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◇嬉しいって。

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 ……つか、マジで誰か褒めてくれ。

 可愛すぎる人と、裸で風呂で抱き合って、
 キスするだけで出てきたオレを。

 ……理性が勝った。と言うのだろうか。

 昨日無理させたっていう自覚と。
 風呂だと余計疲れるだろうという心配と。
 今日はいたわるって言ったのに、さっそくすんのか、付き合うってそれがメインなのかと思われたら嫌だと言う気持ち。

 まあそこらへん全部が、欲に勝ったというか。
 ……でもそれでも、よく我慢したと、とりあえず自分を褒めたけど。

「はい、陽斗さん、オッケイです」
「ありがと、三上」

 リビングで、ドライヤーをかけてあげて、なんだか幸せに浸ってるオレ。
 やっぱ風呂でコトに及ばなくて良かったな。陽斗さんも元気で可愛いし。洗い立てで、ほこほこしてる柔らかい髪の毛の手触りが良すぎる。

「三上の髪、乾かしてあげるよ。座って」
 楽しそうにオレからドライヤーを受け取って、位置を交換して陽斗さんが笑う。

「いつもセットしてるからさ。髪おろすと、幼くなるよなー」
「それ、陽斗さんもですからね?」
「まあ、皆そうか」

 クスクス笑いながら、陽斗さんが柔らかくオレの髪に触れてる。

「ドライヤーかけてもらうことって、あった?」
「ん? あー……ないですね、掛けてって言われて、掛けたことはありますけど」
「ふーん……」
「って。別にやりたくてやったとかじゃなくて」

 余計なこと言ったかと、振り返って顔を見ると。
 ぷ、と陽斗さんは笑う。

「あのさあ、今更、お前の元カノとかにドライヤー掛けてたって位で何も言わないってば。焦りすぎ」

 あはは、と笑いながら、そう言って、髪ごと、よしよしされてる気がする。

「そんなこと言ったら、オレの元カノたちって、結構尽くしてくれる子多かったから……世話は焼かれてた気がするし」
「そーですか……」

 まあ、可愛いもんな、この人。
 世話焼いてあげたくなる気持ちも、良く分かる。

「ドライヤーとか、されてました?」
「いや? ドライヤーはされてないかなあ……シャワー浴びたら、大体すぐ……」
 そこまで言って、陽斗さんは、んー、と止まった。言いにくそうなので、引き継いで「乾かさずに、ベッドですか?」と言ってみると。

「んー……まあ。シャワー浴びるって、そういうこと、だった気が……」
「……まあ、分からなくはないですけど」

 陽斗さんは、今更元カノに……とかいう言い方してるけど。
 ……オレ、結構心狭いかも。
 どん位の人が、この人の可愛いとことか、色っぽい顔とか、知ってんのかなあ、と思うと、モヤモヤする。

 ……って、こんな気持ち、マジで初めてだけど。

 でも陽斗さんが全然気にしてなさそうで、今更感があるのに、オレがモヤモヤを出す訳にはいかないけど、と思っていると。
 優しくオレの髪に触れながら、「でもさ」と笑う。

「こんな風にさずっと一緒に居て、一緒にお風呂入った後、髪乾かし合うとかは初めてだから。なんか……結構いいな、これ」

 ふふ、と何だかとても楽しそうに笑ってる。
 つい、振り返って、陽斗さんを見上げると。

「いいよな?」と、同意を求めてくる。

「……ですね」

 ……あー、マジで可愛い。何なの、この感じ……。

 ついつい手が伸びて、陽斗さんの首にかけて、引き寄せた。
 ゆっくりキスすると、びっくりしたみたいに目を大きくした陽斗さんはすぐにドライヤーのスイッチを切ると、ふ、と笑んで目を細めた。

 ゆっくりキスして、離れると。

「……キス魔だよなー、三上」

 クスクス笑われてそう言われる。

「……そんなこと、今まで無かったんですけど」
「――――……」

 少し黙った後、ふうん、と陽斗さんは笑うと。

「……別に元カノのこと、気にしたってしょうがないと思ってるけど……」
「……けど?」

「今までとは違う、みたいに言われると嬉しいって、変?」
「……変じゃない、と思いますけど」
「そう?」

 ふ、と笑う陽斗さんが、なんだかすごく可愛く見える。

「……オレ、キスしたいとかも思わないし。そういうこと、したくもなくてって、三上に言ったじゃん?」
「まあ。そう、ですね」

「……今は、そんなこと、無いよ」
「――――……」

「……って言われたら、嬉しい?」

 クスクス笑いながら、オレを見つめる陽斗さんに。
 なんか、勝てないなーと思いながら頷いた。
 


 

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