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side*陽斗 7

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 ワインが運ばれてきて、それを口にした部長を見ながら、オレは、ふ、と笑ってしまう。

「三上は、多分手は出さないと思いますよ」
「ん? そーか?」

「……まあ昔はモテてて、そーいう感じだったみたいですけど」
「あぁ。……なんか分かる気がする。あいつは特に年下にモテそう。学生時代とか、モテただろうな」
「部長の、三上へのイメージがよく分からないんですけど」

 クスクス笑ってしまうと、部長も苦笑い。

「まあオレもよく分からないけどな。モテそうって話」
「入ってきたばかりの後輩に手を出したりはしないと思いますよ」
「……なるほど」
「え?」

 なるほど、とは?
 部長に視線を向けると、何やらニヤニヤ笑いながら。

「そういうとこも、信頼してる訳か?」
「――――……」

 ……信頼。

 …………いや、これは――――…… 信頼……ていうのかな。
 多分部長が言ってる意味の「信頼」ではない。

 オレは、オレを好きだって言ってくれる、三上を、信じてる。
 ……って言うんだろうなあ。


 ……うわー。恥ずかし。


 一人で内心、めちゃくちゃ照れながら、平静を装う。


 ――――……三上に、会いたいな。

 ……って。 まだ今日の半日、離れてるだけなのに。
 最近毎晩、一緒に居るのに。会社も一緒なのに。ほんの数時間で、会いたいとか。

 オレどんだけなの……。


「これ飲んだら部屋帰るか。温泉もあるみたいだしな」
「そうですけど……ちょっとお酒抜けてからにしてくださいね」
「これ位問題ないって」
「無理は駄目ですよ」
「平気だって」

 そんなやりとりをしていたら、ふっと思い出したのは。
 こないだの旅館の部屋風呂で、のぼせてた三上の事。

 あれは別にお酒飲んでた訳じゃなかったけど。

 ――――……なんか。可愛かったよなあ。のぼせちゃって。

 ふと、顔が綻んでしまう。


 思えば、あの時はまだ、三上とそんな風になるなんて思ってなかったな……。
 
 ……あれ、いつからそんなになったんだっけって……。
 んー。……オレが相談したからか。

 キスしてみますか、とか、三上は言ってくれたけど。
 あん時って、別にオレを好きだった訳じゃないよな……。

 ……つか、三上じゃなくて、そもそもオレだな。

 後輩とは言え、お酒も入ってたし、最近枯れた気がするって話位は言ってもいいかなとは思う。
 ……部長には言いたくいなから言わないけど、三上と話してて、そう言うの言っても大丈夫な奴な気がしたから、話して……。

 ……キスしてみますかって言われて。
 ――――……オレは何で、してもらったんだろう。

 普通だったら、何言ってんの、そんな事望んでない、とか。言うとこだよなぁ。
 ……何で、あんなたやすく、いいとか言っちゃったんだっけ。

 酒入ってたからかなとか、ぼんやり思ってたけど。
 酒入ってたって、部長とは死んでも嫌だぞ。……死んでもは言い過ぎか。
 いやでも、ほんとに嫌だ。無理。軽いキスも、嫌。
 というか、部長だけじゃなくて、誰とも、したくないな。

 試すとかも、無理……。

 あれ。 ――――……オレ、あん時、なにかんがえてたんだっけ。

 とにかく、オレにキスしたいと言ってくれた三上に。
 ついつい、任せちゃったんだ。

 ……でもなんかよく考えたら、おかしいよな。

 普通しない。絶対、しない。
 三上だったから――――……あんなこと。


 ――――……あれ、そういえば、オレって。
 ……いつから三上のこと、好きなんだろ。

 キスしてから、意識したのかなとか、ぼんやり思ってたけど。
 一緒に京都まわったりして過ごしている内に、と思っていたけど。

 …………違うのかな。


 もしかして。
 気づいてなかったけど……少し好きだった……とか?
 ……いや。そんな事、ないよな。だって男同士だし。

 キスしたり、触れたりしている内にそうなった――――……って。

 だからそもそも、好きじゃなかったら、キス、しないんじゃ。




「――――……」


「どうした、渡瀬?」
「……え? あ、なんですか?」


「顔が赤いな。酔った?」
「……あ。はい、ちょっと……?」

 語尾を濁して返事をすると、部長は笑う。

「そんな飲んでないだろ」
「です、よね……」

 はは、と笑いながら。オレは、頬に触れて、熱を冷まそうとした。



 ――――……なんか。

 どうしよ。

 ……やっぱり、三上と、話したいなぁ……。



 部長と少し離れられるまで、起きてくれてるといいけどなあ。





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