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8.どうして
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熱を発散させた後、大体僕は少し眠っちゃって――その間に、カインが僕を拭いてくれてしまう。起きていたいんだけど、大体無理で……眠っちゃうというか、気が遠くなっちゃうというのか。
起きると、カインが僕を見てることが、多い。
「起きた? シュリ」
「――うん……ていうか。見てないで、って……」
「可愛いからさ」
「だから――ほんと、やめて」
もう。何なんだ。可愛いとか、騙されないし……。
可愛くないし。そんなの自分が一番良く知ってるし。
「お茶入れてくる。服、着て」
そう言って、カインは立ち上がると、キッチンに立つ。何回も淹れてくれてるから、もう慣れてて……カインがお茶の準備をしてくれている間に、僕は服を着た。カインに吸われて、ついた跡が胸に見えて、かぁ、と顔が熱くなる。
――なんで、こういうの、つけるんだ。もう。
「お茶はいったよ。実家から届いたお菓子、持ってきたんだけど食べる? おいしいよ」
言いながら、勉強机のところに、お茶とお菓子を置いてくれる。
テーブルにある椅子を持ってきて、椅子を隣に並べた。
「いただきます……」
「うん。どうぞ」
柔らかく、微笑む。
……さっきまで、あんなに――激しい、というか……男っぽくて。
全然抵抗も、出来なくて――。
今は、なんか、すごく、優しい。ベッドに居る時とは、別人みたい。
口に入れると、甘い砂糖菓子が口の中で溶ける。「おいしい」と言うと、ふ、とカインは笑った。
ベッドで訳の分からない時間を、過ごした後。
二人で、こうして勉強机に座って、一緒に勉強をする。あの日、僕の部屋に訪ねてきて、勉強をと言ったのは、どうやら本気だったみたいで、正式に、お願いされた。
カインが一番点が悪い科目が、僕が一番点が良い科目だから、らしい。カインより出来るのは、僕しかいないみたい。先生に聞けばいいのに、と言ったら、その先生、あんまり好きじゃないから、とか、言う。その代わりに、僕が間違えやすいところをカインが教えるから、と言われて――。
すごく葛藤はあったんだけど、でも、正直なところ。
僕が教えられるのは一科目で、カインに聞けるのは色々……てなったら。なんか、絶対教わった方が、得なんじゃ……?? と思って、とりあえず、じゃあ一度だけ。と、受けたら。
……思いのほか、勉強が捗って、なぜかもう何回も一緒に勉強をする時間を持っている。
カインのノートはなんだかすごく整ってて、綺麗。めちゃくちゃ勉強になる。これを作った頭なら、確かに、勉強しなくても、あの成績なのか、とちょっと落ち込んだりもするけれど。
でも、なんだかちょっと手が止まると、すかさずカインが教えてくれる。
なんか……僕、一人でやるよりも、大分捗ってるような……。
ただなんか、勉強の前に、カインとベッドに――入ってしまってるけど。
発散した方が、いいよ。お互い、そう思うでしよ、なんて、カインが笑う。僕は、なぜか、それに、逆らうことは出来ないし――なんか、そんなに嫌だと、思っていないというか。
カインって……こんなこと、色んな人と、してるのかな。
……慣れてるって言ってたもんね。
…………こういうのって、実は、皆、やってるのかな……?
謎すぎるのだけれど、誰にも聞けないし。
学校とか食堂でたまに話す知り合いとは、そんなことを話すことは無い。自慰は結構するとか。その話は聞いちゃったけど。分からない……。
「シュリ、ここ。間違ってる」
とん、とノートを指差される。
「……ここ?」
「そ。使う公式――こっちね」
教科書を出されて、公式を指差される。あ。ほんとだ。
――カインって、本当に頭がいいんだと思う。
苦手な科目、一応教えたけど……すぐ分かるというか。僕が教える必要なんて、無い気がするんだけど。でも、一応、これ説明して、とか言われると、説明してあげてるけど。
「――」
ふわ、とあくびが漏れた。カインが、くす、と笑う。
「もう寝る?」
「……もう少ししたら」
「ん。あ、じゃあ。考える方じゃなくて、魔法の練習。しようか」
「――ぅん」
教科書とノートを閉じて、椅子をくるんと動かして、カインと向かい合う。
「シュリ、手かして」
カインが手を支えてくれる。「指先に集中して。お腹に力、入れて。息、吸って」言われるまま、その通りにしていく。
「指先に。熱がともるイメージを持って。ゆっくり吐いて」
「――――」
ふぅ、と静かに吐いたところで。ぽ、と指先に小さな炎が現れた。「上手」と、カインが微笑む。
「大分早く出るようになったよね――これなら、試験までには課題も出来るようになるんじゃないかな。魔力が低いんじゃなくて、出し方がうまく繋がってないだけだと思うよ」
カインが手を離して、ふ、と炎を吹き消した。
――おかしいよね。
絶対。おかしい。
なんでこんなに、カインの言う通り。
嫌いなのに。
どんなに僕が、勉強を頑張っても、勝てない、唯一の相手。
他のことは負けても、勉強だけは、努力すれば、勝ってきたのに。
勝てなくて悔しくて。
――なんでカインは……
どうして、僕に優しく、するのかも。よく分からない。
起きると、カインが僕を見てることが、多い。
「起きた? シュリ」
「――うん……ていうか。見てないで、って……」
「可愛いからさ」
「だから――ほんと、やめて」
もう。何なんだ。可愛いとか、騙されないし……。
可愛くないし。そんなの自分が一番良く知ってるし。
「お茶入れてくる。服、着て」
そう言って、カインは立ち上がると、キッチンに立つ。何回も淹れてくれてるから、もう慣れてて……カインがお茶の準備をしてくれている間に、僕は服を着た。カインに吸われて、ついた跡が胸に見えて、かぁ、と顔が熱くなる。
――なんで、こういうの、つけるんだ。もう。
「お茶はいったよ。実家から届いたお菓子、持ってきたんだけど食べる? おいしいよ」
言いながら、勉強机のところに、お茶とお菓子を置いてくれる。
テーブルにある椅子を持ってきて、椅子を隣に並べた。
「いただきます……」
「うん。どうぞ」
柔らかく、微笑む。
……さっきまで、あんなに――激しい、というか……男っぽくて。
全然抵抗も、出来なくて――。
今は、なんか、すごく、優しい。ベッドに居る時とは、別人みたい。
口に入れると、甘い砂糖菓子が口の中で溶ける。「おいしい」と言うと、ふ、とカインは笑った。
ベッドで訳の分からない時間を、過ごした後。
二人で、こうして勉強机に座って、一緒に勉強をする。あの日、僕の部屋に訪ねてきて、勉強をと言ったのは、どうやら本気だったみたいで、正式に、お願いされた。
カインが一番点が悪い科目が、僕が一番点が良い科目だから、らしい。カインより出来るのは、僕しかいないみたい。先生に聞けばいいのに、と言ったら、その先生、あんまり好きじゃないから、とか、言う。その代わりに、僕が間違えやすいところをカインが教えるから、と言われて――。
すごく葛藤はあったんだけど、でも、正直なところ。
僕が教えられるのは一科目で、カインに聞けるのは色々……てなったら。なんか、絶対教わった方が、得なんじゃ……?? と思って、とりあえず、じゃあ一度だけ。と、受けたら。
……思いのほか、勉強が捗って、なぜかもう何回も一緒に勉強をする時間を持っている。
カインのノートはなんだかすごく整ってて、綺麗。めちゃくちゃ勉強になる。これを作った頭なら、確かに、勉強しなくても、あの成績なのか、とちょっと落ち込んだりもするけれど。
でも、なんだかちょっと手が止まると、すかさずカインが教えてくれる。
なんか……僕、一人でやるよりも、大分捗ってるような……。
ただなんか、勉強の前に、カインとベッドに――入ってしまってるけど。
発散した方が、いいよ。お互い、そう思うでしよ、なんて、カインが笑う。僕は、なぜか、それに、逆らうことは出来ないし――なんか、そんなに嫌だと、思っていないというか。
カインって……こんなこと、色んな人と、してるのかな。
……慣れてるって言ってたもんね。
…………こういうのって、実は、皆、やってるのかな……?
謎すぎるのだけれど、誰にも聞けないし。
学校とか食堂でたまに話す知り合いとは、そんなことを話すことは無い。自慰は結構するとか。その話は聞いちゃったけど。分からない……。
「シュリ、ここ。間違ってる」
とん、とノートを指差される。
「……ここ?」
「そ。使う公式――こっちね」
教科書を出されて、公式を指差される。あ。ほんとだ。
――カインって、本当に頭がいいんだと思う。
苦手な科目、一応教えたけど……すぐ分かるというか。僕が教える必要なんて、無い気がするんだけど。でも、一応、これ説明して、とか言われると、説明してあげてるけど。
「――」
ふわ、とあくびが漏れた。カインが、くす、と笑う。
「もう寝る?」
「……もう少ししたら」
「ん。あ、じゃあ。考える方じゃなくて、魔法の練習。しようか」
「――ぅん」
教科書とノートを閉じて、椅子をくるんと動かして、カインと向かい合う。
「シュリ、手かして」
カインが手を支えてくれる。「指先に集中して。お腹に力、入れて。息、吸って」言われるまま、その通りにしていく。
「指先に。熱がともるイメージを持って。ゆっくり吐いて」
「――――」
ふぅ、と静かに吐いたところで。ぽ、と指先に小さな炎が現れた。「上手」と、カインが微笑む。
「大分早く出るようになったよね――これなら、試験までには課題も出来るようになるんじゃないかな。魔力が低いんじゃなくて、出し方がうまく繋がってないだけだと思うよ」
カインが手を離して、ふ、と炎を吹き消した。
――おかしいよね。
絶対。おかしい。
なんでこんなに、カインの言う通り。
嫌いなのに。
どんなに僕が、勉強を頑張っても、勝てない、唯一の相手。
他のことは負けても、勉強だけは、努力すれば、勝ってきたのに。
勝てなくて悔しくて。
――なんでカインは……
どうして、僕に優しく、するのかも。よく分からない。
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