手は女だし。
この人の場合、体を開く相手だろ。
それを初見の相手と、って――――……全然、そんなタイプには見えない。
何なんだ、この人。
しばらく、自分が何を言いたいのか、迷う。
視線を感じて、ふと、先輩を見つめると。
また緊張してるのか、唇を少しだけ、かんだ。
……そうだよな。
身近な人間には誰にも言ってないって言ってた。
てことは、オレがばらしたら大変な事になるんだろうし。
信用できないオレの次の言葉が、そりゃ、相当気になるに違いない。
「――――……隠すの、辛くないですか?」
「え?」
「オレ、なんでも話、聞きますよ?」
そう、言ってみた。
優しい、相談相手。
そんなのに、なってやってもいい。
きっと、ゲイでいる事で、それを誰にも言えず、心細い中で生きてるに違いない。
聞いてやってもいいかな、話位。
きっとこの言葉を言えば。
頼りたくなった時に、オレを思い出すに違いない。
「誰かに話したい時とか。 オレに言ってくれたら、嬉しいですけど」
「オレに言えよ」じゃない。
「オレに言ってくれたら、オレが嬉しい」と伝える。
先輩を上に立てて、オレが、話してもらいたいというスタンス。
それをうまく、伝えたつもりだった。
時と場合にはよるけれど、悩みを聞く時は、こんな風に言って少し微笑んでやれば、割といちころ。何でも話しに来る奴が、多かった。
でも。
「あのさ、四ノ宮……?」
先輩がものすごく戸惑いながら、オレを見る。
……なんか、先輩の視線が、オレが予想していたものではない。
ありがとう、とか、話聞いてほしい、とかじゃないのは分かる。
怪訝そうな、戸惑いの表情。
「……お前、本気でそれ、言ってる?」
「――――……は?」
そう言われて、思わず眉を顰めてしまう。
「本気でしゃべってる?って、聞いてるんだけど……」
「――――……どーいう事ですか?」
心の中で警鐘が鳴る。
――――……前に立ち聞きした時の、嫌な感覚。
自分の顔から、張り付けていた笑いが、剥がれ落ちていく気がした。
「ほんとはさ、違うこと、思ってない?」
そう聞かれて、その意味を聞いたら。
躊躇った後に、間違ってたら、ごめんな、とか言いながら。
「……ゲイなんだから辛いことなんかいっぱいあるだろうけど、まあ自業自得だし、オレ良い人って事になってるし、少しは、話位聞いてやろうかなあ。みたいな……? ……分かんないけど。なんか、そんな感じ……? 良い人って、思わせたいんだろうなあとか………そんな気がする」
思わず、否定する事も忘れて、長い事、その顔を見つめてしまった。
早く否定しなければ、それは、本当になりそうな事で。
違う、と言わなければいけないと思うのに。
――――……否定する気が起きない。
ともすれば、大声で笑ってしまいたいような気分。
一体、何なんだよ、この人。
見つめ続けていると、先輩は、突然、失言だったと思ったらしくて、今更謝ってきた。
「……ごめん、失礼か。……失礼だよなオレ。悪い」
最初にそう言ってきて。
返事をしないオレに、更に追加で謝る。
「……ごめん、今の、言い過ぎた」
じっと、その真意を探ろうと、見つめ続ける。
――――……多分、本気で謝ってはない。
今も、きっと、オレがそういう奴だと思ってるんだろうな……。
でも、人として、これは言っちゃいけないとでも思ったのか、
すごく、困ったように見つめてくる瞳。
自然と、ため息をついていた。
垂れてた前髪を掻きあげて。
同時に、思わず呟く。
「……ほんと先輩てさ」
「――――……?」
「……なんか予想外っていうか………」
言ったきり、もう、何か、苦笑いしか浮かんでこない。
104
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる