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◇一生甘やかす
しおりを挟む「ごめん、ほんと……試したとかじゃなくて」
「ん?」
「聞きたかっただけ。……どれくらい、一緒に居ていいのかなーとか」
「――――」
なんかもう。
どすっと勢いよく、ハートに矢が刺さる。
「可愛い、陽斗さん」
ぎゅううう、と抱き締めて、そう言うと。
「シラフで可愛いとか言うなよ……」
腕の中でぼそっとツッコミが入る。
「ただでさえ、仕事ずっと一緒っていうのも……今まで無いしさ。朝から夕方まで、いろんなこと、ずっと一緒にしてて、それで帰っても一緒で、休日まで一緒、とかさ、今まで経験したことないんだよ」
「……オレも、まあ、無いですね」
「だろー?」
腕の中から、むくっと起き上がった陽斗さんが、オレを見上げてくる。
「どんな感じかなーって、少しは考えるじゃん?」
「んー……でも、仕事をずっと一緒にやってきて、その上で、好きだと思ってもっと一緒に居たいって思ってるので」
「――――」
「なので、仕事の後とか、休みとか、当然もっと一緒に居れるものだと思って、好きだって言ってますけどね」
だってそうだよな。
仕事してる陽斗さん、こないだまでは、むかつくって言ってたけど。カッコイイと心の中ではずっと思って認めてて。色々判明してからの陽斗さんは、もう、可愛いしかない。でもって、仕事中はカッコいいし、綺麗だし。
――――仕事以外の時も、もちろん綺麗だけど、なんかオレといる陽斗さんは、仕事中と大分イメージが違って、可愛いし。
ああ、そっか。だから、仕事ん時の陽斗さんも好きで、でもって、オレと二人の時の陽斗さんも好きだから。
だから、 飽きるとかありえないな。
「仕事ん時の陽斗さんと、二人でいる時の陽斗さん、オレにとっては、大分違うんですよ。分かります?」
「……仕事ん時は、オレ、結構頑張ってるかも。社会人として?みたいな」
「うん。カッコイイですよね」
「――――真顔で言うな」
照れたみたいに言う陽斗さんに、クスクス笑いながら。
「じゃあ、オレと二人の時の陽斗さんが素なのかな」
「……んー……」
頷くかと思いきや、陽斗さんは唸ったまま、うーんと考え込んでいる。
「……仕事ん時は、頑張ってて、仕事以外で他の人と居る時のオレは普通で……」
……ん??
「三上と居るオレは、ちょっと変だと思う」
――――……んん? 変?
「どういう意味?」
そう聞くと、陽斗さんは首を傾げつつ。
「なんか……良く分かんない。頼っちゃってる、ような……」
頼っちゃってる……?
「……あー。ちょっと違うか……んー」
「……うん?」
また少し考えてから。
オレをじっと見つめてくる。
「年下、なのに」
「うん??」
「……なんかよくわかんないけど」
「うん」
「……甘えちゃってる……気がするかもしんない」
「――――……」
「なんかオレ、あんまり、人にこんな風に、任せてること、今まで無かったかも」
「――――……」
なんか。
思考停止。
――――……可愛すぎて。
そのオレを見て、陽斗さんは、はっと気づいたように、口を片手で軽く抑えた。
「あ、ごめん、何言ってんだオレ。嫌だったら、ちゃんとするけど」
「だめ」
「え?」
オレは、陽斗さんをぎゅーーーっと抱き締めた。
「もう、ずっと、一生オレに甘えてて」
「…………」
「すっげーかわいい」
しみじみ言ったオレに、陽斗さん、少し黙ってたけど。
「可愛いって言われンのは、慣れない」
「……うん。でも可愛い」
「慣れないけど……嬉しくなくは、ないかも……」
「――――……」
ああ、もうなんなのこの人。
すげーかわいい。
一生甘やかそう。
と、思ってしまった。
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