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よりによってなんで?

「マジか」*大翔side

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 昨日。
 あるクラブに行った。
 そこで1人の女と知り合った。

 クラブを抜けてホテルに行く事になって店の出口に向かった時、たまたま連れ添って出て行くカップルの後ろを歩く事になった。
 ――――……最初は男女のカップルだと思った。

 けれど。階段を上っていく時に何気なく見えた横顔が、雪谷先輩に似ていたような、気がした。

 その2人は明らかに、オレ達と同じ方向、ホテル街へと進む。2人が目の前で入ったホテルに、オレも入った。先に選んだ部屋の隣を取り、女に変に思われない程度に急いで追いかけた。その2人は、ドアの前にいた。

 ……ただ、確認したかっただけだった。

 オレの外面の嘘っぽさを見破った人が、男なんかとホテルに行くなんて思いたくなかった。こんなとこまでついてきて、少し自分でも意味不明だったが、確かめずにはいられなかった。

 雪谷先輩じゃない、違う奴だと、確認しに行ったつもりだった。
 なのに。


 こっちを見た、「ユキくん」と呼ばれたそいつは――――……
 ……雪谷先輩だった。

 目が合ってしまったし。

 ……なにしてくれてんの、この人。
 そう思いながら。


 オレは、動揺を隠しながら、にっこり、笑って見せてみた。


 男と、部屋入ってったとか。
 信じられない、

 部屋に入って、女に先にシャワーを浴びに行かせて、ソファに腰かけた。


 ……は――――……ウケる。
 なにあの人。……ゲイなの?



 楽しくもないのになぜだか、クッと、笑いが漏れた。


 さっきの、雪谷先輩の、終わった、というような表情。


 オレが、本性隠してるような奴だと思ってるから、きっと、ゼミの人たちにばらすとでも、思ってるんだろうな。

 んなことしない。……絶対、ばらさねーよ。
 ばらさねーで、いつもみたいに良い人を気取って。

 これを機に、あんたの中のオレも、「王子」に昇格させてやる。
 そしたら、このゼミ、格段に居心地が良くなるはず。


 ……どうやって、良い感じに持って行こうかな……。



「――――……」



 にしても、男と、か。



 ……なに、あの人、今、この隣で、さっきの男とセックスしてんの?

 相手、背、デカかったし。
 ――――……入れる方じゃなさそうだよな。

 てことは、入れられてんの? 



 ……マジか――――……。


 なんか――――…… これまでにないくらい、胸糞悪い気がするけど。


 身近な人がゲイなのも、それがホテルに入ってくとこを目撃して、いままさに、ヤってるんだろうなと思ってしまう事も、初だから、なんだうろか。

 隣であの人が、抱かれてるのかと思うと――――……何だか妙にムカつくのとともに、変に興奮する、とか。なんか変態じみてる気がする。


 なんでだか、変に高揚して、その後ずいぶん盛り上がってしまった。
 相性が最高だったと勘違いしたらしい女からは、連絡先をしつこく求められた。一応交換をしたけれど、別れてからはすぐにブロックした。


 自分のマンションに帰って、シャワーを浴びてから、ソファに座ってスマホを開いた。ゼミのグループトーク画面に、雪谷奏斗の名前がある。


 多分今頃――――…… オレに見られた事で、悩んでるんだろうな。

 ばらすつもりはないと、言ってやろうか……。

 ――――……いやでも。一晩位は狼狽えさせて。
 明日ホッとさせてやれば、いいか。

 ……人をこんなに嫌な気持ちにさせてんだし。
 少し位、悩ませてやりたい気がする。


 にしても、騙されたな。

 結構、女と居るとこ見たし、モテるって評判だったのに。
 女好きなのかと、思ってた。


 ゲイとか――――…… 信じられない。
 さっきの奴、恋人、なのかな。



 昨夜は悶々としたまま時が過ぎて。
 なぜかオレが、変にドキドキしながら、学校に来た。

 もう5限、始まるギリギリだけど、まだ先輩は入ってこない。


 あの人って――――……オレと話す気。あんのかな。
 まさか、無かった事にしてスルーする気じゃないよな? 


 もしかして、今日のゼミは休むつもりかと思った瞬間。

 ドアがそーっと開いて、おそるおそる雪谷先輩が覗いてきた時は、なんだか一瞬、来た事を喜ぶ自分が居て。――――……少し意味が分からない。


 他の人から見ても怪しすぎる動きをしていた雪谷先輩は、案の定、他の先輩や先生に笑われながらツッコまれている。




 ……何してんの、あの人。




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