【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

文字の大きさ
上 下
259 / 274

◇我慢。

しおりを挟む


 服を脱いで、中に入ると、陽斗さんはちょっと目を逸らす。
 ……恥ずかしいのかなーと思うと、可愛く思えて。だめだこれ。我慢できるのか、オレ。……いや、するし。労わるって言っちゃってるし。

 一歩入ったところから、葛藤の嵐だったけれど、何とか平常心を保つ。さっきシャワーは浴びてるので、ざっとお湯で流してから、バスタブの方を向いた。
 分かってたけど、男二人で、並んで入れるほど広くはない。

「陽斗さん、改めて見るとすごく狭いですけど、オレ、どうやって入ります?」
「……いっこしかなくないか? 入る方法」
 言いながら、陽斗さんは座ったまま前に進んで、背中側を開けてくれる。

 ……それしかないよなあとは思ったけど。これだとめちゃくちゃ後ろから抱き締めることになっちゃうけど。……まあでも前から抱き締める方がヤバいから、後ろからが、唯一の選択肢か。

 陽斗さんの後ろから湯舟に入って座って、もうそうするしかなくて脚を開くと、その間にすぽ、と寄りかかってくる。
 背中がオレの胸にあたってるけど、なんとなく腰から下部分は離れようとしてるみたいで、だいぶ前。

 ぷ、と笑ってしまった。

「……なに?」
 振り返った陽斗さんに、不審げに見つめられる。

「なんか微妙に下の方、離れてるから……」
「……っだって、くっついちゃうと、なんか……」
「うん。離れててくれた方が助かるかも」
「……そう言われるのも、どうかと思うんだけど……」

 なんか恥ずかしそうにぶつぶつ言いながら、前を向いた陽斗さんは、膝を抱えるような感じで、ちょっと前に離れていった。

 引き留めて抱き寄せたい気持ちもあるのだけれど、今それをすると、そのまま触っちゃいそうな気がして、とりあえず動かずにいると、少し離れた陽斗さんの背中が視界にモロ入ってくる。

 ――――……背中、綺麗だな……。

 首筋と、後ろから見える、耳の辺り。あったまってるせいか、ちょっと赤くなってて。……なんか、かわいい。

 お湯の雫って。
 ……こんなにそれだけでエロかったっけ?

  首筋や背中を伝う雫にすら燃えそうで、思わず視線をそらしたところで、陽斗さんが、クスッと笑った。

「やっぱり、狭いね」
「……そう、ですね」

「男二人だもんなー」
「……ですね」

 膝を抱えた感じのまま、ちら、と振り返ると、陽斗さんは、湯舟に張り付いてるオレを見て、クスクス笑った。

「……最大限離れてるって感じ」
「んーだって……くっついたらヤバそうで。もうちょっと、視覚が慣れたら、チャレンジしてみます」
「何だそれ……」

 陽斗さんは、可笑しそうに笑いながら、また、前を向いた。
 正直、開いた脚にどうしようもなくて触れてる部分だけだって、結構クるし。マジで落ち着け、オレ。

「……なんかさ」
「はい?」

「部長と話して、聞いたんだけどさ」
「何をですか?」

 何だか陽斗さんの声が笑いを含んでいて、オレも思わず顔が綻ぶ。

「……京都行く時さ、部長の変なお願い、聞いてくれたんだって?」
「変なお願い?……あ」
「ボディーガードのつもりだった?」
「……あー。いや。そんなのほんとにあんのかって、思ってもいたんですけど……一応そのつもりもありましたけど」
「……部長は、三上が嫌そうだったら頼まないつもりだったみたい。普通に受けてくれたからそのまま頼んだって」
「そうなんですか。つか、言ったんですね、部長。秘密って言ってたのに」

 苦笑いでそう言うと。

「仲良くなって帰ってきて良かった、とか言ってた」

 陽斗さんはクスクス笑いながらそう言ってから、ふ、と息をついた。


「なんかさ。オレ、あんな態度でずっと来てたのに、そんな変なお願い聞いてくれたって話聞いたらさ」
「――――……」

「なんか……やっぱ、三上は良い奴だなー、て思って……」

 何だかとっても恥ずかしそうな感じで、ぽつぽつと話す。


「オレ、お前にすごい、会いたくなったんだよね……」

 そんなセリフが嬉しいし。
 なんだかな。……もう、とにかく、すごく。可愛い。
 
 
 



しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...