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◇心臓に良くない
しおりを挟む◇ ◇ ◇ ◇
結局あの後、ほとんど自制とか消え去って。
ちょっとの手加減すらしたかどうか。……てか、してねえな。
でもあれ、陽斗さんが、あんなだからいけないと思うんだよな。
で、無理させたせいで、オチてしまった陽斗さんを腕の中に抱いて、ちょうど顔が見える位置で、見つめている。
なんかこれ。
……ああ、あれだ。至福。って言葉。……こんな感じの気持ちかも。
ってオトしてしまったのに、ごめんね、とちょっと思いながらも。
ほんと。すげー綺麗な顔。
まつげ長い。唇は薄い感じ、綺麗。思っていたよりずっと、触ると柔らかい頬。可愛い。……この顔が、少し前まで、めちゃくちゃやらしく、上気して、快感に、喘いでた。……はー。マジでヤバ。思い出すだけで、も一回イケそう。そろろそ呆れられるから、やめろ、マジで、オレ……。
無理させずに、今日は一日ゆっくり、オレが世話してあげるって言ったのに。っつか、陽斗さんのせいだけど。
オレの理性はどこに行った。
うーん……。
ほんと小さい頃からモテてた。と思う。カッコいいとか言われるのも、慣れてた。兄貴が死ぬほどモテてたのは知ってて、そこにはかなわないとかちょっと思いながらも、でも同年代の中では、すごくモテてた気がする。
まあ。ルックスに恵まれてたというか。苦労したことが無い。いつも余裕がある方で、振り回されることなんてなかったし、付き合ってる相手にどう接したらいいか悩むなんてこともなかった。
……別れても、次がすぐ居るし。みたいなこと思ってたな。
女の方も、オレがモテるの知ってたから、好かれようとしてきたし。
別にひどいことしてた訳ではないけど、きっと女から見たら……物足りない彼氏だったろうな。
んなことしてたおかげで、今、困ってるのは、自業自得って感じだろうけど。
どこまで、いっていいのか。
これ以上は引いた方がいいのか。もう少し進むべきか。
駆け引きみたいなのは、全然分かんねえし。
陽斗さんと、ずっと居たいけど、どう動くべきかなあ。
陽斗さんは男だし、上司だし、兄貴の親友だし、なんかもう、イレギュラー過ぎて、今までの恋愛の経験なんて、全然何にもならない。……恋愛経験豊富でも、陽斗さんには使えないかも。
……それに。
「――――……」
顔を見つめているだけで、こんなに好きすぎる、と思うなんて、初だ。
はーやば。
……オレ、会社で、知らずにニヤけてたらまじでどうしよ。
ニヤける自信があるな。
「……ん……」
少し眉が寄って、ゆっくり、瞳が開く。
じっと見守ってると、ふ、と陽斗さんがオレを見た。
「……みかみ」
ふわっと、瞳が緩んで、口元が綻んで、嬉しそうなトーンで。
少し寝ぼけた感じなのが。
「――――……」
なんか死ぬほど愛しくて、そっと、頬に触れて、そのまま見つめる。
何も言わないオレに、陽斗さんは、少しだけ首を傾げて、さらに微笑む。
「……はよ」
「……おはようございます」
答えると、陽斗さんは、おはよの時間じゃないか、と笑う。
「やばい、三上」
「……何がですか?」
「……お前にされるの。意識とんじゃうんだけど」
「――――……」
つか。これ、何て答えンのが正しいのかな。
「三上……」
答えないでいると、陽斗さんはクスクス笑いながら、腕をオレの首にかけて、ぐい、と引いた。
「……こうしててくんない?」
もう何というか、ほんと、この人って……。
ぎゅ、ときつく抱き締めて、すっぽり包み込んだ。
「…………も少し寝ていい?……」
「どうぞ」
「ありがと」
ふ、と笑いながらそう言って、陽斗さんの手は、オレの背中というか腰に、まとわりついてきた。
「……三上の心臓の音」
「……?」
「……すっごい聞こえる」
「うるさいですか?」
「……うるさくないよ。……速いけど」
「――――……」
自覚はある。
「……またあとで」
言いながら、はふ、とあくびをして、それから、あっという間に、スヤスヤ眠り始めた。
………………この人、心臓に良くないな。
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