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◇しようよって

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 待て。とりあえず落ちつけ。
 オレ、休ませて労わる宣言、したよな。
 落ちつけ。

 と、オレは内心必死なのだが。

「女の子のさ、可愛い手じゃなくてさ」

 陽斗さんは、すごく、のんびりした口調で話し続けてる。

「こんなでっかい手に、こんな風に触る日が来るとは、思わなかった」

 そんなことを言いながら、クスクス楽しそうに笑って、陽斗さんはオレの手に触れながら、すりすり擦ってくる。
 ……手、擦られてるだけで、その気になりそうな自分にかなり焦りながら。

「……オレ達ってさ」
「え?」
「男は、初めて同士、じゃん」
「ああ。そうですね」

 まあ確かに。と頷く。

「男なんて、意識したことも無かったし」
「……ですね。陽斗さんが初めてです」
「オレも。三上が初めて」

 自分の手の上にオレの手を重ねておいて、親指で手の平をムニムニと潰してくる。

「こんなでっかい手に触れられるとか、思ったこと、無かったし」
「――――……」

「あと、キス、されるとかも、思ったことも無かった」

 陽斗さんは、じっとオレを見つめる。
 ふ、と可笑しそうに笑って。

「こんな風に、一緒にいることになるなんて、嘘みたいってまだ思うけど」
「――――……」

「こうしてると、なんか、ドキドキするし……でも安心する」
「――――……」

「だから、あの……」
「……?」


「仲良く、しような?」

 ちょっと恥ずかしそうに言って、ふふ、と笑う、綺麗な瞳。
 なんかもう。……色々無理。

「――――……陽斗さん、ごめん」
「え? ……ン」

 不思議そうに振り仰いだ唇に、ちゅ、とキスしてから、柔らかく、ふさぐ。
 舌を絡めて甘く噛むと、ん、と声が漏れて、しがみつかれる。

 引き寄せて、後頭部を押さえて、深くキスする。
 頭ン中、愛しいしか、ない。

「……っん、ふ……」

 ソファにゆっくり押し倒して、そのまま口づける。
 いたわるって言った、けど……。無理なんだけど。

「……っ……は ……んっ……」

 舌が絡み合う。一方的なキスじゃなくて、陽斗さんがちゃんと応えてくれているのは、分かる。
 ……このまま触れても、いいかな……。

「――――……」

 あーでも……どうしよ。
 昨日オレ、相当無理させたのは分かってんだけど……。

 少しだけ、キスをゆるめて、どうしようか考え始めたら。
 ふ、と瞳を開けた陽斗さんが、オレの首に手をかけた。

「――――……」

 ちゅ、とキスしてくる。

「オレ、平気」
「え」

「……平気。……ていうか。しようよ」
「でも」

「ていうか……しないつもりなら、こんなキスすんなって感じなんだけど」

 苦笑いで、陽斗さんがオレを見上げてくる。

「ていうか、三上、オレに気、使いすぎ」
「――――……」
「オレも、男だし……そんなヤワくないと思うよ?」

 ……男だから、余計。
 女よりは、体的に負担がかかるんじゃないかなと、思ってるんだけど。
 だるそうにしてたし……。

「じゃあさ……」

 はい、と陽斗さんが手を伸ばしてくる。

「ベッド、連れてって。んで、ちょっとだけは、優しくしてくれたらいい」

 ふ、と笑む唇。
 もうすぐに、「分かりました」とすぐ口から洩れて、陽斗さんを抱き上げた。

「……っなんか言ってはみたけど、軽く抱きあげられるのは、ほんとどうかなって思うけど」

 ぎゅ、と首に抱きついてきて、陽斗さんが笑う。

「鍛えててよかったなーと思ってますよ」
「……ん」

 そだね、と笑って陽斗さんは、黙る。
 寝室、ベッドの上に陽斗さんを降ろして、組み敷く。

「……ちょっとだけは、優しくする、ように頑張ります」
「――――……はは、何それ」

 笑う唇に、キスする。




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