【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇普通の可愛い?

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 つか、この言い方って――――……。

「あのさ、陽斗さん」
「……ん?」

「……そんなに、昨日寂しかったんですか?」
「え――――……あ、いや」

 改めてまっすぐ聞くと、ちょっと膨らんでいたのを一瞬でほどいて、なんだか急に照れ出した。

「べ……別に。一晩だし。……平気だけど。ちょっと……そう思っただけ」

 言いながら、注いでたお茶をぐびぐび飲み込んでる。

「とりあえず、早く、ごはん食べよ?」

 もうなんか。
 正直、夕飯なんかどうでもいいんだけど――――……でも確かに、食べないと途中で、ってのは分かる気がする。

「――――……」

 はー。……とりあえず、早く食お。

 オレが食事の用意を急ぎ始めると、ちょっとホッとした顔をしながら、箸を運んだりし始めてる。

 こんなに、触れたいのを耐えながら、食事するとか、初めてじゃねえかな。
 ……まあでも、まさか思いのまま襲いかかるなんてできないし。
 マジで、落ち着け、オレ。

 なんかこれ、またしても、苦行みてえだけど……。なんかオレはこの人と居ると、いつもこんなような気持ちさせられてるような……。
 そう思いながら、となりにいる可愛すぎる人に目を向ける。

「ん?」

 にこ、と微笑まれて。
 毒気を抜かれる。


 ――――……マジで落ち着こう。

 何なら、どんだけでも待つって思ってた位なんだし。
 それに比べたら、たかが食事の時間位……。

 ……あーでも、気持ちがオレに向かってくれるのを、待つっていうのと。
 いいよ、て言われてるのに、触れるのを我慢するのとは。

 ……これ、全然違うよな……。
 溜息をついてしまいそうだが、絶対聞こえるので我慢しながら、レンジをスタートさせる。

「さっきも言ったけどさ」
「はい?」

 顔を上げると、楽しそうな先輩。
 可愛くて、自然と笑ってしまいながら頷くと。

「取引先の人と食事して、別れてから高速乗ったんだよね。だからさあ、サービスエリアついた時はお腹空いてなくて。今日のとこも食べたいもの色々あったんだけど、全然食べられなくてさ」
「それでメロンソフトだけになったんですか?」
「そうそう」

 ふふ、と笑いながら頷く。

「だから、三上と今度行くときは、めちゃくちゃお腹空かせて行こうね」
 なんて、とてつもなく、のんきなことを、可愛く言ってる。

 ――――……あ、なんか大分落ち着いてきた。可愛すぎるおかげで。
 さすがに、これには欲情はしないらしい。良かった。まだ正常で。

「そんなに一度に食べれますか?」
「うーん、多分結構いけるんじゃないかなあ」

「そんな大食いでしたっけ?」
「んー……じゃあ、あんまりがっつりのを食べないで、小さめでおいしそうなのを、色々食べる」

 ……なんか、ほんと、可愛いよな。
 笑顔で言う先輩に、自然と笑ってしまう。

 レンジが温め終了の音を立てたので、中から出してカウンターに置いてから、先輩を見つめる。

「良いですよ。明日ほんとに行きますか?」
「んー……明日か~」

 すぐ頷くかと思ったら。
 食事をテーブルに運びながら、考えてる風な返事。


「明日決めてもいい?」
「いいですけど……」

 そういえば夕方聞いた時も、後で決めるとか、そんな感じだったな。
 明日は予定入れてないって言ってたけど……。

「そのまま温泉行くのもいいなーとか……贅沢なことも思っちゃうんだけど」
「うん。……だけど??」

「……んー……でも、後で決めよ?」
「……ん。まあ。分かりましたけど」

 なんだろ、とは思いながらも、なんとなく頷きながら、温めた食事をテーブルに運ぶ。


「とりあえず食べちゃいましょうか」
「うん」

 向かい合わせに座って、いただきますと手を合わせる。


「昨日部長と二人で、どうでした?」
「んー? うーん、どう……って言ってもなあ、普通?」
「気は使わないんですか?」
「まあそれなりに使うけど……まあ、あんな感じの人だからね。娘さんの写真見せてもらったりしたよ。可愛かった」

 クスクス笑いながら、目を細めてる。

「二週連続で遠出で大変でしたね」
「あー……そういえば、そうだね……そっか、先週も、だっけ……」

「忘れてたんですか?」
 しみじみ言ってる先輩に笑いながらそう聞くと。

「いや……なんか三上とのは、仕事ってより……旅行みたいだったし。楽しかったから……別物として思ってたかも……」

 そんな風に言って、にっこり笑う。

 ……この、可愛い、は。
 …………ものすごく、押し倒したいの、可愛いだよな。……って違うか?
 違うのか? これは普通から見たら、ただ可愛いだけ?

 オレがやっぱり正常じゃないとか??

 …………いやもうなんか。どっちでもいいから。
 抱き締めて、キスしたいんですけど。


 落ち着いたと思ったけど。
 今の状態で、にこにこ可愛い先輩との食事は、やっぱり結構な苦行で。
 何とか食べ終わって、やっと片付けた。

「三上、コーヒーとか……」
「あー……ごめん、無理」

 そう言った先輩を、引き寄せて、ぎゅ、と抱きしめる。


「コーヒーは……明日淹れますから」

 少し離して、頬に触れて――――……まっすぐに、見つめる。


「ベッド、行こう?」


 ちょっと緊張した顔をした先輩に、その後、ニコ、と笑って頷かれると。


 もう我慢できなくて、その場で、深く、唇を合わせた。







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