「嫌いな君に、恋をした僕」

悠里

文字の大きさ
上 下
12 / 12

12.どうして

しおりを挟む


 ――なんかすこし……悔しいけど。でも。

 カインに、お礼を、言わないと。

 そう思ってたんだけど、授業が終わってすぐ、先生に呼ばれてしまった。教員室で、体調についていろいろ聞かれた。保健室の先生から寝不足がひどそうだと伝わったらしくて、最終的にはちゃんと寝るように言われてしまった。とりあえず、家には言わないで貰うように頼んだし、また倒れたりしなければ大丈夫そうだと、ほっとしながら、教室への道を歩く。

 もう、皆、帰ったみたいで、静かな廊下。
 誰も居ないのかな……。

 そう思って教室に入った時。
 日が少し落ちて、オレンジ色の教室で。一人、窓際に立って外を見ている人が居た。

 あ。

 気配に気づいたのか、ふ、と振り返ったのは、思った通り、カインだった。綺麗な金髪が、オレンジの光に透けてるみたいに見える。

 ……わ……なんか……綺麗。

 ただ呆然と、風に揺れる綺麗なフワフワを、見つめていると。

「シュリ」

 カインが、僕の名を呼んで、微笑んだ。びく、と震えたことで、見惚れていた自分に気づいた。

「先生に呼び出されてたって聞いた」
「あ、うん……あの、カイン」
「ん?」

 僕は、窓際に立ったまま、僕を振り返っているカインに、近づいた。

「今日、あの――ごめん、迷惑、かけて」
「別に――迷惑じゃないよ」
「でも……」
「全然。シュリが大丈夫で良かったよ。でも、無理しちゃだめだからね」

 その言葉に頷いて、ありがとう、と伝えてから、僕は自分の机の中を覗いた。
 ――いつもなら全部持って帰るんだけど……今日は早めに寝ようかな。そう思って教科書の何冊かはそのままに、鞄を閉めた。

「――カインて、ここで何してるの?」

 クラスも違うのに。と思いながらそう聞いたら、カインは、え、と驚いた顔で僕を見つめた。

「――オレがここに何で居るか、分かんない?」
「?」

 僕が、自分の鞄を片付けながら、カインを見つめ返すと。
 カインは「嘘だろ」と苦笑しながら、僕を見つめた。

「シュリを待ってたんだよ。一緒に帰ろ?」

 何でなのか、キラキラの髪の、キラキラの笑顔で、僕にそう言った。
 近くの机においてた自分の鞄を持って、カインは僕を振り返る。


「――……」


 僕は黙ったまま、カインの後ろをついて、教室を出て、扉を閉めた。


 ……僕を、待っててくれて、ここに居たの? 
 ちらっと、もしかしてと思ったけど、そんなわけない、誰かと待ち合わせなのかなと思いなおしたのに。


「カイン……」
「うん?」

「……何で、僕を、待つの」
「――何でって……待っちゃだめ?」

 ……ダメじゃないけど……。
 青くて綺麗な瞳が、振り返って、至近距離で見つめてくる。 


「心配だったし。シュリ、先生に呼ばれてったって言ってたから。戻った時誰も居なかったら、寂しいだろ?」
「――別に……そんなの、平気」

 ほんとに平気だし。
 この学校で、一人で居るのはいつものことだし。
 何人かはたまに話すけど。もうそれでいいって、諦めてるし。

 ――違うか。この学校に入る前から。
 家の中でも一人だった気がする。

「シュリ、今日の授業、何が出られなかった?」
「音楽と詩の授業」
「じゃああとで、教えてあげるね」


 そんな風に言って、なんだかご機嫌の、カイン。




 ――なんでカインって……あの日、僕の部屋に来たんだろう。


 僕、あの日――。
 カインをすごく、睨んだ、と思うのに。


 どうして、あの日。
 一緒に勉強しよう、なんて。


 僕があの時、一人で変なことしてたせいで、それがバレてカインと変なことになって。
 ――なんかずっと変な関係で居るけど。


 僕に優しくするカインが、全然、分からない。
 ――僕と、へんなことするカインは、よく意地悪だから。
 本当は、あれがしたいから優しくしてるのかな……。



 どうしてあの、カインを睨みつけた日から。
 カインが僕のところに来るようになったんだろう。
 


 

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

kuroneko
2024.11.04 kuroneko

あらシュリちゃん流され受けだったのか(^_^ゞ
カインくん棚ぼた案件(*^^*)

悠里
2024.11.04 悠里

kuronekoさま♡

流されうけちゃんなのに、嫌い嫌いって言ってる子です(*´艸`*)笑
カイン棚ぼた……うふふふ♡♡

解除

あなたにおすすめの小説

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) 些細なお気持ちでも嬉しいので、感想沢山お待ちしてます。 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

偽りの僕を愛したのは

ぽんた
BL
自分にはもったいないと思えるほどの人と恋人のレイ。 彼はこの国の騎士団長、しかも侯爵家の三男で。 対して自分は親がいない平民。そしてある事情があって彼に隠し事をしていた。 それがバレたら彼のそばには居られなくなってしまう。 隠し事をする自分が卑しくて憎くて仕方ないけれど、彼を愛したからそれを突き通さなければ。 騎士団長✕訳あり平民

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。